文:小川 勤/写真:南 孝幸
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ドゥカティ「ストリートファイター V4 S」インプレ(小川 勤)

Ducati
Street Fighter V4 S
2025年モデル
総排気量:1103cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型4気筒
シート高:845mm
車両重量:190kg(燃料除く)
発売日:2025年8月
税込価格:326万9000円
モトGPを血統に持つ史上最強ネイキッド!
モトGPで圧倒的な強さを誇るドゥカティ。そんなモトGPマシンに最も近い市販車であるパニガーレV4 Sをベースにしたネイキッドが、ストリートファイターV4 Sだ。
2025年にフルモデルチェンジしたパニガーレシリーズと同様の進化が与えられ、その主なトピックはフレームとスイングアーム。フレームは40%、スイングアームは43%も横剛性を落とし、ハンドリングにしなやかさを与え、さらに前輪のフィーリングを大幅に向上させている。
ドゥカティは、パニガーレに究極の「ファイト・フォーミュラ(戦うための方程式)」コンセプトを適用したモデルがストリートファイターだと語るが、そのスペックはネイキッドとは思えない超ハイスペック。
ライダーはストリートファイターV4 Sからの挑戦状を受け取る前に、まずはそのスペックにきちんと対峙する必要があるだろう。214PSという大パワーと最新電子制御の組み合わせは、史上最強ネイキッドに間違いないが、そのスペックを味わうには相応のキャリアとシチュエーションが必要になってくるからだ。
なにしろ国産リッタースーパースポーツと比較しても、ストリートファイターV4 Sよりもパワフルなのは、ホンダCBR1000RR-R(218PS)だけなのである。

市街地を走り出すと、当然だが手強い。アップハンドルだがポジションは前傾。サーキットで身体を大きくオフセットするとしっくりくるポジションだ。超高回転型のV4エンジンだけに低速域はあまり得意ではなく、14000rpmまで回るエンジンは回転を半分も使えない。しかし、とてつもないパフォーマンスのバイクに乗っていることは常に伝わってくる。それは、まるで野獣を飼い慣らしているような感覚だ。
しかし、高速道路に乗ってスロットルを少し大きめに開けると車体とエンジンが釣り合い、突然バイクとの一体感が訪れる。このシンクロする気持ちよさはドゥカティならではだが、スロットルを開けすぎないようにする自制心が必要だろう。
峠ではライディングモードをテスト。モードによってトラクションコントロールやウイリーコントロールの介入度も変わるが、ドライ路面の峠でこれらの制御が介入することはない。
レース、スポーツ、ロード、ウエットモードをそれぞれ試すと、レース&スポーツはエンジンレスポンスがよく、サスペンションも減衰力が強め。ロード&ウエットはレスポンスも穏やかでサスペンションも柔らかめで馴染みやすい。
特にウエットはリア上がりの姿勢が軽減され、ハンドリングがとても穏やかだ。この辺りは好みに合わせてセットすると、少し付き合いやすいストリートファイターV4Sを手に入れられるはずだ。
走るほどにもっとスロットルを開けたくなるし、腰をずらして積極的に乗ってみたくなるが、その都度自制心が働く。一般道でも驚異的なポテンシャルを垣間見ることはできたが、いつかサーキットでその本性を見てみたくなる試乗だった。