ライダー歴50年で5000台に試乗したテスター・太田安治氏が最新モデルを分析! 今回は初代から現行モデルまで幾度もテストしてきた「MT-09」の新型について考察する。
以下、文:太田安治
画像: YAMAHA MT-09 / MT-09 SP 欧州仕様・2024年モデル 総排気量:890㏄ エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:825mm 車両重量:193kg(SPは194kg) 国内発売時期:2024年春以降

YAMAHA MT-09 / MT-09 SP
欧州仕様・2024年モデル

総排気量:890㏄
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:825mm
車両重量:193kg(SPは194kg)

国内発売時期:2024年春以降

ヤマハのヨーロッパ市場向け2024年モデルとして、10月31日に新型MT-09、その2日後の11月2日にMT-09SPが相次いで発表された。「なんでジャパンモビリティーショーで見せてくれなかったんだ!」という不満はさておいて、現行モデルが出てから2年という最近にしては早いモデルチェンジサイクルにヤマハの本気度を感じたのは僕だけじゃないはず。

MT-09シリーズの特徴はなんと言っても並列3気筒レイアウトのエンジンだね。ヨーロッパブランドではトライアンフとMVアグスタが作っているけれど、日本ではヤマハだけ。ベテランライダーなら1976年に発売された空冷並列3気筒のGX750を思い出すかな?

画像: YAMAHA GX750 1976年

YAMAHA GX750
1976年

当時は国産4メーカーのナナハン(750cc)が国内のフラッグシップ。ライバル車は4気筒エンジンだったのでGXの3気筒エンジンは商品性で見劣りして人気が出なかったけれど、車体がコンパクトで取り回しやすかったし、メンテナンスフリーのシャフトドライブを採用していたからツーリングには適していた。

もちろんMTのエンジンはGXから受け継がれたものではなくて完全新設計。兄弟車であるXSR900トレーサー9GT、3輪のナイケンにも搭載されているユニットだ。同じ排気量なら2気筒よりも高回転/高出力化が可能で、部品点数が少ないため4気筒より軽量コンパクトに仕上げられて製造コストも抑えられ、振動面でも有利。日本の軽自動車がすべて排気量660ccの3気筒エンジンで、ターボ過給によるダウンサイジングが進む小型車も3気筒採用が増えている。これも600cc~1200cc程度の排気量なら3気筒が合理的という表れだよ。

でもMT系のエンジンは決して合理化の産物じゃない。並列3気筒はクランク角120度だから等間隔爆発になり、低回転域からゴリゴリ粘るようなトルク感があって、中回転域では軽くスムースに回るのにパワー感は図太いという特性。これがネイキッドやアドベンチャーモデルに合っているという判断から、MTのバリーション展開までを織り込んで設計されたヤマハ入魂のエンジンだ。

画像7: MT-09 2024年

MT-09
2024年

実際、常用速度域でもスロットルを少しクイックに開ければ猛然とダッシュして、890ccという排気量からは想像できない速さを見せつける。さすがにレッドゾーン近くの伸びやかさは4気筒に劣るけど、公道でその回転域まで引っ張る状況は無いに等しいし、車重が軽いことと併せて1000cc以上の大排気量車から乗り換えても動力性能不足は感じない。2輪用エンジンとしては少数派だけど、乗れば2気筒、4気筒との違いは明確。3気筒の味は多くのライダーに体感して欲しい。

画像: MT-09 SP 2024年

MT-09 SP
2024年

ECUマップの変更でレスポンスやエンジンブレーキ特性が変わっている可能性はあるものの、大幅な改良を受けた2021年型が高く評価されているだけにエンジン関係はキープコンセプトだろうね。6軸IMUを中心にしたトラコンやウイリーコントロール、ABS、パワーモード、シフターといった電子制御系は日進月歩だから、それぞれの介入と作動が洗練されているのは間違いない。

結果、暴れ馬のようだった初代と基本的に同じエンジンとは思えないほど上手に調教されていると思う。初めて大型車に乗るライダーでも不安なく扱えて、3気筒だけの味わいを堪能できる仕上がりになっているはずだ。

文:太田安治

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