ライバルCBR250Rがアルミツインチューブフレームを採用したのに対し、FZR250はスチールフレームだったが、1989年型では待望のアルミデルタボックスフレーム/スイングアームを採用。キャブレターの大径化や排気デバイスの改良とあわせて、SP250Fレースにも対応した“R”へと進化した。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。

ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の概要

画像: YAMAHA FZR250R 1989年 総排気量:249cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:735mm 乾燥重量:141kg 発売当時価格:59万9000円

YAMAHA
FZR250R
1989年

総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:735mm
乾燥重量:141kg

発売当時価格:59万9000円

1986年12月に初代が登場したFZR250は、前作FZ250フェーザー譲りの超高回転型インライン4エンジンをスチール製角パイプによるダブルクレードルフレームに搭載。兄弟機FZR400風のフルカウルで包み、当時はフルカバードスタイルだったCBR250Fourをしのぐ人気を得た。

しかし、1988年5月、そのCBRがレーサーレプリカスタイルのCBR250Rにフルモデルチェンジして形勢が逆転する。そこで翌年の1989年3月に発売されたのがFZR250Rだ。

注目はその車体で、TTF-1用ワークスレーサーYZF750やTTF-3用YZF400同様の形状を得てアルミ化したニューデルタボックスフレームに、デルタボックススイングアームを新開発。スタイリングも、FZRシリーズのトップモデルであるFZR1000に準じたスラントカウルデザインとなった。ー方、エンジンは動弁系の軽量化や大径キャブレターの採用、排気デバイスEXUPの改良などでさらなる高回転化を達成している。

その後、1990年2月にFZR400RRと同じ2灯式プロジェクターライトを装備したFZR250RRに代わり、1993年2月に新馬力上限自主規制で40PS仕様となり、1996年まで販売された。

ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)のインプレ

画像: ▲写真のライダーはケニー・ローバーツ。

▲写真のライダーはケニー・ローバーツ。

FZ250フェーザーのデビュー以来、改良を続け新型FZR250Rは完成域と呼べる走りを手に入れた

1986年の暮れに発売されたFZR250が、2年強を経てモデルチェンジに至った。ニューモデルは名称もRが追加されてFZR250Rとされ、エンジンこそ従来型の改良版を使うものの、フレームから外観まですべてが新しくなっている。

かと言ってエンジンがそれらの変化にとり残されているかと言えば、そんなことはないのだ。と言うより、このエンジンこそFZR250R最大のチャームポイントかもしれない。

試乗はヤマハの袋井テストコースで行われたが、そこにアメリカからやってきたひとりのライダーも、そのことを両手を上げて認めていた。

その男の名は“キング”ケニー・ロバーツ。彼は初代のFZ250PHAZERからこのシリーズを所有しており、この試乗会が開催された2日間、計14ラップの走行の後、新FZR250Rの乗り味にいたく満足していたのである。いわく……

「エンジンは従来型よりはるかにパワフルだし、ハンドリングはレーサー並みである。強力なブレーキはサーキット走行でも音を上げない。したがって走ることがとても楽しいバイクだ」

画像: ▲歴代のFZR250のオーナーであるケニー・ロバーツ。このFZR250Rもいたくお気に入りの様子だった。

▲歴代のFZR250のオーナーであるケニー・ロバーツ。このFZR250Rもいたくお気に入りの様子だった。

まあ、ヤマハでレースをしているチーム(当時)の御大がヤマハの新車をけなすわけがないが、それにしても5ラップが予定されていたデモ走行にもかかわらず、ストップが入るまでに7ラップをこなしてしまったことからしても、ケニーがこのバイクを好ましく思ったのは事実だろう。

私も同意見だ。動弁系からクランクまで、とにかく細部まで気を配って改良されたエンジンは、リミッターの効く18500rpm強まで、従来型よりひとまわり上の力量感をともなってよく吹ける。イグザップ(EXUP)の効果も良好で、相当にパワーが出ていないと加速として体感できないサーキットという状況ですら、パワーバンドは1万回転くらいはあるだろう。

加えて、1度スロットルをオフにしてから再度オンにしたときのツキは、かつての比ではない。ひとつのものをベースに地道な改善を加えることの大切さ、それを実証するパワーユニットである。

ハンドリングは基本的にしっとりとしたもので、最近のヤマハ一連のシリーズ性を感じさせる。どんなに高性能でもトリッキーではいけない、という主張である。とは言っても、ダルだとか、反応がよくないとか、そういう表現を使うべき特性ではない。

ライダーの動きにあくまで従順、低速で右へ左へと体重移動をしてみると、フロントホイールが間を置かず左右へ首を振り、スッと思った方向へ向きを変えてくれるのがよく分かる。

しかし、ブレーキに関しては満点を付けたくない。このクラスに片押し式が増加する中であくまでも対向ピストンにこだわったと言うにしては、効き始めからちょっとだけモヤッとしている。制動力そのものに文句はないが、少なくとも私の指はこのブレーキを使うことを楽しんでいなかったと思う。トリッキーとダイレクトは同じではないのだ。

改良点が数多くある中でも、特に動弁系の軽量化に気を配ったというエンジンは、レスポンスと力量感が好印象である。新型のピストンはスカートが短く、大幅に軽量化されている。吸排気バルブも傘径はこれまでと同じながら新型では傘の内側がえぐられていて、ずっと軽量だ。

ベースは従来型というものの、回転マスを減らしつつ、吸排気効率、燃焼効率、ロス馬力の低減を実施していて、実力の点では段違いと言うことができる。レッドゾーンは18500rpmから。そして、そこまで見事に吹け上がるエンジンだ

さて、昨年(1988年※記述当時)から各社が送り出す4ストローク250cc・4気筒はどれもとても出来がいい。平均点では完全に400ccを上回っているというのが正直な感想だ。オレはエンスーだからあんなのには興味はない、などと考えているライダーがいるとしたら、それは不幸なことだ。あのケニーですら、FZR250Rを大いに楽しんでいたくらいだから。(佐藤康郎)  

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