放送開始から今年で20年を迎えるバイク情報番組『Like a wind』を制作する株式会社ヴァンズ凸(デコ)。バイクにまつわる幅広い内容で親しまれている番組づくりについて、統括プロデューサーの小西池祥司さんに聞いた。
文:齋藤ハルコ/写真:夏目健司

ロケ車のペイントに込めた想いは「絶対に番組を終わらせない」

──そうして10年以上走り続けた時期を経て、次第に自分の好きな番組を制作する方向になったのでしょうか?

「確かに、どうも僕は緊急事態が好きみたいでね(笑)。報道も大好きやったし、情報番組も大好きやったけど、自分で会社をやるようになった頃から『これからは企業ビデオだ』と考えていたんです。企業VP(ビデオパッケージ)と言って、企業や商品のプロモーションやリクルート映像 、商品取扱説明など、企業の目的に沿って作る映像コンテンツを指すんですが、当時は企業ビデオなんてどこもやってなかった。テレビ業界の全盛期やったから、企業ビデオを作る会社なんてみんな馬鹿にしとったんですよ」

──目のつけどころが早かったと。

「結果論ですけど、バシッと当たりましたし、そのおかげで、自分の夢である番組を作れるようになりました。コロナ禍には企業のキャンセルが相次いでえらいことになりましたけど、今でも、うちよりぎょうさん企業ビデオを作ってる会社があったら教えて欲しいくらい、ダントツの数を作っています。うちのホームページを見てもらうとわかりますけど、こんなちっちゃな会社がなんで? って信じられへんくらい、大企業の映像制作実績が多いんです。しかもその8割が直接の取り引きで、それはどこよりも早く企業ビデオを手掛けていたからなんですよ」

──番組を復活させたのが2006年だったのは、なぜだったのでしょうか?

「地下の貸し倉庫を整理してたら、北海道ロケのビデオが出てきたんです。懐かしくてつい見たら、北海道の長い一本道を走る場面に『Like a windは必ず帰ってくる』ってテロップを入れてたんですよ。半分笑いながら、『俺はテレビでこんなこと言うてたんや』と思い返してるうちに、なんかまたワクワクとなってきてね(笑)。さすがに海外をめぐる予算はまた出せないから、今度は国内のバイク情報番組だとサンテレビの放送枠を買い取って、制作費は持ち出しの完全自社制作番組で始めたんです。その時も営業回りましたけど、やっぱり誰も相手にしてくれへんかったんですね」

──復活のスタートは、スポンサーゼロの持ち出しから始まったのですね。

「営業で10人中10人に言われたのが、『サンテレビのローカル深夜番組か~。どっちみち1クール(3カ月)か2クールで終わんねやろ』って。『いや終わりません!』と言っても、『半年続いたら考えたるわ」とか適当にあしらわれましたね。そうやってあんまり信用してもらわれへんからね、当時、ロケ車として買った新車のハイエースに〝Like a wind〟ってバーンと手描きでペイントを入れたんですよ。普通は剥がせるカッティングシートを使うんやけど、40万円くらいかけてペインターの人に頼んで、オフィス街にある会社のビルの前で4日かけて描いてもろたんです」

「いろんな企業さんの人に質問されたけど、ある企業の専務さんが4日連続で見に来て、しつこく『なんでペイントやねん』って聞いてくるんですよ。だから事情を説明したら、『新車のハイエースなんて高いのにようしたな。番組やめへん気やな』と褒めてもろてね。その後も、車両のロゴを触った人は必ず『手描きやんけ』と驚くんですよ。こっちの意気込みをわかってもろた企業さんは結構、長期スポンサーにはなってもらわれへんけど、単発のスポンサーになってもろてましたね」

バイクで地域活性化! 多彩なスタンプラリーを企画

ヴァンズ凸ではオートバイや自転車による地域活性化事業も多数手がけており、近年はデジタルスタンプラリー企画が人気。2025年は日本の北と南の頂点を巡る「頂天(いただき)スタンプラリー」、鹿児島県志布志市をお得に周遊できる「志布志まるっとツーリング」、大分市の魅力を巡る「おおいた市いいやんスポット巡り旅」などを企画、いずれも好評を博した。

画像13: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】
画像14: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】
画像15: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】

費用の持ち出しとなっても番組を続けるだけの理由がある

──『Like a wind』の番組内容は、どのように決めていますか?

「モーターサイクルショーとか必ず取り上げる大きいイベントから逆算して、この時期はここが綺麗やからツーリング、とかざっくりした年間スケジュールは作るんですよ。昔は結構細かく決めてたけどね、予定通りいけへんのはわかったから、ざっくりになりました(笑)。それに20年も続けてると、番組づくりのコツはわかってるので結構臨機応変ですね。あとは僕がバイクに乗るから、予定通りいかへんならここ行けよ、とかも言えるので」

──これだけインターネットが広がって情報があふれていると、何を取り上げるべきかを迷うことはありませんか?

