2025年9月。まだプロトタイプではあったが、CB1000Fは市販スタートに先んじてサーキットに降臨、初陣を見事完全勝利で飾ってみせた。鷹揚な「CBらしい」乗り味は大切にしながらも、秘めたる走りのポテンシャルはハイレベル。ここで、デビュー戦の「鉄馬」レースでCB1000Fを駆った男に、その走りのキャラを聞いてみることにしよう。
文:丸山 浩、オートバイ編集部/写真:長谷川 徹

ホンダ「CB1000F"改"」インプレ(丸山 浩)

画像1: 【レビュー】ホンダ「CB1000F"改"」インプレ|CB1000Fのスポーツポテンシャルを“鉄馬”レースで存分に試す!

丸山 浩(WITH ME RACING代表)

CB1000Fがモーターサイクルショーで初公開されて以来、その魅力を全国各地のトークショーで披露してきた“令和のミスターCB”。こと“エフ”には並々ならぬ思い入れがある。

スポーツできてレースも楽しめるCBに感激!

僕がCB-Fと、いやバイクという乗り物に出会ったのは高校生の時。学校の裏にたまたまCBが止まっていたんだ。まだバイクについて何も分からなかったけど、黒いタンクにブルーストライプのやつで、サイドカバーには「CB900F」と書いてあった。それを見て「カッコいいな」と思ったのが、そもそもバイクの免許を取るきっかけだった。

その後、自分でCB900Fを手にしたときは既にレーシングライダーとしての活動を始めており、当時は大型レプリカもいっぱいあったんだけど、どうせ所有するならCB900Fだ、と迷わなかった。つまり、僕のバイクの原点がCB-Fだったんだ。

それから40年以上の月日が流れた今年の春。モーターサイクルショーに向けたメディア向けの事前撮影会で僕は蘇ったF、今回のCB1000Fを初めて見た。第一印象としては、サイドカバーからテールカウルにかけてのラインがこれまでのCBの中でも1、2を争う雰囲気の良さで「よく頑張ってここまでのスタイルを作ったな」と感心させられた。

そして、鈴鹿8耐のデモランで乗ったのが、コンセプトとはいえ、ほぼ量産型。乗ってみてまず一番最初に感じた印象は「軽い」の一言だった。今回発表された正式な仕様だと車両重量は214kg。歴代の大型CBはみんな重かったし、CB1300の266kgと比べるとそりゃもう段違い。

それでいて、エンジンは下から淀みない重厚なトルク感がたっぷりあり、その点では1300に負けないくらいの味わいもしっかりと持たせてある。車体重量とパワーのバランスがよく、乗りやすくて「スポーツできるCB」が出来上がった。そしてサーキットに持ち込んでも「戦うCB」が登場したとワクワクさせられた。

CB1000F鉄馬レースで緒戦を飾る!

画像2: 【レビュー】ホンダ「CB1000F"改"」インプレ|CB1000Fのスポーツポテンシャルを“鉄馬”レースで存分に試す!

2025年9月13日、14日に熊本県のHSR九州で開催された、鉄フレームのバイクのみで競われるレース「鉄馬withベータチタニウム2025」のアイアンスポーツクラスに丸山 浩氏が乗る「CB1000Fコンセプト改」が、アイアンエキスパートクラスには宇川 徹氏が乗る「CB1000Fコンセプト モリワキエンジニアリング」が出場。

2台とも準決勝レース、決勝レースを勝利で飾った。強豪揃いのアイアンスポーツクラスでは苦戦も予想されたが丸山氏が奮闘して2連勝。モリワキ車は他車を圧倒的に引き離しての完勝だった。これでCB1000Fは市販前から完全勝利を達成、高いスポーツポテンシャルを見せつけながら、見事緒戦を飾ったのだった。

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CB1000ホーネットの部品流用で戦闘力アップ

そのことを証明するために、9月には鉄馬レースに参加。そこで優勝したのはもうご存じの通りで、CB1000Fのポテンシャルは予想以上だった。

ノーマルのままでレースを戦うのは無理があるので改造を施したのだが、その内容が凄かった。使用パーツの多くは兄弟車であるCB1000ホーネットから流用。本来ストリート主体でサーキットでは柔らかすぎるサスも、内部をホーネットのものに置き換えて固めることでクリアできたし、エンジンもホーネットのカムシャフト、動弁系、吸排気系を使うなどして、ノーマルの124PSからホーネットSPの158PSに匹敵するレベルにパワーアップできた。

ディメンションや車重もホーネットと変わらない印象で、全体的なパッケージングとしてはノーマルのバランスを崩さず、全体的に底上げした感じで、しっかりレースで戦えるマシンに仕上げられたのだ。

CBレーサーの乗り味で、変わっているところと言えば、エンジン特性がホーネット、ひいてはエンジンベースのCBR1000RRなどのスーパースポーツ的な高回転指向になっているところだろうか。

ただ、ホーネットとCB1000Fではノーマルでも30PS弱もの開きがあって、その分をCB1000Fではどっぷりと低中回転の豊かさに振っている。ストリートメインで走ったときにどちらが楽しいかと聞けば、多くの人がCB1000Fを選ぶと思う。

