今回試乗するビッグアドベンチャーモデルは、ホイールサイズや装着タイヤなどからみても舗装路を得意としていることは明確。そして先進の電子制御システムを数多く搭載しライダーをサポート。その実力を小柄なテスターはどう評価する?
文:横田和彦/写真:関野 温

ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|比較インプレ

画像: YAMAHA TRACER9 GT ABS 総排気量:888cc エンジン形式:水冷DOHC4バルブ並列3気筒 シート高:845/860mm 車両重量:227kg 税込価格:159万5000円

YAMAHA
TRACER9 GT ABS

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷DOHC4バルブ並列3気筒
シート高:845/860mm
車両重量:227kg

税込価格:159万5000円


画像: DUCATI Multistrada V4 S 総排気量:1158cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型4気筒 シート高:840/860mm 車両重量:232kg 税込価格:353万2200円~

DUCATI
Multistrada V4 S 

総排気量:1158cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型4気筒
シート高:840/860mm
車両重量:232kg

税込価格:353万2200円~

長距離を優雅にこなし、スポーツ走行もできる!

大排気量エンジンから生まれる強力なトルクで大柄な車体を引っ張り、市街地から高速、峠道まで余裕を持って走り抜けるビッグアドベンチャーモデル。そのカテゴリーにヤマハが投入しているのが直列3気筒エンジンをアルミフレームに搭載したトレーサー9 GTだ。

実は昨年9月のジャッジメントで前のモデルに乗っていて、そのときの印象は「旅バイクとしてはややスポーティさが強く、少し硬めの乗り味」というものだった。

今年の3月に各部を大幅にアップデートした2025年モデルはどう変化しているだろうか。走り始めての第一印象は「しなやかさが増しているじゃないの!」というもの。持ち味であるスポーティなフィーリングと快適性のバランスが最適化され、ツーリングでの心地良さがさらに向上。ボクの中で旅バイクとしての評価がグッとアップした。

画像: ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|比較インプレ

進化した走行モードは、スポーツ/ストリート/レインのプリセットの違いがより明確に感じられる。普段はストリートを選択しておけばまったく問題ないが、峠道ではスポーツに切り替えるとサスペンションとエンジン特性が変わり“シャキッ”とした走りができるようになる。その辺りはトレーサーが代々持っている特性で、スポーツライディング好きの自分としては気に入っているポイントでもある。ツーリング先のワインディングで気持ちよく走れるのがイイよね。

それに加えてハンドル切れ角が32度から35度に増えたことで明らかにUターンがしやすくなり取り回しも良好になっている。ほかにも電動スクリーンの採用や、ポジションの煮詰めなど細かく改良されているのも好感度が高い。スポーツツアラーとしての質を高めようとするヤマハの意思が各部から伝わってくる。

画像: TRACER9 GT ABS

TRACER9 GT ABS

対するのはドゥカティが誇るスポーツアドベンチャー・ムルティストラーダV4Sだ。押しの強いフェイスデザインが特徴でタンクまわりがボリューミーだが、これはパニアケースなどを取り付けるとバランスが取れそう。迫力はあるが、またがると想像以上にシートが低い。それは自動車高低下装置の恩恵だ。詳細は次ページで解説するが、そのおかげで大柄なムルティストラーダV4Sが一気に身近になった。

走り出すとV型4気筒エンジンのスムーズなトルクフィールが際立つ。ドゥカティのV4エンジンはパワフルすぎて扱いきれないイメージがあったが、コイツはツアラー用に開発されているからメッチャ扱いやすい。フロントホイールが19インチだからか、コーナーでバンクさせているときの接地感と安定性が高い。こちらも電子制御サスペンションだが、モードによる違いがハッキリと感じられる設定である。

興味深かったのは、スポーツモードでは任意で乗員数や荷物の量によってプリロード設定ができハンドリング特性が変わること。「ライダー+荷物」にセットしたらワインディングを大胆に攻めることができた。さすがスポーツバイクを数多く作ってきたイタリアンブランド。スポーツモデルを乗り継いできたライダーでも楽しめるように作り込まれている。

両車とも高速道路などの移動区間はライダーに負担がかからないよう極力楽にこなせ、峠道では積極的にコントロールしてスポーツできるという特性。しかし操作感はまるで違う。バイクと一体になって荷重移動し曲がっていくようなトレーサー9 GTに対して、幅広のハンドルで大柄な車体を振りまわすように操るムルティストラーダV4S。

電子制御システムの装備点数や価格だけじゃなく、バイクとしての乗り味やフィーリングについてもそれぞれに強い個性があって実に興味深い。

画像: Multistrada V4 S|前走車を自動追従するシステムは、単調になりがちな高速道路走行での疲れを緩和。長距離好きのライダーはぜひ一度使ってみてもらいたい。

Multistrada V4 S|前走車を自動追従するシステムは、単調になりがちな高速道路走行での疲れを緩和。長距離好きのライダーはぜひ一度使ってみてもらいたい。

\ハイテク装備を充実させた上級モデルも登場/
ヤマハ「トレーサー9 GT+ Y-AMT」

画像: YAMAHA TRACER9 GT+ Y-AMT 税込価格:198万円

YAMAHA
TRACER9 GT+ Y-AMT

税込価格:198万円

5月28日に発売されたばかりの「TRACER9 GT+ Y-AMT」は、今回紹介しているトレーサー9 GTと同じ888cc直列3気筒エンジンと軽量アルミフレームに、新開発の自動変速トランスミッション「Y-AMT」を搭載したモデルだ。

この他にミリ波レーダーによるアダプティブクルーズコントロール(ACC)、後方レーダーによるブラインドスポットモニター(BSD)、電子制御サスペンション、ユニファイドブレーキ(UBS)、タイヤ空気圧モニタリング(TPMS)など先進装備を多数搭載。クラッチ操作が不要で、AT/MTモードが選択できるなど、快適性と安全性、スポーツ性能を高次元で両立している。

画像: 先行車を自動追従するACCを搭載 ミリ波レーダーで先行車との車間を検知し、加減速や定速巡航を自動制御する追従型クルーズコントロールはロングツーリングの頼もしい味方。

先行車を自動追従するACCを搭載

ミリ波レーダーで先行車との車間を検知し、加減速や定速巡航を自動制御する追従型クルーズコントロールはロングツーリングの頼もしい味方。

画像: ミラー内の警告灯で後方車の接近を警告 バイクのミラーは死角が多い。そこで車両後方や死角にいる車両をレーダーで検知し、ミラー内の警告灯でライダーに知らせてくれる。

ミラー内の警告灯で後方車の接近を警告

バイクのミラーは死角が多い。そこで車両後方や死角にいる車両をレーダーで検知し、ミラー内の警告灯でライダーに知らせてくれる。

\止まる寸前に車高が自動的に下がる!?/
ドゥカティ・スカイフック・サスペンションって何?

画像1: 【比較インプレ】ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」〈横田編〉|市街地も高速も峠もマルチでこなす!

高度なセンサーと電子制御を駆使したセミアクティブ・サスペンション

スカイフック・サスペンションとは「空からフックで吊り下げられているような上質な乗り心地」を実現するサスペンションのこと。

車や鉄道などでも採用されているが、スペースに限りがあるバイクでは受けた衝撃を各種センサーでリアルタイム計測し、瞬時に減衰力を調整する電子制御式のセミアクティブサスペンションを採用している。

画像2: 【比較インプレ】ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」〈横田編〉|市街地も高速も峠もマルチでこなす!

車体姿勢を計測するIMUやサスのストロークセンサー、油圧経路を1/1000秒毎に1/1000mm単位で制御する電磁弁などの実用化により実現した先進システムで、現在も進化を続けている。ドゥカティはそこに速度が10km/h未満になると自動的に最大30mm車高を下げる機能を付加。

通常だと片足のつま先がギリ届く程度の足の短いボクが両足のつま先、片足なら足裏1/3ほど接地するようになる感動システム。これで遠い存在だったビッグアドベンチャーが身近になる!

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