文:河村大志
MotoGPとWSBKに使用されるマシンのちがい

メーカーの叡智と技術、多額の資金を投じて生み出した最高傑作がMotoGPマシンだ。
マシンは同じ1000ccでもまったくの別物
最初に触れなければいけないものといえば、やはりマシンの違いだろう。MotoGPは「プロトタイプ」カテゴリーであり、レース専用に設計・開発されたマシンが使用される。エンジン、シャシー、サスペンション、電子制御システムに至るまで全てがレースのためだけに作られたものであり、公道仕様の市販バイクとは一線を画す存在である。
対してスーパーバイクは、市販車ベースのマシンで競われるカテゴリーだ。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)の規定によれば、スーパーバイクは「公道走行が可能な車両をベースに、一定の改造範囲内でレース仕様に仕立てられる」ことが求められている。

WSBKマシンは市販車をレギュレーションの範囲内でチューニングしたもの。
ホモロゲーション要件として、年間500台以上の生産が義務付けられ、ホンダCBR1000RR-R、ヤマハYZF-R1M、ドゥカティ・パニガーレV4 Rなどがベースマシンとなる。外観は市販車と非常によく似ているが、内部はレース向けに最適化され、エンジン、サスペンション、電子制御が大幅に改造されている。
レギュレーションにも大きな違いがある。2025年現在、MotoGPでは最高排気量1000cc、4ストロークエンジン、最大4気筒、シームレストランスミッションが認められ、エアロパーツやライダー補助電子制御システム(トラクションコントロール、ウィリーコントロール等)が高度に発達。
一方、スーパーバイクでは、エンジン内部構造の変更制限、エアロデバイスの禁止(ただし、市販車に装着されているものを使用可能)などが義務付けられている。開発を含め、一からマシンを作り上げていくMotoGPと、市販車をベースにレース仕様に改造するスーパーバイク。4輪でいうとフォーミュラカーとGTカーくらい、両者には大きな違いがあるのだ。