監修:青木宣篤/まとめ:高橋 剛/写真: KUSHITANI / MICHELIN / DUCATI
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LAP平均で去年より1.5秒以上も速かった
今年のMotoGP第16戦日本GPは、3日間で12万1997人が来場し、過去最高記録だったそうだ。大変に喜ばしいことである。日曜日だけでも5万4717人。実際に場内は混んでいたし、来場者数の増加はほぼ小椋藍くん(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)効果だと思われる。

しかし、ですね……。こんなことを言ってしまうと身もフタもないのだが、決勝レース自体は淡々としていた……と、感じた方も多いのではないだろうか? 11周目に、それまでトップを走っていたホルヘ・マルティン(Aprilia Racing)をマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)がパスすると、そのまま優勝した。

主役の藍くんはチームメイトのラウル・フェルナンデス(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)、ペドロ・アコスタ(RedBull KTM Factory Racing)とアツいバトルを繰り広げたが、それにしたってファンにしてみれば何となくジレジレした展開だったのではないかと思う。

しかし実際は、信じられないほど高度なレースだったのだ。その証拠に、今年のマルケスのレースタイムは、去年優勝したフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)よりなんと37秒以上速い。恐ろしいことだ。
2025年……42分9秒312/24周 平均時速約164.0km/h
2026年……41分31秒467/24周 平均時速約166.5km/h
今年のマルケスは、スタート直後の1周目を除く23周はすべて1分43秒台をマークしている。1分43秒台! これは去年の予選上位タイムである。しかも2位だったマルティンも、レース終了時のマルケスとのタイム差は1.3秒。実はマルティンもマルケスと同様に、1周目を除く23周はすべて1分43秒台だった。恐ろしい精度! 恐ろしいコンスタントさ! このふたり、とんでもない高次元で走っていたのだ。
ちなみに去年優勝したフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)は、決勝8周目までを1分44秒台、以降を1分45秒台で走っていた。今年のマルケス&マルティンに比べると、2秒近く遅い。これほどの差があると、もはやレースにならない。去年のバニャイアがマリオカートのゴーストのように表示されたとしても、一瞬で置き去りだ。レースでの2秒は、とてつもなく大きな差なのである。
スプリントレースでタイヤが壊れたのは──
淡々としているように見えて、すさまじく速くなっていた今年の日本GP。最大の要因は、路面の張り替えだ。そしてこの張り替え、メリットばかりではなく、タイヤに、そしてライダーたちに意外な苦戦を強いていた。
路面の舗装を張り替えると、当然、グリップレベルは上がる。特に日本のサーキット舗装は世界最上級で、ものすごくグリップする。もてぎの路面はもともとよかったところに、さらに張り替えたものだから、今年はかなりスゴいことになっていた。すると何が起こるかというと、タイヤ──特にリアタイヤに過大な負担がかかり、温度がめちゃくちゃ上がる。これが問題を起こしていた。
今のミシュランのMotoGP用タイヤは、3種類のコンパウンドから選ぶことになっている。ハード、ミディアム、ソフトだ。土曜日のスプリントレースは、「ソフトで行ける」という話だったのだが、バニャイアのタイヤが壊れてしまった。マルティンもあと1周でヤバかったし、他にも何人かギリギリだったライダーがいた。安全性の問題から、ミシュランは日曜の決勝レースでのソフトを除外。ミディアムかハードで行くことになった。

ソフト、ミディアム、ハードのうち、ソフトとミディアムの基本的な構造は同じで、ゴムだけが変更されている。しかしハードは耐熱・高負荷対応のため、構造から異なっているのだ。もてぎには“念のため”ハードを持ち込んでいたようだ。
ミディアムかハードということになった決勝だが、ミシュランが推奨したのはハード。しかし金、土は誰もハードを履いていなかった。そりゃそうだろうな、と思う。
「食わなさ度合い」がちょうどいい……とは?
ハードがどんな構造なのか詳細は明かされていないが、ソフト&ミディアムに対してケースのベルトを1枚多く使っているようだ。それだけケースは硬くなるし、硬くなると基本的には食わない(=グリップしにくい)方向になる。ライダー心理としては少しでもグリップしてくれるソフトやミディアムを選びたくなるものだ。
ミシュランがハードを推奨したとはいえ、さすがに決勝でぶっつけというわけには行かない。そこで日曜午前に行われる10分間のウォームアップ走行を急きょ20分間に増やし、ハードを試すことになった。すると、意外や意外、マルケスなどはハードで走り始めてすぐに、0.5秒ぐらい速いペースで走ったのだ。

ストップ&ゴーサーキットと言われるもてぎだが、3コーナーや5コーナーなどのコーナリングスピードは意外にも高い。ライダーとしても、1km/hでもいいからコーナリングスピードを稼ぎたいコースなのだ(だからもてぎではヤマハが強い時代もあった)。つまり、エッジグリップが生かせるソフトの方がタイムは出しやすい。
それなのに、ハードがよかった今年のもてぎ。恐らく、コーナー立ち上がりでスロットルを開けてホイールスピンし始めてからは、ハードの「食わなさ度合い」がちょうどよかったのだろう。
(次回へ続く)
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