文:太田安治/写真:南 孝幸
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カワサキ「Ninja7ハイブリッド」インプレ

Kawasaki
Ninja 7 Hybrid
総排気量:451cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
モーター形式:水冷交流同期電動機
シート高:795mm
車両重量:228kg
発売日:2025年2月15日
税込価格:184万8000円
カワサキの技術と夢が詰まった革新の一台
ガソリンエンジンと電動モーターの動力を走行状況に応じて配分するのがHEV(ハイブリッド)システム。自動車では広く普及しているが、バッテリーとモーターの搭載スペースに厳しい制約があり、重量増も嫌われるオートバイには不向きとされてきた。それだけに二輪車世界初のストロングハイブリッドの走行性能は大いに気になるところだ。
動力モードは3種類。「EV」モードはモーター動力のみで「スポーツ」と「エコ」モードはエンジンとモーターの併用。どのモードでもクラッチは自動制御されるためクラッチレバーは存在せず、シフトチェンジは左手の親指と人差し指でセレクタースイッチを操作するのでシフトペダルも付いていない。
最もパワフルでマニュアル変速となる「スポーツ」はエンジン出力にモーターアシストが加わって合計69PSを発揮。リリースには「特定の条件下においてZX-10Rを上回る発進加速」と謳われているが、確かにゼロ発進は強烈。右スイッチ部のe-ブーストボタンを押したままスロットルを開ければグワッと押し出されるようにダッシュする。
ただしe-ブーストが効くのは5秒間で、その後の加速はエンジンパワーが主体となる。車重が228kgと重いこともあり、体感的な加速力はニンジャ400と同程度だ。

ハイブリッドシステムで気になるのはエンジンとモーターの連携。「エコ」ではエンジン停止のままモーターの力で発進し、スロットル開度や負荷に応じて自動的にエンジンが始動するが、モーターからエンジンへの切り替わりに違和感はない。
このモードではマニュアル変速とオートマチック変速が選べるが、相性がいいのはオートマチック変速。全開加速ではクラッチの断続にタイムラグを感じるものの、市街地で流れに乗るペースでは実にスムーズに変速する。この「エコ」モードでは「スポーツ」よりも抑制されたパワーをモーターがアシストするので250cc車なみの燃費となり、ハイブリッドの恩恵が存分に受けられる。
既存のEVバイクはミッションを持たないが、ニンジャ7の「EV」モードはミッションの1~4速までを使うのでモーター回転数が抑えられて静粛性が高い。ただしバッテリー容量の関係で航続距離は短かめで、最高速度も65km/h程度だから、現実的には静かな住宅地内の移動向き。歩くような速度で前後に動かせる機能は、ガレージの出し入れ、傾斜地での駐車で大いに役に立つ。
ハンドリングは228kgの車重と、クルーザーのエリミネーター(400)よりも長いホイールベースによって安定志向。前後サスペンションのソフトな設定、風防効果の高いカウル/スクリーンと併せて大型ツアラー的な乗り味。それでいてスタートダッシュが強力で、オートマチックのイージーさも持つキャラクターは他に類のないもの。カワサキの技術を知らしめる一台だ。