画像: ホンダ「CB1000F"改"」インプレ(丸山 浩)

特に低回転域で感じる大排気量直4ネイキッドならではのあのドロドロ感。これをノーマルのCB1000Fは凄く重視している。ホーネットだと、高回転域のパワーと引き換えにしているため薄く感じられてしまうのだ。

もっとも、レースで「勝つこと」を考えなければ、ノーマルエンジンでもサーキットは十分に楽しめる。124PSだって普通のライダーには相当なパワーだし、何しろ車重が軽いからいい汗を流すことができる。

まあホーネットが存在していることで、CB1000Fにはストリート主体のノーマルからサーキット向けの本格スポーツチューンまでその指針のようなものが最初から提示されているようなもの。そこが大きなアドバンテージと言えるんじゃないかな。

今後は僕としても、鉄馬やテイスト・オブ・ツクバ、もっと手軽なWITH ME主催のマル耐4時間に出てみたい、という人たちから、街乗りメインの人まで、全てのCB1000F乗りに情報を提供していこうと思っている。

僕自身も当然注文済み。色はスペンサーカラー、個人的には丸山カラー(笑)と呼んでもらいたいウルフシルバーメタリック(ブルーストライプ)。どう使おうか考え中だけれど、多くのユーザーに近い、ストリートメインでときどきサーキットやレースも楽しむって感じになりそうだ。

そうそう、ハンドルは鉄馬レーサーと同じくホーネット用の純正パーツに交換するかも。スポーツランが好きな人にはちょうどいい低さと幅で、ハーネス類もノーマルから交換なしでほぼイケそうなのでオススメだよ。

ホンダ「CB1000F"改"」の各部装備・ディテール解説

画像: ハンドルバーはホーネットの純正ハンドルを流用してCBコンセプトよりも低めに装着。シートはアンコを硬いものにしてレースでの動きに対処。CBコンセプトの表皮デザインを生かし、後端をほんの少し盛り上げてストッパー代わりとしている。

ハンドルバーはホーネットの純正ハンドルを流用してCBコンセプトよりも低めに装着。シートはアンコを硬いものにしてレースでの動きに対処。CBコンセプトの表皮デザインを生かし、後端をほんの少し盛り上げてストッパー代わりとしている。

画像: ステアリングダンパーをどう取り付けるか悩んだが、仕方なくフレーム加工を行うことに。ここを無加工で装着できるよう、将来的に考えていきたい。

ステアリングダンパーをどう取り付けるか悩んだが、仕方なくフレーム加工を行うことに。ここを無加工で装着できるよう、将来的に考えていきたい。

画像: レースレギュレーションで必要なアンダーカウルを急遽モリワキより借用。マフラーがモリワキレーサーとは異なるので、それに合わせて加工している。

レースレギュレーションで必要なアンダーカウルを急遽モリワキより借用。マフラーがモリワキレーサーとは異なるので、それに合わせて加工している。

画像: 一般に売られているCBR600RRのレース用サイレンサーを使用。エキパイとの中間パイプはワンオフ製作で、もっとカチ上げたかったが、ここはスタンダートと同じくらいの角度に留めた。

一般に売られているCBR600RRのレース用サイレンサーを使用。エキパイとの中間パイプはワンオフ製作で、もっとカチ上げたかったが、ここはスタンダートと同じくらいの角度に留めた。

画像: Fフォークは内部をホーネット用に置き換え、レース用にさらにダンパーやイニシャルの圧を強化。ブレーキキャリパーには最強SSであるCBR1000RR-R用の純正パーツを使用。

Fフォークは内部をホーネット用に置き換え、レース用にさらにダンパーやイニシャルの圧を強化。ブレーキキャリパーには最強SSであるCBR1000RR-R用の純正パーツを使用。

画像: リアサスは内部セッティングを強化したスタンダード版ホーネットの純正パーツ。ヒールプレート一体型のステップホルダーはホーネットからの流用。

リアサスは内部セッティングを強化したスタンダード版ホーネットの純正パーツ。ヒールプレート一体型のステップホルダーはホーネットからの流用。

CB1000Fに感じた“現代のエフ”らしさとは?

画像4: 【レビュー】ホンダ「CB1000F"改"」インプレ|CB1000Fのスポーツポテンシャルを“鉄馬”レースで存分に試す!

“エフらしさ”と言うより“CBらしさ”。僕の中でのCBとは「和製ネイキッドとしてのカッコよさがあって、ストリートでの使い勝手に長け、そしてサーキットに持ち込んでも実は速い」バイク。CB1000Fはまさしくそれを実現してくれた。

空冷CB-Fはもう40年も前の設計だから、実際に乗ると大変なことが一杯ある。その最たるものがサーキットで、スペンサーの姿に憧れつつも装備重量で250kgを越えるであろう往年のCB-Fでガッツリ攻めるにはそれなりに腕前が必要でハードルが高かった。

でも、今回のCB1000Fなら憧れていたカッコいい走りへの挑戦をグッと身近にしてくれる。往年のCB-Fを乗り倒してきた人ほど、新しいCB1000Fを受け入れられると思う。(丸山)

文:丸山 浩、オートバイ編集部/写真:長谷川 徹

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