純正ルックで乗るのに不可欠な部分を補完する

フロント19インチの星型キャストホイール、ツートンのシート。左右出しのメガホンエンドマフラーも備えるなど、カタナのノーマルらしさをしっかりと残したこの車両。テクニカルガレージRUNによる近作で、冒頭のように外装やハンドルほか多くのコンポーネントが純正のままだ。だが、押し回しすると明らかに純正と異なり軽く、かっちりとした動きが感じられる。どんなオーダーを受け、どう作られたのかを同店・杉本さんに聞いた。

「“ノーマルイメージをできるだけ崩さない”というご依頼でした。じゃあノーマルでいいじゃないかという考えもあるかも知れませんが、それだと、今カタナを乗って楽しむことは難しいと思います」

普通に考えれば、各部オーバーホールをはじめ十分なレストアを行えばいいのではとも思える。この車両でも、フレームも外観もホイールも純正そのままとは言え、すべて一度きれいにして再塗装されている。ショートパーツ類も今後劣化しそうなものはすべて新品に交換して、オールリセットされている。それでも、だ。

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「ノーマルで新品を組んだとしても、サスペンションとブレーキに不安が消せません。なぜかというと、40年前の車両だから。ファイナルエディション(2000年型SY)からも、もう20年経っています。しかも設計は40年前と基本的に変わっていない。それを基準に考えると、今普通に走るのが危険と思える箇所があるわけです。

考えてみてください。完調ならば余裕で200km/hで巡航できるパワーがある。でも、急なアクシデントや予期しないトラブルに対応するのが難しいんです。ここに対処するのはもう、古いものだと分かって乗る側の義務とでも言うべき部分です。

具体的に言えば、まずブレーキ。マスターシリンダーにキャリパー、ローターにパッドを換えて、制動力を確保する。この車両でもひと通り換わっています。当然、前後のサスペンションの能力が不足しますから、ここも手を入れる。リヤショックは交換。フロントフォークは交換でもいいですし、この車両のようにオーバーホールとともにスプリングを換えて油面も上げて対処させるように。

タイヤもできれば制動力やサスペンションの性能を引き出すにはラジアルにしたいですが、純正1.85-19サイズホイール向けはないので、バイアスで新しい世代のものを選ぶ。グリップも欠かせないんです。ここではブリヂストンのBT46を履かせています。

要は重要保安部品は新しい世代で信頼できるものにするということ。この車両はその例なんです」

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今、カタナのオリジナルデザインやフィーリングを維持しながら、普通に走れるように。厳しいようにも聞こえるが、あくまでも安心と安全に配慮した優しさがある。それをまず反映した車両。前述したように換えられるパーツは交換または再仕上げして、組んだ状態が新車と同じスタートというリセットがしてある。その上で、必要な箇所の給脂や給油は適量で行い、同じくボルト類のトルク管理もトルクレンチを使って正しく行う。当たり前のようにも思えるが、それがいつの間にか損なわれていることも多くある。それを同店では、新車からの販売実績と多くの車両やシーンでの経験も合わせて、組んでいき、車両としてのバランスを取る。

「ちょうどいいところにオオノスピードさんからカタナ純正形状のチタンマフラーが出ましたから、それも加えています。純正車両は重いので、とくにブレーキには負担がかかりやすい。それを大きく軽減できます。サスもエンジンの負担もです」

押し回しで感じた軽さは、ここにも理由があった。全バラと新品、再仕立てされた大物を正しく組む。きちんと組まれた純正は動きが軽いことを実証する感じで、その上に、形は純正に同じでフルチタン化したマフラーでの軽さがある。隠れたところでは前後アクスルとスイングアームピボットの合わせて3本のシャフトをクロモリ化した点、エンジンハンガーをTG-RUNオリジナルアルミ削り出しにし、車体のしっかり感も高めている点。こうした現代的なアップデートを、元のイメージをいかしたまま行えている点に、ぜひ注目したい。

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極力ノーマルを維持するというオーダーに沿って、純正新品そのままと言える作りで構築されたコクピット。トップブリッジ上右にはファイナルエディションのシリアルプレートも見える。ハンドルも純正鍛造セパレートで、フロントマスターシリンダーがブレンボ・レーシングに変更され、ブレーキラインがステンレスメッシュに換わっているのが数少ない変更点と言える。

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燃料タンクはタンクはTG-RUNでストックしていた新品で、他の外装とフレームは再塗装されている。フロントブレーキ強化と前後サス変更/セッティングという今カタナに不可欠な内容を生かすためにも、フレームのリフレッシュ(含む再塗装)は行いたい部分。補強はサーキットを攻め込むレベルでなければ不要とのことだ。

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シートは純正の切り替えパターンや表皮カラーを生かしながら、内部フォームとライダー側の表皮を変更した「TG-RUNスポーツ&コンフォートシート」に換わる。足着き性や居住性、さらには操作性も高めてくれるものだ。純正ルックとしてタンデムベルトも装備する。

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ステップはTG-RUNオリジナルステップキット GSX1100Sカタナ用でバー位置が上に3mm、前に5mm移動し操作性を高める。スイングアームピボットシャフトは前後アクスルシャフトと合わせてクロモリ製に変更され、車体のしっかり感を高めている。また純正では鉄の板となるエンジンハンガーも「TG-RUN ビレットエンジンマウントキット GSX1100Sカタナ用」で強化し上質なハンドリングをもたらしている。

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空冷DOHC4バルブ(2バルブ1ロッカー)の1074cc・直4エンジンは状態が良く走行距離も少ないため、ノーマルそのままで外観をきれいにした。下側エンジンハンガーもTG-RUNのマウントキットでアルミ削り出しに変更される。キャブレターも純正BS34を使う。

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マフラーは純正同様の左右出しレイアウトだけでなく、テーパーサイレンサーやエンド部の形状まで純正をフルチタンで再現する4-2-1-2のオオノスピード「菊砲」。純正18kgに対して約7kgと軽量で車両への負担を減らすとともに消音材も交換可能など長く使える配慮がされ、この車両のコンセプトにも合致している点に注目したい。

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フロントフォークは純正φ37mmでスプリングを変更し油面等をセッティング。フロントブレーキは同店で10セット限定で用意した「TG-RUN キャリパーサポート&レーシングディスクSET(GSX1100S刀ファイナルエディション専用)」をブレンボAxialビレットキャリパーと組み合わせる。ディスクはサンスター製レーシングディスクでφ310mm。

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リヤサスはカタナ純正アルミスイングアーム+オーリンズショックで、リヤブレーキは純正2ピストンキャリパー+純正ディスク。ホイールは1.85-19/2.50-17サイズのノーマルキャストを再塗装して装着している。ドライブチェーンはRK 525XXW(ED.GOLD)で純正630サイズからコンバートしている。

取材協力:テクニカルガレージRUN

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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