まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。
1980年代、4スト・250ccレーサーレプリカの足跡

ホンダ「VT250F」(1982年)

ヤマハ「FW250 PHAZER」(1985年)

スズキ「GS250FW」(1985年)
全日本選手権のTTF-3レースで一世を風靡した2ストローク250cc、4ストローク400ccクラスのレーサーレプリカ。しかし、そんなレーサーレプリカブームの流れの中で忘れてはならないのが、水冷4ストローク並列4気筒250ccクラスの存在である。
スズキがRG250Гと同じ1983年に発売した水冷直4最初のモデルGS250FW(空冷4気筒では1977年に登場したベネリの250クアトロがあった)は、トルクが細くパワーも36PSに過ぎず、レーサーレプリカと言うには物足りなかった。しかし、1985年に登場したヤマハFZ250フェーザーは45PSを14500rpmで発揮する超高回転高出力型エンジンを搭載して人気を博した。
翌1986年11月には地方選手権で行われるSP250F(4ストローク250cc公道用市販車による)レースが始まり、FZ250フェーザーは1986年にレーサーレプリカのFZR250へと進化。スズキGSX-R250(1987年3月)、ホンダCBR250R(1988年5月)、カワサキZXR250(1989年2月)がこれを追って発売された。

ヤマハ「FZR250」(1986年):45PS/14500rpmと従来の常識を超えて高回転まで回る心臓を持つFZ250フェーザーが起点。これを元に外観を変更、F.A.I.など最新の技術を採用したFZR250が1986年にデビュー、FZR250Rに車名を変えて1994年まで生産。

スズキ「GSX-R250」(1987年):GSX-R250を1987年にレプリカ市場に投入。2灯式ライトを備える外観はGSX-R400に通じるが、フレームはスチール製とした。1988年にはクロスミッションを備えるGSX-R250SPもリリースされた。1989年には全面変更してフレームをアルミ化。車名をGSX-R250Rに変更した。

カワサキ「ZXR250」(1989年):GPZ250RやGPX250R/R-IIなど、並列2気筒のカウル付きモデルを生産・販売していたカワサキが、並列4気筒レプリカ、ZXR250を投入したのは1989年で、倒立フォークやラムエア吸気などの装備が光った。1990年代後半まで生産、クロスミッションを備えるZXR250Rも販売した。

ホンダ「CBR250RR」(1990年):カムギアトレインを採用する並列4気筒エンジンをアルミフレームに搭載するCBR250フォアが1986年4月に発売され、同車は1987年にフルカウルを備えるCBR250Rに進化。翌1988年には、2灯式ヘッドライトを持つ外装やメインチューブの断面形状を改める変更を実施。さらに1990年には、全面刷新したCBR250RRに生まれ変わった。
馬力自主規制を受けて一世を風靡したレーサーレプリカブームが終焉
レースで得た技術をフィードバックし、レースに参戦することも視野に入れて開発されたレーサーレプリカだが、各地の峠や港湾地域などでその走りを堪能しようとする者が多く現れ、社会的な問題となる。
同時に、レーサーレプリカのブームが頂点に達しようとする1988年、クルマと歩行者を含めた交通事故による死亡者数がついに1万人を突破。それを受けて1989年、政府から“交通事故非常事態宣言”が出され、バイクについては250ccと400ccの自主馬力規制を強化することになったのである。
そもそもバイクの馬力規制は、RG250Гが発売された1983年にホンダが提案し、他の3メーカーも合意した本当の自主規制だったが、1991年の規制強化、すなわち400ccは59PSを53PSに、250ccは45PSを40PSにするということは行政指導に近いもので、それまで許されていた10%の測定誤差も認められなくなった(計算してみると、実質的には、およそ400ccでは65PSを53PSに、250ccは50PSを40PSに引き下げるという大幅な規制であった)。
動力性能が最大の価値であった当時の250cc/400ccのレーサーレプリカにとって、最高出力の低下は商品価値が大幅に減少することを意味する。そこで各メーカーは、規制強化前の馬力が適用される生産期限(1992年秋)までモデルチェンジを凍結、せいぜいカラーリングの変更にとどめる作戦に出る。
例外は一般にSP仕様と呼ばれたレースベース車で、これらはキットパーツによってチューンアップされるために、市販時が40PSでもかまわなかったので、数モデルが現れている。

スズキ「GSX-R250R」(SP仕様)

カワサキ「ZXR250R」(SP仕様)
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING






