文:横田和彦/写真:南 孝幸
闇夜を切り裂く閃光は他車に配慮しつつ行き先を明確に照らす!
「MATRIX LED HEADLIGHT(マトリクスLEDヘッドランプ)」の特長
1.内蔵カメラで交通や周囲の状況を把握
2.ヘッドライトのハイ/ローを自動制御
3.先行車・対向車が眩しくない配光に最適化

厳ついライトデザインは優しさに満ちていた!
トレーサー9GTに世界初採用(二輪車として)されたマトリクスLEDヘッドランプとは、フロントにセットされたカメラで周囲の交通状況を判断し、複数あるLEDヘッドライトを自動制御し最適な配光を実現するシステムだ。
といっても単純にハイ/ローを切り替えるだけじゃない。都市部や郊外といった環境、前走車や対向車の有無、自車の姿勢(直進か、バンク中か)などを総合的に判断し、複数のLEDヘッドライトを緻密にコントロール。遠近のみならず左右への広がりまで調整してくれるのだ。

まわりが明るい繁華街では大きな差は感じなかったが、暗い郊外に出ると光の動きがハッキリとわかる。前を走る車がいなくなるとハイビームになり、コーナーでバンクさせると進んでいく方向を積極的に照らし、対向車が来ると瞬時に照射角が変わる。
切り替えが細やかなので他車に迷惑をかける心配がなく、常に進行方向が明るくなるので高い安心感がある。まるで生きているかのような光の動きは見ていても楽しいもの。道行くみんなが幸せになれる安全システムだと感じた。

スクリーン下部の中央にカメラが設置されている。このカメラで周囲の交通の状況を把握し、その情報を元にヘッドライトの照射角を細かくコントロールしている。

左ハンドルのライトスイッチによりハイ/ローが手動で切り替えられるが、ハイ側に長押しすると路面の視認性を高めるアダプティブハイビーム機能がONになる。

新採用の7インチフルカラーTFTディスプレイには、グラフィックでヘッドライトの状況が表示されるモードがある。アダプティブハイビーム機能がONになると上の写真のように右上にAマークが表示。

新採用の7インチフルカラーTFTディスプレイには、グラフィックでヘッドライトの状況が表示されるモードがある。アダプティブハイビーム機能がONになると上の写真のように右上にAマークが表示。

市街地に入ると下のようにビルのイラストが出てロービームになる。
対向車のライトを検知すると、瞬時にハイビームからロービームへ切り替わる
▶クルマのライトOFF/ハイビーム

車がいても駐車車両ならハイビーム維持
上の写真のように対向車線側に車がいても、ヘッドライトを検知しない場合は、マトリクスLEDヘッドライトはハイビームのまま。駐車車両と判断する。
しかし走行中のクルマの運転席からバイクを見ると(下の写真)非常に眩しい。

▶クルマのライトON/ロービーム

対向車を検知すると即座に減光
ヘッドライトを点灯しているクルマが近付くと自動的にロービームに切り替わる(小さい光の写真は対向車側から見たバイク)。すれ違い後はすみやかにハイビームに復帰。
これならロービームに切り替え忘れて相手に眩しい思いをさせてしまうケアレスミスも防ぐことができる。

▶ハイビームとロービームの比較

ロービーム

ハイビーム
トレーサー9GTのヘッドライトはとにかく明るい。遠くまで光が届くので、街灯が極端に少なくなる郊外や山間部を走るときなどもストレスが少ない。
ロービームは横方向に広く照らしてくれるセッティングで、暗闇でも路面の異常をいち早く察知できるのでありがたい。夜間でも視界が広いに越したことはない。
▶コーナーの先を確実に照らしてライディングをサポート

ロービーム設定時に働くコーナリングランプ。左右に振り分けられたLEDランプがバンクに応じて点灯する。

コーナリングランプは斜め前を明るく照らしてくれる。これなら夜間の峠道も安心して走ることができる。

光が必要な方向以外に広がっていないので、対向車とすれ違うときに慌てて切り替える必要がないのも良い。
文:横田和彦/写真:南 孝幸