国内にさえ強固な経営地盤を築けない中、カワサキが起死回生を目指して向かったのはアメリカだった。現地調査の結果、アメリカ人が欲しいものはゼロヨン13秒を切るスプリンターと分かる。これまでの日本車にはない存在で販売価格は1000ドルを下回ること。導き出された答えは、量産市販車世界初の2スト並列3気筒エンジンだった――。
 
※この記事は月刊オートバイ2011年8月号別冊付録を加筆、修正、写真変更などの再編集を施しており、一部に当時の記述をそのまま生かしてある部分があります。

カワサキ「500SS MACH III」試乗インプレ

やはり伝説は真実だったとんでもないジャジャ馬!

今回の撮影でお借りしたウエマツのマッハⅢは、ほぼ100%当時のパーツを使ってレストア&リビルドされた奇跡の再生新車。フューエルコックをオンに、CDIにボルトチャージするのを待ってキックアームを踏み下ろすと、3つのシリンダーがバラバラバラと、不等間隔のパルスを刻んで目覚める。

画像1: カワサキ「500SS MACH III」試乗インプレ

シフトペダルをひとつかきあげてローへ。回転を上げ、恐る恐るクラッチをつないでみると、一気に体が後ろに持っていかれる感覚。車重配分がリアヘビーだからか、リアサスがキュッと沈んでフォークが伸び、フロントタイヤがあわや離陸寸前だ。

遠慮がちに回すと、確かに低速はスカスカだけれど、3000回転を過ぎるあたりで、なんともいえないくぐもったサウンドに包まれて、グイグイとトルクが湧き上がってくる。

そこから6〜7000回転に向けて金属音に変わりつつ、どんどんスピードを乗せようとする。これは、現代の感覚でみても、十分にスゴいロケット加速だ。

画像2: カワサキ「500SS MACH III」試乗インプレ

さすがに3速までウィリー、ってのは話が大げさすぎるけれど、伝説じみたマッハの数々の神話は、本当だったのだ!

カワサキ「500SS MACH III」主なスペックと発売当時の価格

●エンジン形式:空冷2ストローク並列3気筒ピストンバルブ
●内径×行程(総排気量):60.0×58.8㎜(498cc)
●最高出力:60PS/7500rpm
●最大トルク:5.85kg-m/7000rpm
●ミッション:5速リターン
●ブレーキ形式前・後:ドラム・ドラム
●全長×全幅×全高:2095×840×1080㎜
●タイヤ前・後:3.25-19・4.00-18
●燃料タンク容量:15L
●ホイールベース:1400㎜
●乾燥重量:174kg
●発売当時価格:29万8000円

1969年の月刊オートバイで振り返る「500SS MACH III」の衝撃

正式発売前のティーザー記事にライダーたちの気がはやる

写真は月刊オートバイの1969年4月号に掲載された発売前のスクープ試乗記。ライダーは500SSの開発にも携わった清原明彦氏。

また、同年3月号には「カワサキの新しい3気筒500ccは、ゼロヨン13秒を切り、最高出力は60馬力」とあり、5月号には「まったく画期的なパワーウェイトレシオを持つニュータイプ」と銘打って、マッハの空冷2ストトリプルのエンジンカット写真だけの広告を掲載。

アメリカで発売を開始した頃で、車名もマッハⅢと明らかにされている。「スピード面では200の壁を破るかどうか、馬力の面では60馬力の記録にどう挑戦するか、またゼロヨンは12秒台を切れるだろうか。期待の新車種については、近日発売します」とのコピーも添えられていた。

現在のようにニューモデルの機密保持が厳しくなかったおおらかな時代のエピソードだ。

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