純正スタイルが強く支持されることもあって、大きなトラブルもなく乗り続けられる車両も多いCB-F。ただ、通常整備だけでは今は大丈夫でもそのままずっと……というわけにいかなくなってきていると、安田商会・安田さんは多くの車両や作業の経験から言う。それをカバーするための車両見直し作業やオリジナルパーツに注目してみよう。
※本企画はHeritage&Legends 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

エンジンは今のうちに消耗品の交換をしたい

純正スタイルからサーキット走行仕様まで、CB-Fに多くの仕様を作り、代表の安田さん自身もFで楽しんできた安田商会。紹介するCB750Fは同店に入庫し、最近完成したものだが、今のFへのヒントも多く込められている。

画像: ▲安田商会の安田明男さん。CB750FCはもう30年近く愛車として乗ってきた。多くの車両を扱い、パーツの経年などにも配慮し注目している。

▲安田商会の安田明男さん。CB750FCはもう30年近く愛車として乗ってきた。多くの車両を扱い、パーツの経年などにも配慮し注目している。

「オーナーさんが自ら作ってきた車両だったんです。エンジンオーバーホールほかレストアもして長く乗ってらしたんですけど、オイルポンプのギヤを割ってブロー。それで“次はプロショップに出そう”と考えておられたこともあって、入庫されたんです。

エンジンはクランクケースとミッションは使えたのでそれを使い消耗品も交換した上で、ほかは当店で使うつもりでストックしていたものを中心に組み直しました。全バラついでにケースとシリンダーはボーリングして、750から890cc仕様になってます」

画像: ▲YASUDA SHOKAIのCB750F。オーナーが作業したエンジンの組み直しをきっかけに各部も確認し手直しを図る。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

▲YASUDA SHOKAIのCB750F。オーナーが作業したエンジンの組み直しをきっかけに各部も確認し手直しを図る。詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!

寄せ集めですけど、と安田さんは言うが、いずれ使う予定があって状態も知っているからのストックだし、そこは問題ない。消耗品についてはピストンやミッションベアリング、プライマリーダンパーにカムチェーンテンショナー、ステムシールにクランクメタルといったパートが挙げられた。この組み直し作業は、まさに今のFのエンジンに効いてくるものだ。

「結構細かいところまで換えていますけど、交換可能なものは今換えた方がいい。今のうちにです。まだ今は社外品も含めて何とかなりますけど、この先はどうなるか分かりません。エンジンを開ける機会があるのなら、中途半端にしておくよりも全部やってすっきりしたいという感じですね。

画像: ▲エンジンはCB750Fベースに消耗品をすべて交換。ピストンもワイセコφ67.5㎜鍛造品で890㏄化するなどでリフレッシュ。電装系も一新し、キャブレターはオーナー持ち込みのFCRとした。

▲エンジンはCB750Fベースに消耗品をすべて交換。ピストンもワイセコφ67.5㎜鍛造品で890㏄化するなどでリフレッシュ。電装系も一新し、キャブレターはオーナー持ち込みのFCRとした。

CB-F自体が今までオーバーホールなしで問題なしの車両も多かったんでしょうけど、もう40年経ちますから経年劣化は避けられないと思います。オイル交換も定期的にやってきたというものでも、漏れがなくてもオイル食い(消費量が多い)やオイル上がり、下がりで白煙が出るようなら、ちゃんと開けて仕立て直したいです。

これと電気系を新品にしてやる。カスタムブームの頃ならスープアップメニュー優先だったけど、今やるのはこっちかな。750Fでキャブ変更を考えているのなら、パワーを生かすにもついでにボアを上げていい。この車両もでしたけど、もちろんキャブは新品で」

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不明点を見直して長く乗ってほしい

エンジンだけでなく、この車両からはまだ多くのことが学べるようだ。

「入庫の機会ができたので、フレームから作りたいとなりました。補強や足まわり変更などもオーナーさんがやられていて、好きな形にできていました。フレームはレイダウンとワイドリヤホイールに合わせた位置にショックが来るようになどバランスの悪いところを加工して、ネジ穴のだめそうなものを再タップしたりしてパウダーコート仕上げ。

画像: 不明点を見直して長く乗ってほしい

ステアリングステムも圧入などちゃんとして作り直しました。ボルトなども再めっきし、仕上げに外装も塗り直しています。

組み立て不良があったようなところを見直していって、結果的に全面的に作り直しにはなっていますけど、オーナーさんの作った=望む形も維持したまま、安全に乗れるようになっている。つまり、長くも乗れます」

動くべきところが正しく動き、固定される部分は正しく止まる。その上で仕上がりも。プロの見直しを受けて分からないところを直すのは、まさに有効だ。

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CB-Fの楽しみ幅を広げる作業やパーツも

不具合を抱えつつ満足しないままよりも、思い切って見直す。それをFを知るプロに依頼すれば、間違いなく満足度は高まる。自分で作業をしてきたというオーナーにも、その機会を作ることは有効だ。それだけの経験と知識がある。その上に、変わりゆく周辺環境や実例への対応力も持っている。

