1980年代はフロント16インチタイヤの採用が流行、そして市販車にもラジアルタイヤが装着され始めた時代だった。16インチタイヤについて、ラジアルタイヤの誕生についてそれぞれ解説する。
文:ノア セレン、横田和彦、太田安治

1980年代に流行したフロント16インチタイヤ(ノア セレン)

画像: 1980年代に流行したフロント16インチタイヤ(ノア セレン)

同じ〝16インチ〟でも車種により個性があった

「16インチはフロントから巻き込んで転びやすい」…というウワサが昔からあるけど、MVX250Fでバイク&サーキット走行のイロハを覚え、かつ姉妹誌『ミスターバイクBG』にて大小数々の16インチ車に乗った経験からすると「必ずしもそんなことはない」と思う。

だって16インチと言ったって色々あるし、MVX250Fや初期のVT250、VF750Fなどは、確かにそれ以前の18インチ車に比べればクイックなハンドリングはしてはいたものの、フォークの整備がちゃんとなされていて、タイヤがフレッシュならば、そのクイックさを活用してキビキビ走れた。

同じ16インチでも、たとえばCBX750FとGPz750Rでは、まるっきりハンドリングはベツモノなのは興味深かった。CBXは次世代のハンドリングを目指して作り込まれた感じが確かにあって振り回し感が楽しめるのに対して、ニンジャは16インチを採用しつつもリア荷重が大きいので、あまり16インチを活用できているハンドリングとは思えない。時代の流れ的には16インチにしてみたけれど、ハンドリングそのものは旧世代的という感じ。

1984年までの16インチ車で特に印象が良いのは、3型GSX750Sカタナや空冷CBR400F、FZ400R。フレームやサスペンション、ブレーキがしっかりしているので、「スポーツ」が一世代進化した感じがあり、16インチを意識せずに普通にシャープなハンドリングを楽しめる。

クイックさと安定感のバランス、そしてラジアルタイヤの進化などから、今は各社ともに17インチが主流だが、16インチだって決して悪いものではなかったなぁ。

画像: スポーツモデルのタイヤサイズの選択肢は広かった 1983年にマイナーチェンジを受けたGSX750Sは、フロント16インチ(100/90-16)、リア17インチ(120/90-17)を採用した。対する1984年に登場したCBX750Fはフロント16インチ(110/90-16)に、リア18インチ(130/80-18)を装着した。それぞれリアのホイールサイズも異なれば、前後のタイヤサイズもバラバラの時代だった。

スポーツモデルのタイヤサイズの選択肢は広かった

1983年にマイナーチェンジを受けたGSX750Sは、フロント16インチ(100/90-16)、リア17インチ(120/90-17)を採用した。対する1984年に登場したCBX750Fはフロント16インチ(110/90-16)に、リア18インチ(130/80-18)を装着した。それぞれリアのホイールサイズも異なれば、前後のタイヤサイズもバラバラの時代だった。

画像: GP500で活躍するRG500Γも16インチ! 1982年世界ロードレースGP500クラスでチャンピオンを獲得したRGΓ500のフロントホイールも16インチを搭載した。16インチの影響はロードレースから来ていた。

GP500で活躍するRG500Γも16インチ!

1982年世界ロードレースGP500クラスでチャンピオンを獲得したRGΓ500のフロントホイールも16インチを搭載した。16インチの影響はロードレースから来ていた。

画像1: バイク用タイヤの歴史|1980年代のスポーツモデルはフロント16インチが流行、そしてバイアスからラジアルへと進化

ベテランテスター・太田安治の一言

16インチに消極的だった「ハンドリングのヤマハ」

フロントホイールをそれまで標準だった18インチから16インチに小径化する手法は、タイヤを太くして接地面積を増やし、より高いグリップを得る目的で世界GPレーサーが採用したもの。レプリカ時代はレーシングマシンに似ているほど人気を得たから、市販車にも続々と採用された。

確かにVTやRG250Γといった初期の16インチモデルは寝かし込みが鋭かったけど、タイヤ幅が細くてバンク中の接地感が薄く、高速コーナーは怖かった。フロントに大きな荷重が掛かると内側に巻き込んでくる癖もあった。ただし、大型車では車重から来るハンドリングの重さを打ち消すという目的において、16インチにメリットが感じられたのも事実。

結局、ロードスポーツでフロント16インチがもてはやされたのは3年間ほど。「レーサーと同じ!」と喜んで損したなぁ(笑)。

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