文:横田和彦
▶▶▶写真はこちら|歴代開発者が背負う『CB400SF』という名の重圧【CB400SFの系譜・1992-2020】


歴代スーパーフォアを生んだ技術者たちはCB400SFに何を託してきたのか

**HONDA*
CB400SF (NC31)(1992年)※右より
CB400SF Version-R (NC31)(1995年)
CB400SF Version-S 50 Anniversary Special (NC31)(1998年)
CB400SF (NC39)(1999年)
CB400SF (NC42)(2007年)
スペック競争のその先へ、新たな400像を模索
CB400SFが誕生した背景には、1980年代の熱いバイクブームがある。当時、大型バイクに乗れる免許の取得が困難だったため人気の中心は250〜400ccクラス。性能が売り上げを左右していたので、毎年のようにフルモデルチェンジし、激しいスペック競争が繰り広げられていた。
1980年代後半、その流れに変化が生まれる。「もっと自然体で楽しめるバイクが欲しい」という声が増え始めたのだ。
ちょうどそのころ、ホンダでは技術者たちの間から「レーサーレプリカじゃない、新しいカテゴリーのバイクを作ろう」という声が上がった。そこから誕生したのが、1989年に発売されたCB-1である。
高剛性の極太パイプフレームに、レーサーレプリカ譲りのカムギアトレーン式4気筒エンジンを搭載し、峠ではレーサーレプリカに引けを取らない走りを見せた。「いいバイクができたぞ」という開発者たちの思いとは裏腹に市場の反応は今ひとつ。
当時、爆発的な人気だったのは、空冷エンジンと昔ながらのスタイルを持つカワサキ・ゼファーだ。動力性能だけを見ればCB-1の方がはるかに上。それでも多くのユーザーはゼファーを選んだ。
ホンダの開発者たちはその反応に戸惑った。転機となったのは、CB-1を購入した社内ユーザーからのひと言、「後ろに奥さんを乗せて走ったことがあるか?」だった。実際にタンデムで走ってみると、低中速域での鋭いレスポンスが市街地ではギクシャクする原因にもなった。
低めのハンドル位置も日常では必ずしも心地よさにつながらないことに気付く。速さを意識するあまり、ライダーが求める「気持ちよさ」を置き去りにしていたのではないか。そこから開発者たちの考え方が変わった。
次は、ゆっくり走っていても気持ちよく、それでいてホンダらしいスポーツ性能を持つバイクを作ろう。これまでの反省を活かして開発が進められた。当初は空冷エンジンにするという案も浮かんだが、次世代のスポーツバイクなら水冷だと判断。デザインも懐古的なものにするつもりはなかった。
そんな時、社内では大排気量ネイキッドを開発する「PROJECT BIG-1」が進行していた。目指していた「ホンダらしい、カッコいいスポーツバイクを作る」という方向性は同じ。ふたつの開発はやがてひとつになり、新しい400ccモデルの姿が具体化していく。
エンジンはCB-1をベースに、カムギアトレーンをあえてカムチェーンへ変更。その方がわずかながら穏やかなフィーリングになったのだ。さらには低中速を重視し、クランクやスロットル特性にも手を加えた。
またステンレス製の集合メガホンマフラー、ダブルクレードルフレーム、ツインショックなど、すべてを新しい価値観で作り直していった。
開発で最も大切にされたのは、数値ではなく〝人間の感覚〟だった。試作しては乗り、また作り直す。「どうすればお客さまを納得させられるのか。ホンダらしさを伝えられるのか」。開発者自身も感覚を研ぎ澄ませて試作、試乗を繰り返し、走りの性能と親しみやすさを徹底的に磨き込んだ。
そして1992年、初代CB400SF(NC31)がデビュー。新時代のCBを具現化したスタイルと、ライダーの感性にマッチした走行フィーリングを持つ新たなスポーツネイキッドとして、幅広い層に受け入れられた。やがてトップセールスを記録し、クラスを代表する存在となっていく。
CB400 SUPER FOURの系譜 「NC31」(1992-1996)
CB400SFの原点、NC31が築いた“万能NK”の基準
CB400 SUPER FOUR(1992)

53PSの水冷DOHC4気筒と扱いやすい車体で、400ネイキッドの定番を築いた“スーフォア”の原点。
CB400 SUPER FOUR(1995)

滑らかな4気筒フィール、安定感ある車体、堂々としたネイキッド造形を備え、幅広い用途に応えるベーシック版。
CB400 SUPER FOUR Version R(1995)

PGM-IG、吸排気チューン、フレーム補強を採用。ビキニカウルとアルミサイレンサーを備え、スポーツ性を磨いた派生型。
CB400 SUPER FOUR Version S(1996)

Version Rの機関・車体改良を継承したカウルレス仕様。対向4ポットキャリパーなどで制動力と質感も高めた。
バージョンRには専用セッティングを採用

399cc水冷直4エンジンはNC23E型をベースに、PGM-IG電子制御点火、専用吸気系、4-2-1集合、バルブ系を最適化。53PS/12000rpmを発揮し、低中速の扱いやすさを保ちながら、高回転域の伸びと鋭い加速レスポンスを高めた。

美しさを追求し、細部まで検討を重ねた水冷エンジンの造形

上と下イラストは開発当時のエンジン外観スケッチ。実車は2案の折衷で、シリンダーフィン枚数や腰上の張り出しを比べると設計意図が見える。ヘッド背面のラジエターホースも、エンジンを美しく見せるための配置にまでこだわっている。

