今回試乗するビッグアドベンチャーモデルは、ホイールサイズや装着タイヤなどからみても舗装路を得意としていることは明確。そして先進の電子制御システムを数多く搭載しライダーをサポート。その実力を小柄なテスターはどう評価する?
文:横田和彦/写真:関野 温

ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|深堀りチェック

1.足まわり

画像: ムルティストラーダ V4 S(左)、トレーサー9 GT ABS(右)

ムルティストラーダ V4 S(左)、トレーサー9 GT ABS(右)

わずか2インチ、されど2インチ。違いは大きい!

トレーサー9 GTが17インチなのに対して、ムルティストラーダV4 Sは19インチのフロントホイールを採用。これはドゥカティがツアラーの特性として安定成分を加味しているから。実際に高速道路では高い安定性を感じ、コーナーではクイックすぎない挙動だった。

オモシロイのは、スポーツ志向が強いムルティストラーダV4パイクスピークは17インチホイールを装備していること。シリーズ内でキャラクター分けをしているのだ。


2.シート高の調節機構

▶トレーサー9GT ABS(845~860mm)

LOW

画像3: 【比較インプレ】ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」〈横田編〉|市街地も高速も峠もマルチでこなす!

HIGH

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画像: ライダー身長:165cm

ライダー身長:165cm

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2025年モデルはクッションを増やして快適性を高めつつ、シートの前方を徹底的にスリム化して足つき性を向上。

確かに低くなっている感はあるが、不安を感じる人はオプションのローダウンリンク(-26mm)の導入を検討しても良さそう。ただハンドルとの距離や幅はベスト。

小柄なボクでもバイクとの一体感が得やすく低速域でも操りやすかった。

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▶ムルティストラーダ V4 S(795~815mm)

LOW

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車高自動低下装置にとどまらず、オプションのローフォームシートとローサスペンションキットを導入するとなんとセローよりも低い795mmまで下げられる!

ドゥカティは凹にも優しいなぁ。ただしポジションでは気になる点も。ハンドルがライダーから遠くて幅広なため、Uターンのときなどは身体が伸び切っちゃう。トータルで調整したいね。

【横田和彦が選ぶ2台の“極品” ポイント】

▶トレーサー9 GT ABS

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ただ前方を明るく照らすだけじゃない! 周囲の車に配慮する電子制御ヘッドライト

新型が登場したとき思わず「うおっ!」と声が出たのがこのフェイスデザイン。調べるとバイクでは初のマトリクスLEDヘッドランプシステムだという。スクリーン下のカメラで周囲の交通状況を判断し、自動的に照射エリアを調整。

明るさを確保しつつ、前の車や対向車などを幻惑しないように調整してくれるという。これはみんなが幸せになれるシステムじゃないか!? 未来だねぇ。コーナーリングランプ機能もあるというから、夜間走行の強い味方だ。


▶ムルティストラーダ V4 S

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バックミラーの死角を補完するBSD!

BSD(ブラインド・スポット・ディレクション)とは、自車の横に他車がいるときLEDランプで注意を促すシステムのこと。これはかなり有効だと感じた。というのも進路変更するときに首を振って目視で後方確認したとき、バックミラーの死角に車がいて驚いた経験があるからだ。

もし気付かずに進路変更して接触したら…と考えるとゾッとする。BSDは、あれば安心度が格段にアップするシステムなのだ。ちなみにバイクも感知してくれたぞ。

ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|総合評価

画像: ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|総合評価

ボディや排気量が大きいことは走りの余裕と頼もしさにつながる

遥か遠くの見知らぬ土地まで一気に駆け抜け、美しい景色と出会い、美味しい名物を食べ温泉に浸る。そんなバイク旅の醍醐味を堪能したいなら、ビッグアドベンチャーツアラーは最適解のひとつ。では旅を一緒に楽しむ相棒にどちらを選ぶか。

エンジン特性が気に入ったのはムルティストラーダV4Sだ。V型4気筒エンジンは全回転域で扱いやすく、どのフィールドでもゆとりを持って走れる。ただ車高自動調整装置は良いがハンドル幅が広いなど、全体に大柄なポジション設定なのが惜しかった。

その点、トレーサー9 GTのポジションは僕の体格でもしっくりきた。しなやかさが増して、快適性とスポーツ性がうまくバランスした足まわりの設定やハンドル切れ角の増加など、細かく進化していることも高評価。長旅はもちろん街乗りもストレスなくこなせそうだ。

ボクとの相性はトレーサー9 GTの方が上かな。V型4気筒エンジンのフィーリングは大好きなんだけどね。

YAMAHA
TRACER9 GT ABS

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現行モデルは、より快適なクルージングが味わえる足まわりの設定とエンジン特性になった印象。スポーツモードに切り替えるとサーキットもOKなバイクに早変わり。より幅広いニーズに応えるマシンに仕上がっている。


DUCATI
Multistrada V4 S

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ボディは大柄だが、停止時に低くなるシート高のおかげで小柄なライダーでも不安は少ない。V4エンジンと高度な電子制御サスにより市街地から高速道路、峠道などを快適に走破。価格相応のゴージャスな乗り味が満喫できる。

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    トレーサー9 GT ABS
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    ムルティストラーダ V4 S
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    トレーサー9 GT ABS
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    ムルティストラーダ V4 S
    23
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ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」VS ドゥカティ「ムルティストラーダ V4 S」|スペック・製造国・価格

トレーサー9 GT ABSムルティストラーダ V4 S
全長×全幅×全高2175×900×1440mmNA
ホイールベース1500mm1566mm
最低地上高135mmNA
シート高845/860mm795-815mm
車両重量227kg232kg
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒水冷4ストロークDOHC4バルブV型4気筒
総排気量888cc1158cc
ボア×ストローク78.0×62.0mm83×53.3mm
圧縮比11.514.0
最高出力88kW(120PS)/10000rpm125kW(170PS)/10750rpm
最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm124N・m(12.6kgf・m)/9000rpm
燃料タンク容量19L(無鉛プレミアガソリン指定)22L
変速機形式6速リターン6速リターン
キャスター角24°25′24.2°
トレール量106mm100.6mm
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスクΦ330mmダブルディスク・Φ280mmシングルディスク
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17M/C(58W)・180/55ZR17M/C(73W)120/70ZR19・170/60ZR17
乗車定員2人2人
燃料消費率 WMTCモード値20.9km/L(クラス3、サブクラス3-2)1名乗車時NA
製造国日本NA
メーカー希望小売価格159万5000円(消費税10%込)353万2200円~(消費税10%込)

文:横田和彦/写真:関野 温

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