二輪モータースポーツの最高峰といえば、「MotoGP」を思い浮かべる人がほとんどだろう。しかし、モーターサイクルによるロードレース世界選手権の最高峰はもうひとつある。それが「スーパーバイク世界選手権(WSBK)」だ。ともにモーターサイクルを用いてサーキットでしのぎを削るものであり、同じく世界選手権である両カテゴリー。両者の違いはどこにあるのだろうか。ここでは、MotoGPとスーパーバイクの違いを数字を交えながら比較・解説していく。
文:河村大志

MotoGPとWSBK、それぞれの歴史や規模

歴史的背景も対照的だ。MotoGPは1949年にFIMによって設立されたロードレース世界選手権(WGP)を起源とし、2ストローク500cc時代を経て、2002年から現在の4ストローク1000ccエンジンを採用している。バレンティーノ・ロッシ、ダニ・ペドロサ、ケーシー・ストーナー、ホルヘ・ロレンソ、マルク・マルケスといった伝説的なライダーたちがしのぎを削ってきた。

2025年現在、MotoGPはヨーロッパのみならず、アメリカ大陸やアジア・オセアニアを股にかけ、年間22戦が開催されている。

画像: 長きにわたりMotoGPを牽引してきた「生きる伝説」バレンティーノ・ロッシ(左)。

長きにわたりMotoGPを牽引してきた「生きる伝説」バレンティーノ・ロッシ(左)。

一方、スーパーバイク世界選手権がスタートしたのは1988年。アメリカAMAスーパーバイクシリーズの成功を受けて、FIMが市販車ベースの世界選手権として創設した。カール・フォガティ、トロイ・ベイリス、ジョナサン・レイといった名ライダーを輩出し、MotoGPとは異なるキャリアパスを提供してきた。スーパーバイクは年間12戦(36レース)が行われ、そのうち11戦がヨーロッパでの開催となっている。

ファン層にも興味深い違いが見られる。上述の通り、MotoGPは全世界規模で人気を博し、ヨーロッパ、東南アジアなどワールドワイドな支持を得ている。2023年シーズンのMotoGPは、21戦で総観客数284万8000人を記録し、1レース平均でも約13万人がサーキットを訪れた。テレビ視聴者数は年間で4億人を超え、特にスペイン、イタリア、フランスが最大マーケット。近年では東南アジアでの人気もすさまじい。

画像: WSBKで前人未到の6連覇を達成したジョナサン・レイ。

WSBKで前人未到の6連覇を達成したジョナサン・レイ。

対してスーパーバイクは、よりコアなモータースポーツファンに支えられ、年間総観客数は約50万人。テレビ視聴者数は年間約4000万人と、MotoGPに比べれば規模は小さいが、イタリアやイギリスを中心に根強い人気を持つ。スーパーバイクでは観客とライダー、チームの距離が近く、パドックパスが比較的安価で手に入ることもあり、ファンとの交流が盛んなところも特徴だ。

運営組織はどちらもDorna Sportsがプロモーターを務めているが、MotoGPはプレミアムスポーツとしての位置づけが強く、放映権収入も高額。MotoGPの年間市場規模は約15億ユーロ(約2400億円)と推定され、タイトルスポンサー契約も年間数千万ユーロ規模に達する。

画像: MotoGPのスペインGPでは20万人を超えるファンが来場。

MotoGPのスペインGPでは20万人を超えるファンが来場。

一方のスーパーバイクは、より低コストかつアクセスしやすいスポーツイベントであり、年間市場規模は約1億~1億5000万ユーロ(約160億~240億円)とされる。観戦チケットやホスピタリティの価格もMotoGPに比べて控えめであり、ファンにとって参加しやすいレースシリーズだ。

経済規模に比例して、チーム運営コストにも大きな違いがある。MotoGPのワークスチームの年間予算は約4000万~6000万ユーロ(約64億~96億円)にも上るのに対し、スーパーバイクのワークスチームは約500万~1000万ユーロ(約8億~16億円)。

画像: 世界格式のレースながらファンとの距離が近いのもWSBKの魅力のひとつ。

世界格式のレースながらファンとの距離が近いのもWSBKの魅力のひとつ。

プライベートチームでもMotoGPでは約1500万~2500万ユーロ(約24億~40億円)が必要とされるが、スーパーバイクでは約200万~400万ユーロ(約3億~6億円)と、桁違いに低コストで参戦が可能となっている。また、予算に加え市販車へのフィードバックが期待できることも、メーカーにとって大きなメリットであるといえる。

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