文：宮崎敬一郎、オートバイ編集部／写真：南 孝幸
ヤマハ「トレーサー9 GT+」最先端の安全装備
“電子の目”がアシストする高い安全性！ 自慢の最先端アイテムを徹底解剖
トレーサー9 GT+に最先端の安全装備が採用されているのは分かったが、実際にはどのような効果があって、ライダーにはどんなメリットがあるのだろうか？ ここで、今回新採用された最新機構の詳細を見ていこう。
ヤマハ車初のACC（アダプティブクルーズコントロール）＆ミリ波レーダー対応UBS
高速道路の巡航が超快適に！
ヤマハ車としては初となるアダプティブクルーズコントロール（ACC）は、前後に設置したミリ波レーダーセンサーを活用して、前車との車間距離を維持しながら、交通の流れに合わせた加減速を自動で行ってくれるもの。クルージングを非常に楽にしてくれる快適機能だ。前車との車間距離は距離ではなく通過時間の差で決められており、0.8～2秒までの4段階から選択可能で、スピードは160km/hまで設定可能。選択ギアによっても異なるが、1-2速の場合、30km/h以下の低速になれば、ACCは自動的に解除される。
制御のシステム概略をわかりやすく並べたものがこちら。ミリ波レーダーとIMUからの情報をECUなどで判断し、各種操作を行う。
ヘッドライト下にはボッシュ製のミリ波レーダーセンサーが設置される。リアセンサーはテールランプに巧みに隠されている。
走行中のACCのスイッチ操作はシンプル。ACCをONにして、SETボタンを押し、車間距離設定と速度設定を好みで調節すればOKだ。
ミリ波レーダーを活用した前後アシストUBS
作動の模式図。ミリ波レーダーセンサーからの情報を検知して、ABSユニットが前後ブレーキにオイルを追加圧送する仕組みだ。
急速接近時にブレーキアシスト！
トレーサー9 GT+のもうひとつの目玉装備が、ミリ波レーダーセンサーに対応した、アシスト機能つきのユニファイドブレーキシステム（UBS）。ユニファイドという名の通り、前後連動ブレーキをベースとしており、ミリ波レーダーセンサーからの車間距離情報やIMUからの車速、スロットル開度などの各種情報をもとに走行状態を判断、車間距離が急速に縮まり過ぎ、それに対するライダーのブレーキ操作が不十分と判断された場合に、ABSユニットから前後キャリパーにブレーキオイルを圧送して、制動力を追加アシストする。
前方に急な割り込みがあった時や、前車との距離が急に縮まってしまったときに前後ブレーキの制動力をアシストしてくれる。
作動開始時には、車間距離が詰まり過ぎていることを示す警告画面がメーターいっぱいに表示され、ライダーに注意を促す。
前後ブレーキにオイルを圧送する必要があるため、シート下のABSユニットは従来のGTよりもかなり大きいものに変更された。
追い越し時やカーブで自動的に加減速
急に前車がいなくなった際、ACCは設定車速まで回復するための加速を行うが、コーナーで急加速されるとライダーは不安になるもの。そこでGT+では、コーナリング時の車速を若干抑えることでこれを制御。また、追い越し時はライダーのウインカー操作に反応して加速制御を高めてくれる機能も付加されている。
追い越しをかける際、ライダーのウインカー操作と車線変更に反応して、通常の速度回復制御より加速を若干強めてくれる設定となっている。
たとえばACCの設定が 80km/hでコーナリング中に前車が急にいなくなっても急加速しないように、車速を60km/h付近にまで抑えて不安感を減らしてくれる。
急減速にも対応した電子制御サスペンション
KYB製の電子制御サスに追加されたKADS（KYBアクティブダンパーシステム）は、急減速が発生した際に自動的に対応、ダンパーの減衰力を瞬時に強めることで、通常発生するノーズダイブの量を抑えてくれる。この機能によって、ブレーキアシストが作動するような一瞬の急減速時でも、車体の大きなピッチングを抑えてくれる。
協調制御0％（左）から協調制御70％（右）
KADSの作動イメージ。協調制御と呼ばれる、車速や減速Gに対応して減衰力を瞬時に強める制御でノーズダイブを抑えてくれる。
20km/hで走行中の軽トラックを50km/hで追走、急接近した時のブレーキアシスト作動時の瞬間。ノーズダイブが少ないことが分かる。
