文:小川 勤 写真:赤松 孝
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ドゥカティ「モンスター+」インプレ(小川 勤)

DUCATI
Monster+
総排気量:890cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
シート高:775mm
車両重量:175kg
価格:169万円~
発売:2026年6月21日
400cc並に軽快!軽さと小ささが「走りたい!」気持ちを加速させる
ドゥカティのモンスターに乗る度に思い出すフレーズがある。
「ライディングを楽しむには、ひとつのエンジン、2つの車輪、燃料タンク、ハンドルバー、それらを取り付けるいくつかの金属が必要なだけだ」。これは、モンスターの生みの親であるミーゲール・アンヘル・ガルーツィの言葉だ。
第5世代になったモンスターは、かつてないほどシンプルになったことで、その言葉がより鮮明に思い浮かぶ。

ドゥカティのアイデンティティともいえるスチールトレリスフレームは、第4世代で姿を消し、第5世代ではデスモドローミックが姿を消した。排気量は第4世代から47cc少ない890ccになった。しかし、不思議とそこに喪失感はない。
ボリュームのあるガソリンタンク、現代風にアレンジされた丸目のヘッドライトといったモンスターらしさはそのままに、無駄な肉を削ぎ落としたアスリートのような精悍な佇まいがそう感じさせるのかもしれない。
モンスターを起こす。
軽い!
400ccくらいのイメージだろうか。モンスターに跨る。小さい!。足つきもよく、一瞬で身体にフィットする。サスペンションもよく沈み、他のV2エンジン搭載モデルともまるで雰囲気が違う。30年以上に渡ってアップデートを繰り返してきたモンスターは、ライダーに優しく寄り添う存在になった。
新しいV2エンジンが、モンスターを新たなる境地へ導く

市街地を走り出した瞬間に感じるのは、低中速域の扱いやすさ。かつてのVツインエンジンにあったギクシャク感はほとんどない。これはモンスターに初めて採用された『V2』と呼ばれる新しいエンジンのメリットだ。
『V2』はミドルクラス専用に開発された初めてのVツインエンジン。これまでは大排気量エンジンをダウンサイジングしてミドルクラスに流用していたため、大きく重たかったのだが、『V2』はコンパクト。バルブ開閉機構をデスモドローミックでなくスプリングとし、Vツインエンジン史上最軽量に仕上がっている。
最大出力は111PS。しかし、走り出して感じるのはそこではない。4速/2000rpmでもスルスルと走るフレキシブルさだ。ドゥカティVツインエンジンは、低中速でギクシャクしがちで、これほどの柔軟性を持つモンスターは過去になかった。
最大トルクの70%が3000回転で生み出され、2500〜1万1000回転の間で最大トルクの80%を下回ることがないエンジンは、走行中のギヤチェンジにクラッチ操作を必要としない「ドゥカティクイックシフト」の感度のよさも手伝って、市街地でもなめらかに走行できる。

ライディングモードは、「ウエット」「アーバン」「ロード」「スポーツ」の4種類。「ウエット」は、かなり穏やかでトラクションコントロールの介入が早い。「アーバン」も穏やかだが、柔らかいサスペンションとマッチ。「ロード」ではパワフルさが味わえる。「スポーツ」は峠まで取っておこう。モードは、路面状況や自身のコンディションで気軽に変更するのがいいだろう。
かつてないほど、モンスターとライダーの距離感が近い!

スリムかつ軽量な車体は、度々、ライダーをスポーツライディングの世界へと誘惑する。Vツインエンジンは、並列ツインエンジンよりもエンジン幅が狭く、さらにモンスターにはエンジンを覆うフレームもないため、車両重量や排気量の数値以上に軽快な走りができるのだ。誘惑に駆られるままにモードを「スポーツ」に変更する。

厳密に言うとローダウンされた日本仕様は、それほどスポーティではない。ただ、ライダーがバイクの重心であるエンジンに近づいた一体感と、地面に近いところから向きを変える動きは安心感に溢れ、独特のスポーツ性を見せてくれる。限界は高くないが、タイトな峠ではヒラヒラと舞うようにコーナーとコーナーを結び、自由度が高い。少し腰をズラしてみると、まるで自分の身体までもが軽くなったような気持ちになる。
「スポーツ」モードは明らかにレスポンスに優れる。ただ、筆者の場合、ワインディングでも「ロード」が好み。「スポーツ」はモンスターから急かされ、それに応えるとペースが上がりすぎてしまうからだ。「ロード」でリズミカルに走るのが気持ちいい。

様々なシーンを走ってこれまでと異なるのは、モンスターとライダーの距離感の近さだ。きちんと対話しながら走れるため、ライダーに余計な緊張を強いない。だからといって刺激がないわけではない。スロットルを開ければ主張するし、走りの高揚感は失われていない。
気がつけば、もっと走りたくなっている。第5世代のモンスターは、そんなバイクだった。
