まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています
カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の概要

Kawasaki
ZX-4
1988年
総排気量:398cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:765mm
乾燥重量:177kg
発売当時価格:69万8000円
アルミフレームに水冷並列4気筒エンジンを積み、フルカウルを備える400ccモデル。カワサキは、この条件に合致する車両を1984年に発売している。GPZ400Rだ。同車はこのクラスの主力車と位置づけられ、レーサーレプリカに注目が集まりだした時期においても、ゆったりとした乗車姿勢や汎用度の高さ、独自の世界観を持ったルックスなどから人気を獲得、販売数を伸ばした。
レーサーに匹敵する高性能は持たせても、公道向けスポーツ車は乗りやすさを追求すべきというのが当時の彼らの姿勢で、GPZ400Rは1987年にGPX400Rに引き継がれるが、これもレプリカとは違う立ち位置のモデルだった。1983年以後のレース活動を休止していたことも影響しただろうか。
ZX-4は、GPX400R登場の翌年、1988年に登場。カワサキ初の4ストローク400ccレーサーレプリカと捉えることができるが、ここまで紹介してきたライバルとはひと味異なる。
むしろ同年型の同社旗艦、ZX-10の400cc版とも言え、このジャンルを語るには中途半端だと思う向きもあろうが、公道での使いやすさを重視した点をカワサキらしいと感じる向きもいよう。レースにも復帰したカワサキが真のレプリカ路線に進むのは、次作ZXR400からだ。
上の写真のZX-4は、1988年1月に69万8000円で発売された。存在するのはこの年式のみで、翌1989年にはよりレーサーに近くと路線を改めた初代ZXR400が登場する。エボニー×パールコスミックグレー(上写真)とパールアルペンホワイト×ルミナスポラリスブルーがまず発売され、部分写真で使ったファイヤークラッカーレッド×パールアルペンホワイトとインディゴブルー×メタリックゼウスブルーを同年4月に追加。
チームグリーンがZX-4を元にしたZXR-4でF-3に参戦したのを記念して、青×白×ライムグリーンの塗色でサイドカウルに“TEAM GREEN“、シートカウルに“FORMULA-3“の文字を入れたF-3レーシングカラーバージョンも同年10月に2000台が限定販売された。
ZX-4の外装デザインは同年型として登場した新旗艦ZX-10に通じ、前ウインカーをアッパーカウル下端、後ろウインカーをシートカウル後部に埋め込むのは共通の手法。アンダーカウルは後ろに長くリアタイヤ直前まで覆う。大きな段差を持つシートは前席と後席が一体で、シートカウル下に格納式荷かけフックを持つのもカワサキ車らしい。
ZX-4はカタログでもレーサーレプリカ色を前面に押し出さず、静かに特徴を述べる印象だ

このカタログはZX-4唯一のモデルとなる1988年型のもので、A4サイズの横開き、全8ページの構成。そのうちの6ページを掲載した。多くの写真と詳細な解説でモデルの特徴を紹介するのは他メーカー製ライバル車たちと同じだが、表紙と諸元を掲載した背表紙(上)は燃料タンクのアップを大きく掲載したイメージを重視したデザインで、これは同時期に登場した2ストローク250ccレプリカ、KR-1にも通じる。
レーサーレプリカのカタログでは、ライディングの写真やサーキットの風景を大きく使うというのがよくあるパターンだが、その意味ではカワサキの2台のカタログは異質とも言える。

下に載せたページの右下にはオプショナルパーツとして用意されたシングルシートカバーが掲載され、当時の価格は1万4000円(税抜き)で、カラーリングはブラックとホワイトから選べた。掲載しなかった2ページでは、フレームなど車体について述べている。

