※本企画はHeritage&Legends 2026年5号に掲載された記事を再編集したものです。
期待膨らむ“F”だからもっと走らせて試したい
これまでCB1000F(以下、Fと呼びます)には複数の試乗機会があった。1回目はホンダが開いたニューモデルとしての試乗会。当日はあいにくの豪雨に見舞われたもので、その後、晴れた路面で乗ってみたくて、ある販売店で試乗車に乗せてもらったりした。それらから得た第一印象は何度乗ってもFは乗り手のスキルを問わない、楽しめるステージの広いスポーツバイクだ。「やっぱりホンダはこうでなくちゃ」というスタイリング、そしてその走り。私の期待をまったく裏切らないバイクだった。
いいな、これ。もっと乗りたい! 私のような仕事では、例えばメーカー主催の試乗会などでニューモデルに乗せていただく機会は多くても、その試乗時間は極めて限られていることが多い。けれどそのバイクに興味を持ってその真価を知りたくなったら、色々なシチュエーションで、もっともっと距離を走りたくなる、私にとってFはそんな1台だったのだ。
そこでホンダから借り出したFでツーリングをしてみた。まるで我が愛車であるかのように(笑)広報車を自宅に持ち帰り、保管し、普通にツーリングへ。それも、リヤに大きな荷物を積んでのキャンプツーリングだ。

取材日は3月中旬。寒波がドッと来た日だったのでさすがにその日のテント泊は諦めたが、せめてもとデイキャンプ、片道200kmほどの日帰りツーリングを計画した。これで、今までの試乗では味わえなかった高速道路のクルージングとか燃費測定、荷物の積載性にだってトライできる!
訪れたツーリング当日。出発前に、まずはキャンプ道具をギュウギュウに詰めたシートバッグを積んでみる。Fにはテールカウルの左右に2カ所ずつ積載用フックが装備されているから、シートバッグのドローコードがきちんと装着できて、重量15㎏ほどもあるシートバッグを不安なくしっかり固定できた。


▲シートバッグはデイトナ・ヘンリービギンズ製の最大70ℓ容量のものを使った。キャンプ道具はテント、シュラフ、シートを基本に、テーブル&イス、焚き火台やガスボンベ、スキレット、メスティン、やかんなどなど。現地で料理をする派ではないので、ご飯類は現地で調達します。
ここで改めて気づかされたのはFのリヤシートの広さだ。同車の開発スタッフの方によると「タンデムの快適さもきちんと考慮しました」と、シートレールを幅広に専用設計したそう。だから現行モデルでは珍しくリヤシートも幅広で、最大幅は実測で約250mmほど。これが兄弟モデルのCB1000ホーネットでは実測約180mmで、それからも分かる通りFはシートバッグの安定性はかなり高い。ただし、シート後端と同じ高さのテールカウルに擦り傷など付けぬよう、保護シートは貼っておきたいところだ。
さて、シートバッグにシュラフとマットも括り付けて、出発だ。
渋滞路から高速道路まで守備範囲の広いFの走り
15㎏だかの荷物が増えても、Fの走りはそう大きく変わらない。以前にCB1000ホーネットと同じ場所で乗り比べた取材機会があったけれど、Fはホーネットよりもファイナルがロングで、出力も抑えられていながら、1~3速のギヤレシオがローギヤードで、出足がモタつかない。特にパワーモードを「スポーツ」にしている時は、ホーネットと同等のスタートダッシュに感じることもあったほどだ。
高速道路へ向かう道で、早々に渋滞と出くわした。一般道でのFは、低速トルクが扱いやすくて、6速1500回転で40km/hほどでも、息つきなく走ることができる。シフトアップ/ダウン両方向に利くアクセサリーのクイックシフターが装備されていたから、クラッチレバーを使わずにシフトできるのもありがたく、2~3速のアイドリングで進んでも安定していて、渋滞で左手が疲れることは、ほぼない。
これまでの試乗よりもハッキリと分かったことは、Fの出力特性が低回転のトルクをきれいに出されていて、各ギヤの守備範囲が広いことだ。一般道を走ると、ゼロ発進から50~60km/hではローギヤのまま走り続けてもいいし、先に書いたように高いギヤで走ってもOK。ギヤが高すぎてノッキングしたり、失速なんてことがない。
高速道路に乗り込んだら、トントンとトップギヤにシフトしてみる。クルージングでは6速80km/hは約3000回転。100km/hで巡行するなら約3800回転、120km/hまで出してOKという区間でなら、タコメーターが指す値は約4500回転といったところ。Fのパワーがグッと盛り上がる6500回転以上など使うまでもない。回転を抑えながら、悠然とクルージングが楽しめる。

▲約15㎏ものデカいシートバッグを積んでの高速クルージング。これがホーネットなら、走りに集中したくなって大きなバッグは積まないだろう。オールラウンドな使い方が楽しめるCB1000Fは、デッカい荷物だってよく似合うのだ。かつてCB750Fが現役の頃は、こんな姿のライダーも沢山いました。
そしてF独特の出力特性である、バラバラッと燃える回転フィーリングも、クルージングの時には鼓動を感じられて、連続して距離を走る時に飽きさせないというか、いつでもパワーを出すよ、と言われているようで心強い。直列4気筒の澄んだ回転フィーリングもいいけれど、F独特のパワーフィーリングも、どことなくキャブレター時代の空冷4気筒エンジンを彷彿させる、いい演出だと思う。
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乗って良し眺めて良しで長く付き合える“F”
そして、冒頭の豪雨下での試乗でもハッキリと分かったことだけれど、Fは前後輪の接地感がいい。高速道路のクルージングでどっしりした安定感があるし、レーンチェンジでもしっかりとロードグリップを感じながらヒラリと車線変更。その一方で、一般道を走る時などには軽快なハンドリングを感じられるのがFの手応えなのだ。