「本当に今は情報だらけやし、テレビはオールドメディアとよう言われるしね。ご存知のようにYouTuberの皆さんも人気ですし、今はカメラなど機材も安なって、テレビ局でレギュラー枠を持ってる以外の同業者はどんどん廃業しています、参ったって感じです。でもうちは長いことやってるせいか、なんとでもなるなと思ってて。だいぶ前からスタッフには、番組で取り上げるのは直接バイクネタじゃなくてもいいと伝えてるんですよ。バイクという芯さえ抑えておけば大丈夫やし、ツーリングや新車情報に凝り固まるなと。だからスタッフが提案しよったラジコンバイク大会の回も、僕は面白いからやれやれ!って背中を押しました。そしたら、バックナンバーが70万回以上再生ですからね」

「そもそもうちは本来、番組立ち上げから25年以上担当させてもらってる、テレビ東京の『ガイアの夜明け』のようなドキュメント映像が看板仕事。大阪の会社やのに関西局の仕事はゼロで、なぜか全国テレビ局の仕事ばかりあることを同業者からも不思議がられる変わった会社です(笑)。よくローカル番組の『Like a wind』で飯を食ってると思われるんやけど、とんでもない。いちばんは企業VP、次が各放送局の映像撮影・制作なんです」

──会社の軸となる仕事はしっかり継続しているにも関わらず、金銭的な苦労も多い『Like a wind』を長年続けている理由はなぜでしょうか。

「スタンスとして、まず僕がバイクが好きというのがある。あと半分は、若い社員の育成目的ですね。地上波放送局だと助手扱いやったり、まだADやディレクターは無理な子にも、うちで作る番組ならカメラマンをやらしたり、ディレクションを任せて経験を積ませることができるんです。本人もむっちゃ喜ぶしね」

メディア同士が協力し合ってバイクを盛り上げる形を模索中

──『Like a wind』の長い歴史の中では、二輪業界の活性化に貢献するような企画も多くありますね。

「その自負はありますが、それが番組への評価や知名度にあまりなってない気はしますね(笑)。例えば以前、関西のハーレーディーラーさん5店舗がスポンサーやった時期があるんです。番組でもハーレーを盛り上げる企画をいろいろ考えて、ディーラーさんの『女性ユーザーを増やしたい』という声に応えた『チームL』って女性チームも作ったんですよ。今やったらバイクに乗る女性はなんぼでもいますけど、当時は本当に見かけなくてね。でも最終的に150人の登録メンバーを集めたんです。最近では2021年に、コロナ禍で客足が遠のいてしまった関西のバイク系カフェの売上げを助けようと『Cafeスタンプラリー』を企画したところ、想定を上回るコンプリート者が出る好評ぶりでした。ただ、うちが応援する全日本ロードとMFJカップに参戦中の若手ライダー2人には『関東ではLike a windを10人中8人が知りません』と言われて(笑)。笑いながらの冗談ですけど、それはいかんなと」

「今まで僕が楽しかったらええ、スタッフが楽しかったらええで番組を作ってきたけど、やっと去年から、知名度をアップさせる必要性に気づいたんです(笑)。まず、十何年間ずっとステージとブースを出してきた大阪モーターサイクルショーから仕掛けようと画策して、去年は若いライダー2人をステージに立たせてトークショーさせたり、ブースに彼等のマシンを飾って、レースクイーンにも立ってもらって盛り上げました。今年もいろいろアピールを考えています」

──若手レースライダーへの応援を始めたのはどうしてだったのでしょうか?

「うちは毎年1回、大阪と奈良の間にあるスポーツランド生駒で『ライクアウインドGP』というレースイベントを10年以上続けてて、ちびっ子がぎょうさん参加してくれるんです。僕、子供好きやからね。うちのレースに出てた子達が全日本で走るなら、力入れて応援しようと」

──『Like a wind』の参戦で、観客動員数で苦戦中の全日本ロードが盛り上がることを期待する人は多いと思います。最後にヴァンズ凸として、そして『Like a wind』として、今後の展望を聞かせていただけますか。

「会社としてはずっと〝オンリーワン〟および〝唯一無二〟を目指してきて、今はそうなれていますから、この先もそうあり続けたいです。番組としては…『うちが全日本をガンガン盛り上げます!』と断言したい気持ちは大いにあるんですよ。逆境は大好きですから(笑)。でも去年1シーズンをフル参戦して、ライダーは頑張っとるけど、勝つためには大きなお金が絶対に必要だし、レース活動は自分の思う通りに進まないことを痛感したんですね。ただ、うちはメディアの武器がある点では負けない。でもほんまはうちのテレビ番組だけで挑戦するのじゃなく、雑誌とか、ラジオとか、YouTubeとか、複数のメディアとコラボして、力を合わせて全日本と二輪業界をいい感じに盛り上げていくのが理想だと思うので、いろいろ考えている最中です」

新たな挑戦として全日本ロードレース選手権に2025年から参戦中

画像16: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】

2025年からチーム『Like a wind ☆ CLUB Y’s Racing』のメインスポンサーとして、全日本ロードレース選手権J-GP3クラスに参戦開始(ライダーは松田基成選手。下写真左)。全日本併催のMFJカップ JP250クラス参戦チーム『SDG N-PLAN Racing』のスポンサードも行った(ライダーは市原一優選手)。2026年も同じ参戦体制で、両選手へのサポートを継続中。

画像17: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】
画像18: 〈インタビュー〉株式会社ヴァンズ凸 統括プロデューサー 小西池祥司さん|「放送回数が1000回を超えても、ネタ切れの心配はありません」【ブランドの歴史】

株式会社ヴァンズ凸 インタビュー 写真

文:齋藤ハルコ/写真:夏目健司

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