ハヤブサX-1の誕生後、よりハイスペック化したスーパースポーツ・GSX-R1000をチューンドアップした、まさに市販車最速足りうるモデル・トルネードII S-1が登場。X-1以上に細部に渡って手が加えられた“究極のスーパースポーツ”について、その装備を深掘りしていく。
まとめ:オートバイ編集部/協力:RIDE編集部
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ヨシムラ「トルネードII S-1」概要

画像: YOSHIMURA TORNADO II S-1

YOSHIMURA
TORNADO II S-1

新たに生み出された究極のスーパースポーツマシン

GSX-R750でスーパーバイクを戦うという長年続いた図式に別れを告げ、それより大きな排気量を持つ量産車をレーサーに仕立ててXフォーミュラに参戦するという新たな道を1999年に歩み始めた。

初年とその翌年、ベース車両に選ばれたのはGSX1300Rハヤブサであり、決してレースに適するとはいえない同車を徹底的に改造したヨシムラ・スズキGSX1300Rハヤブサは、2000年鈴鹿8耐での総合6位入賞を筆頭に、輝かしい一時代を築き上げることに成功した。

同車の開発で培ったテクノロジーをストリートに還元するという考えから、ヨシムラは2000年の春に公道走行可能なハヤブサX-1を100台限定、256万円で発売。

独自のフォルムを形作る専用の外装を装着、エンジンと車体の一部にチューンアップを施すなどしたこの作品は、当時世界最速を誇ったハヤブサに軽快かつ俊敏な走りを与えたモデルとして好評を博し、発売より半年後に完売となった。

そして新たに、ここに紹介するトルネードII S-1 が誕生したわけだが、その礎にあるのは、2001年の全日本選手権Xフォーミュラクラスをヨシムラチームとともに戦ったGSX-R1000ベースのトルネードII S-1に他ならない。

存在する中で最も高い潜在能力を持つと考えられる量産型のスーパースポーツモデルにチューンアップを施し、究極のスーパースポーツを完成させる…。トルネードII S-1の開発コンセプトは、ズバリこれだ。

そして、ここで言う「究極」には、ストリートはもちろん、サーキットでもその性能をいかんなく発揮させることも含まれる。そのため、ベース車たるGSX-R1000をS-1へと変貌させるモディファイの内容は、ハヤブサX-1よりも多岐にわたっている。純正の面影をとどめるのはメインフレームぐらいで、前後足まわりの大半を別物に交換、エンジンにはシリンダーヘッドまわりを中心に手を加えている。

これらを包み込むカウルやタンクは、全日本Xフォーミュラ選手権を戦うレーシングマシンとほぼ同様のデザインとカラーで仕上げられている。その結果、ハヤブサX-1の256万円に対し378万円の価格が設定されるが、2001年に開催された第35回東京モーターショーで公開されて以降問い合わせが殺到、モーターショー終了後の12月中旬の時点で生産予定の50台が、時を待たずに完売となる勢いで予約が入ったという。

画像1: ヨシムラ「トルネードII S-1」概要

即レース参戦も可能なコンプリートマシン

ヨシムラが手がけたコンプリート車に乗るのは、ハヤブサX-1、カタナ1135Rに続いて三台目となる。今回試乗したトルネードII S-1は、東京モーターショーの会場で見て興味を抱いていた一台だった。

過去に試乗した二台は仕上げの美しさと走りも高く評価できるものだったが、このS-1も期待通りに非の打ちどころのない造りで、見た目も素晴らしかった。そのため、当然走りにも期待して試乗を開始したが、またがってみるとライディングポジションの窮屈さに少し戸惑った。

リアの車高が高く、ハンドルの位置がかなり低く、レーサー並みともいえるほどに思い切った前傾の強さは純正よりもずっと過激で、手強さを伝えてくる乗車感である。しかし、しばらくウォーミングアップをしているうちに、この乗車姿勢の意図が理解できた。ペースを上げていくとコーナリングではピタッと決まる。

アルミタンクの形状や、アルミ削り出しステップとハンドルグリップとの位置関係が絶妙で、外側の膝でタンク側面をホールドし、タンク上面の角に肘を当てて抱え込むようなフォームをとると、人車一体感が非常に高まって気持ちよく走ることができた。

エンジンは、シリンダーヘッドの面研により圧縮比が高められ、カムシャフトをST-1に換装、バルブまわりにも手が加えられている。また、インジェクションのセッティングが変更され、専用のマフラーで吸排気系をチューンアップ。これらによってレブリミットが引き上げられ、パワーも上乗せされていた。

画像2: ヨシムラ「トルネードII S-1」概要

フィーリングとしては、3000〜4000rpmまでは比較的穏やかで、低回転域でのトルクは純正とあまり変わらない。中回転域から高回転域にかけてのトルクとパワーは確実に増大しており強力。

試乗したコースは小さなコーナーが続くところだったため、ほとんど1速か2速、時として3速まで入れる程度で、高いギアで速度を上げていく際の表情を確認できなかったのが少し残念だったが、間違いなく超高速域でもエンジンのフィーリングは心地よいものと推察できた。

足まわりは、前後ホイールがBBSのアルミ鍛造に、フロントフォークとリアショックはオーリンズと共同開発した専用品に交換されているが、その感触は硬めだった。純正が非常にしなやかで、低速コーナーから高速コーナーまでそつなくこなすのに対し、S-1のそれはハードで、動きの初期や荷重が小さいときにそう感じられた。

その一方、ある程度沈み込んでからは弾力のあるコシの強さを示し、動きもいい。体重移動をきちんとせず、スロットルをあまり開けないで流すようなタラーッとした走り方では、倒し込みなどでやや抵抗感を伝えてくる。

しかし、攻めの姿勢でしっかりと体重を移動させ、適切なブレーキングと右手の操作を行えば、思いどおりにリーンし、高い旋回性を発揮してくれた。飛ばせば飛ばすほど面白くなってくる足まわりとハンドリングで、純正のフレームでもまったく問題は感じられなかった。

純正に手が加えられたディスクとキャリパーに、ニッシン製マスターシリンダーに変更したフロントブレーキも好感触である。効きはじめるまでの感触が自然で、高い動力性能に見合った十分な制動力を備えていた。オリジナルのパッドを装着する以外は基本的に純正のリアも、フロントと同様に評価できるもので、適切な効きと扱いやすさがあった。

車体の重量バランスが純正より前荷重となっていることも走りを大きく変える要因のひとつ。外装はもちろん、足まわりやエンジンもスペシャルパーツで武装されており、全体的な印象を純正の車体と比較すると、より硬質でスポーツ性が高く、エキサイティングでやや手強いマシンと言える。

画像3: ヨシムラ「トルネードII S-1」概要

しかし、不特定多数のユーザーをターゲットとして開発されたGSX-R1000とはまた違った乗り味があり、だからこそ面白いのである。

テクニックと経験が少ないライダーでも乗ることはできる。しかし、S-1に与えられた潜在能力を存分に引き出し、心から乗って楽しいと感じるためには、それなりの経験とテクニックが必要となるだろう。

だが、そこがこのS-1の魅力でもある。「サーキットで思いっきり走れたら」そう思わずにはいられない。完成度が高く、ほとんど文句のつけようがない。価格は決して安くはないが、それだけの価値が十二分に認められる。ヨシムラの名に恥じないスペシャルマシンである。

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