▲CB1000Fに搭載されるスマホ連携機能を使えば、写真のメーター右側にターンbyターン、次の曲がり角までの距離を表示するナビが表示できるのだ。これは実際、都内の住宅地でというよりは、ツーリング先への大まかな道案内に便利な機能として役立った。
今回はカウルのない、ネイキッドスタイルのFだったけれど、120km/hは風圧と戦う速度域ではないし、カウルレスの辛さを感じることもなかった。唯一、今回の試乗でSEを選べばよかったと思ったのは、同車にはグリップヒーターが装備されていたこと! 冬のツーリングで、あれは神アイテムなんだよなー!!
夕方の気温がほぼ0℃になるほどの大寒波下でのテント泊こそキャンセルしたけれど、往復400kmほどの日帰りツーリングで改めて分かったのは、Fがステージを選ばないオールラウンドスポーツだったことだ。


▲筆者は年に1~2度ほどキャンプに出かけるくらい。外で飲むコーヒーがたまらなく美味しいねえ派なんです。料理はお米から炊くって本格派もいらっしゃるけれど、私は現地近所のスーパーでごはんとおかずを買って焚き火で温めるだけで十分なんです。焚き火の下には焚き火シートを、ごみは残さず持ち帰りましょう!
さらに別の日には一般道も100kmほど走ってみたけれど、街乗りでは軽快さがよく分かるし、そのパワーフィーリングも力強すぎないトルクが扱いやすい。雨の時や路面温度が低い冬でもタイヤグリップを感じられ、高速道路のクルージングでの不安感は皆無。直進性も軸がピシッとあって、長距離ランもどんどんこなせそうだ。
それでいて、荷物を積んだままではあったけれど、ワインディングもそこそこのペースで楽しめた。これはあくまでもリヤの重いバッグを揺らさないレベルでの話。
実測での走行燃費は高速道路をメインに走った時に21km/ℓ、一般道を走って19.2km/ℓほどだった。ほぼカタログのWMTC燃費(バイク専用に実走に近い測定をした値)データをクリアできる好燃費だ。
日帰りキャンプ時を含めた一般道や高速道路を走り回って一週間、約500kmほど付き合ったFは、かつて不動のホンダフラッグシップだったCB750Fの立ち位置にかなり近いロードスターにも見えてくる。街乗りもツーリングも、一般道も高速道路もこなし、その扱いに難しさはなく、大排気量車のキャリアの浅いライダーも苦手意識なく付き合えるバイクなのだと思う。タンデムシートにシートバッグではなく、大事な人を乗せて走らせても、きっとふたりで快適に過ごせるはずだ。
もちろん、F最大の魅力はホンダ直4スポーツの源流を感じさせる、同車スタイリングなのだろう。眺めて良し、そして走って良し、のCB1000Fは、長く付き合える愛車になるはずですよ!
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CB1000FはCB1000ホーネットがベースの全方位ストリートスポーツだ!


試乗はネイキッドスタイルのCB1000Fにて。CB1000ホーネットがベースのネオクラシック風スタイルで、エンジン出力特性も専用設定。跨ってすぐに気付かされるのはライディングポジションが非常にラクなこと。足付きの良さも特筆ものと言っていい。ライダーの体格は178cm/80㎏。


エンジンはCB1000ホーネットを元に吸排気系とカムを新作し、キャブレター時代の空冷大排気量車のような、バラバラと燃えるフィーリングを演出。ライディングモードは3種類+ユーザー設定2種類。試乗車はクイックシフターを追加していた。



写真上)310mmディスク+4ポッドラジアルマウントキャリパーをダブルで装備。フォークはショーワ製SFF-BPの倒立で、プリロード+伸圧側減衰力調整機構付きのフルアジャスタブルモデルだ。
写真中)4-2-1マフラーはズ太い重低音サウンドを奏でる。
写真下)メインフレームとスイングアームはCB1000ホーネットと共通のもの。



写真上)ライト、ウィンカー、テールなどの灯火類はLEDを標準装備する。写真は上下点灯状態のハイビーム時のものだ。
写真中)CB750Fを彷彿させるシート表皮のデザイン。シートサイドは絞り込まれて、795㎜というシート高の数字以上に足着き性は良好だ。
写真下)タンクデザインも往時のCB750Fを踏襲&ブラッシュアップ。容量は16ℓだ。


積載用フックはシート横の下部、前後左右に計4カ所装備。ヘルメットホルダーはなく、付属のコードでシート下に連結するタイプとなっている。

クラッチレバー側のスイッチ部・グレーのホーン上がモードスイッチで、右の十字スイッチでメーター表示項目を変化させる。十字スイッチはもう少し大きいと操作しやすかった。

メーターは5インチのフルカラー。ギヤポジション表示付きのバーグラフタコ+デジタルスピードメーター。スマホリンク機能付きだ。






