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第10回「巻き込まれ事故と月例新人賞」
「ガソリン代も車検代もいらない、タダでバイクに乗れる。それどころかお金が貰える。楽しくて東京に来た理由を忘れそうでした。
バイクに乗れてお金が貰え楽しい。それを過ぎると次は仕事でバイクを走らせる責任感も出てきます。今日は嫌だなあ…と思っても仕事だから乗らなきゃならない。
バイトの前日、朝まで原稿を描いていて寝ずに行ったことがあります。『ちょっと身体が重いなあ。今日はシンドイなあ』と乗っていたらタクシーに巻き込まれました。
過失は向こうにあったけど、体調がベストなら回避できたアクシデントです。病院は断り、バイクだけ直してもらうことにしました。その夜、打撲した足がパンパンに腫れました。上京した目的を間違えちゃいけない、つくづくそう思いましたね」。
そんな楠先生に再びチャンスが訪れた。1980年12月、少年マガジン月例新人賞を取ったのだ。
「78年12月のデビューからちょうど2年、再び来たチャンス。2本目が載るのに2年もかかった。
この頃、少年誌はラブコメブームが始まっています。少年マガジンはヒットした『翔んだカップル』の次を探していました。『じゃあ、ラブコメっぽくいこう』。ポリシー? そんなモノよりとにかく世に出たい。その気持ちでいっぱいですよ。『波の上に出なければ風も当たらないし日も当たらない』。当時の仕事用のメモにははっきり書いてます。
次は年2回の新人漫画賞を狙います。ここで一番を取れば週刊少年マガジン連載が視界に入ります。81年3月の新人漫画賞で「1年目のふたり」が一番を取ります」。
1981年5月に新人賞の発表と授賞式があり、少年マガジンの編集者は「年末までには連載に持っていきたい」。いよいよ、『あいつとララバイ』が始動する。
(以下、第11回「最後のラブコメ作家、デビュー」をお楽しみに!)
過去の回はこちらからご覧いただけます。
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