2025 年8月3日、FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦「第46回コカ・コーラ 鈴鹿8時間耐久ロードレース」の決勝が開催された。TSR(TECHNICAL SPORTS RACING)が運営する「F.C.C. TSR Honda France」は14番グリッドからスタートし1時間10分後、マシントラブルにより無念のリタイアを喫した。チームはこの悔しさを胸に、シーズン最終戦ボルドール24時間耐久レースでの雪辱を誓う。
予選:猛暑の決戦に備えたセットアップを優先
ベルギーで行われたスパ8時間耐久レースでの勝利に続き、FIM世界耐久選手権(EWC)暫定ランキング4位で鈴鹿に臨んだ「F.C.C. TSR Honda France」。世界的にも最も過酷な大会のひとつとされる鈴鹿8耐は、テクニカルなコースと高温多湿の環境がライダーとマシンを容赦なく試す。
ホームレースを迎える「F.C.C. TSR Honda France」は、週の初めから高温多湿の気候に順応しながら、Honda CBR1000RR-R Fireblade(#5)の決勝仕様を煮詰めていった。
8月1日(金)の予選日、日本気象協会によるとこの日14時の鈴鹿の気温は37.6℃。体温を超える猛暑のコンディションとなり、決勝の3日も酷暑となる予報だった。そこでチームは戦略的に『第1セッションを決勝用セッティングの確認にあてる』ことを選択。新品タイヤは第2セッションに温存する判断を下した。
第1セッションでは、アラン・テシェ選手がユーズドタイヤとレース仕様のマシンで走行し、2分07秒348をマーク。第2セッションでは、コロンタン・ペロラーリ選手が2分07秒713、羽田太河選手が2分06秒591と、暑さと湿度が残る中でも新品タイヤのグリップを活かしてタイムを伸ばした。
チーム最速2名の平均ラップタイム(2分06秒970)により、決勝を14番グリッドからスタートすることになった。

F.C.C. TSR Honda France
CBR1000RR-R Fireblade(#5)
決勝:14番グリッドからスタートし、マシントラブルで無念のリタイア
14番グリッドからスタートしたアラン・テシェ選手は、序盤を堅実な走りでこなし、ポジションを落とすことなく周回。19周目にはトップ10圏内へ順位を上げた。
最初のピットイン後、羽田太河選手にバトンを託したが、数周後にパワーダウンを伴う異音が発生。緊急ピットインの後、チームによる慎重な確認の結果、エンジントラブルと判明。わずか1時間10分で無念のリタイアとなった。コロンタン・ペロラーリ選手は出走の機会を得ることなくレースを終えることに…。
この結果、F.C.C. TSR Honda FranceはFIM世界耐久選手権(EWC)暫定ランキング6位となり、首位との差は30ポイント。しかし、最終戦ボルドールでは大量得点のチャンスがあり、巻き返しに期待がかかる。
2025年シーズン最終戦は、9月20日、フランスのポール・リカール・サーキットで開催される「ボルドール24時間耐久レース」。全てのタイトル争いがこの地で決まる。



鈴鹿8耐を終え、チーム総監督とライダーのコメント
藤井正和チーム総監督
「このウィークは、テストから手応えはあったのですが、まとまりとしては50点、60点でした。ただ、レースになれば実力で5位以内、みんなが残ったとしてもそのくらいでチェッカーを受ける自信はありました。ただ、それは自信とタラレバ。こうなったらおしまいです。
ライダーの仕上がりもよく、3人が2分6秒、7秒台でコンスタントに走れていました。実力でこのペースで走っていけば十分可能性はあったのですが仕方ないですね。
今回は、エンジントラブルでリタイヤとなりました。これまでも何回かあったのですが、まだまだ原因がわかっていません。ボルドールに対してどれだけテコ入れできるか、やれることはなんでもやって最終戦に挑みます。
やっぱり今は気持ち的には引きずっています。ただ乗り越えないと何も変わりません。気持ちを切り替えて最終戦に挑みます」

Alan TECHER(アラン・テシェ)
1994年生まれ、フランス。2022年のボルドール100周年記念レースに、負傷したジーノ・リアの代役としてF.C.C. TSR Honda Franceから参戦し、チームの優勝と2度目のタイトル獲得に貢献。以来、継続参戦している。
アラン・テシェ「僕たちにとってレースがあまりにも早く終わってしまいました。チームは本当に全力で取り組んでくれたので、とても悔しいです。プラクティス中の転倒後、新しいマシンを用意してくれて、決勝ペースの仕上がりも良かった。スタート後は計画通りのペースで走れていましたし、異音も感じませんでした。ですが、太河にマシンを渡して2周したところでストップ。これで僕たちのレースは終わりました。でも、チャンピオンシップはまだ終わっていません。最終的に年間表彰台を目指しつつ、次戦ボルドールでは優勝を狙います」

Taiga HADA(羽田太河)
1998年生まれ、日本。2014年からアジアロードレース選手権に参戦し、ロードレースに本格的にデビュー。全日本ロードレース選手権などを経験し、2025年シーズンよりF.C.C. TSR Honda Franceに加入。
羽田太河「目標としていた結果を残せず悔しいですが、この経験を次戦ボルドールに活かし、万全の準備で臨みたいと思います」

Corentin PEROLARI(コロンタン・ペロラーリ)
1998年生まれ、フランス。GMT94ヤマハなどのチームで活躍し、Moto2を含む複数のカテゴリーでの経験を持つ。国際的なレースで優れた成績を収め、2025年シーズンよりF.C.C. TSR Honda Franceに加入。
コロンタン・ペロラーリ「予選よりも決勝ペースを重視して臨み、アランが素晴らしいスタートスティントをしてくれました。その後、太河が走り出したところでマシントラブルが発生し、僕は一度も走ることができませんでした。本当に残念です。鈴鹿に入る時点でランキング4位でしたし、年間トップ3を狙えるチャンスはありました。最終戦ボルドールはアランも僕も得意なサーキット。そこでシーズンを良い形で締めくくりたいです」