画像: ▲赤サビも取れ、きれいに抜けたシリンダースタッドボルト。

▲赤サビも取れ、きれいに抜けたシリンダースタッドボルト。

安田商会でのそんな対応力の例を紹介すると、シリンダースタッドボルト外しはCB-Fで内側2気筒の排気側に多いボルト固着に対応するもの。熱や鉄/アルミの電位差でかじりやすく、とくに1100Fでは砂噛みも含めて抜くのが難しいところだが、ほぼ確実に抜けるという方法を確定している。見通しが立てば余計な手間や時間をかけずに他の作業にも移れるのだ。

画像: ▲クランクケース側もネジ穴崩れやサビの残りはない。どうしても取れない場合にもほかに外す方法はあるとのこと。

▲クランクケース側もネジ穴崩れやサビの残りはない。どうしても取れない場合にもほかに外す方法はあるとのこと。

パーツ面では、注目は燃料タンクだ。純正鉄タンクの劣化が進み続けているのは周知の話。安田さんも内部の錆対策などを進める中、タンク表面にピンホールができたり、タンクの板材そのものが薄くなってしまうのを見つけてきた。板材の薄さは手で押してペコペコと反応があるほど。

「腐食とか板厚が薄くなったものをそのまま使うよりいいと思い、FRP製を用意しました。他モデル用も製作されているところに依頼して型から作ってます。内部もコーティングしていますし、簡単に割れるものでもないので、いずれ純正を探すとか、アルミタンクにするとかまでのつなぎで載せてもいいと思います」とも安田さん。

画像: ▲ヤマハXJR1200用φ43mmフロントフォークをCB-Fにマウントして前後17インチ化できる安田商会オリジナルステムキット。

▲ヤマハXJR1200用φ43mmフロントフォークをCB-Fにマウントして前後17インチ化できる安田商会オリジナルステムキット。

ほかにもXJR用足まわりでの17インチ化を容易にするステム、バンク角が稼げてオイル交換等にも配慮した4-1チタンマフラーなども用意され、多くのFユーザーの要望に細かく応えてくれる。

もちろん前半で記したような見直し作業、エンジンや車両の製作も対応する。ちょうどいいFを望むなら、注目したい存在なのだ。

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今の楽しさもこれからも見据えたオリジナルパーツ群

今使える手法をユーザー負担を抑えながら提供する。CB-Fの性能をしっかり引き出す。そしてこれからも長く乗れるように。安田商会ではそれらを反映したオリジナルパーツも展開する。

●XJR活用で17インチ化を容易にするステム

画像1: ●XJR活用で17インチ化を容易にするステム

CB-Fシリーズを前後17インチ化したいという時に使いやすいXJR1200用φ43mmフロントフォークをCB-Fにマウントできる安田商会オリジナルステムキット(19万5800円)。メーターステー(アッパーブラケットに装着)、また純正ヘッドライトステーを使いライトが少し前に出せるアダプターも同梱される。

画像2: ●XJR活用で17インチ化を容易にするステム
画像3: ●XJR活用で17インチ化を容易にするステム
画像4: ●XJR活用で17インチ化を容易にするステム

ハンドルマウント別体、上下ブラケット裏は肉抜き。フォークオフセットは純正の45mmから32mmとなる。試作時点での35mmも試した上で、トレール量は同じでコーナーでのステア感が軽いとして32mmの選択となった。

●CB-F純正形状をキープするFRPタンク

画像: ●CB-F純正形状をキープするFRPタンク

新たに送り出したFRP製燃料タンク(19万2500円)。CB-Fと同形状/同容量でサフェーサー仕上げ。タンクキャップは純正、エアプレーンタイプが選べる。また燃料コックもFC純正とオプションで左右ダブルコックが選べる。片側では2リットル残るため燃料を使い切りたいという向きにも合う。車検非対応だが強度もあり、使い方が工夫できる。

●バンク角を稼ぎ低速も伸びもあるマフラー

画像: ●バンク角を稼ぎ低速も伸びもあるマフラー

CB-F用オリジナル手曲げチタンマフラー(UPタイプ)はφ42.7mmエキパイによる手曲げ4-1集合タイプ。装着したままでオイル交換/フィルター交換ができる利点を持ち、CB-Fでネックになりがちなバンク角も確保していて人気の1本。25万3000円。ノーマルステップ対応(3万8500円で別売りのUP用テールパイプでバックステップ可)品も同価格。

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固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す

画像1: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像2: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像3: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像4: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像5: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像6: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す
画像7: 固着しやすい1100Fスタッドも丁寧に外す

CB-Fシリーズのエンジンで難点となりやすい内側2気筒(#2/#3)排気側スタッドボルトの固着。1100Fでは砂が入りやすく砂噛みもあってなおさらだが、安田さんは確実な手法を提案。写真はその手順を追っているが、ダブルナットをかける前の下処理として、金属加工向け洗浄剤をぬるま湯で希釈して2週間ほど漬けておくとのこと。これで浸透性が高まる。他のボルトを抜いた後、残った当該部をケース裏からガストーチで加熱し、アルミと鉄の膨張差を生かして抜く。サビやすいのがネジ山の奥部分であることや洗浄剤の浸透性に着目し、定番化した点に注目を。

取材協力:安田商会

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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