F.バニャイアが3戦連続のポールポジション獲得
予選日は朝から雨が降っていた影響もあり、天候は回復したものの、ウエットパッチが残っている状況の中行われた。Q1にはザクセンリンクで無敗を誇るマルク・マルケス(Repsol Honda Team)や中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)が出走。
マルケスは早々に暫定トップタイムを記録。さらにタイムを更新すべくアタックするも、ターン13で転倒。最終コーナーでの転倒ということもあり、走ってピットに帰還。マシンを乗り換えて再びコースに復帰する。
その間にブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)がトップタイムを更新。Q2進出圏外となったマルケスはマシンをねじ伏せ、なんとかQ1の2位となりQ2に進出を決めた。
各車上位2台のタイムを更新できず、ビンダーとマルケスがQ2に進出。中上貴晶はQ1を8位で終え、Q1敗退となっている。
Q2は路面が乾きドライコンディションの中行われた。ザクセンリンクで絶対的な成績を残しているマルケスだが、グリップ不足のマシンに苦戦を強いられる。Q2でまたしても転倒を喫し、再びピットへ戻る。Q1で転倒し、もう一台のマシンもQ2で転倒してしまったマルケスだったが、メカニックたちは今回欠場しているチームメイトのジョアン・ミルのパーツを使いマシンを修復。Q2残り5分でマルケスを再びコースに送り出した。
一方、好タイムを出したのはドゥカティ勢。このザクセンリンクでは過去に1勝しか挙げれていないサーキットだが、上位を独占。最終的にフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)が前年に続きポールポジションを獲得した。
2位にはルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)、3位にはジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)が入り、ドゥカティのトップ3独占を阻止している。
復活が期待されたマルケスはラストアタックでまたしても転倒を喫し7位で予選を終えた。ホンダ勢の苦悩を象徴するかの如く、予選だけで3度も転倒したマルケスからはこれまでの自信が全く感じられなくなっていた。
好調マルティンがスプリントレースで2勝目をマーク
土曜日のスプリントレースでは天候が回復し晴天に。気温は22度、路面温度は37度というコンディションの中、15周で行なわれた。
スタートでトップに立ったのは予選3番グリッドのミラー。ポールポジションスタートのバニャイアは2位でミラーを追う。
スプリントということもあり、前半から逃げにかかりたかったミラーだが、バニャイア、ホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)、マリーニ、ビンダーと、ドゥカティとKTMによる優勝争いが展開される。
4周目に直線で一気にスピードを上げたマルティンがターン11のブレーキングでミラーとバニャイアをまとめてオーバーテイク。トップに出たマルティンはタイムを更新しながら後続との差を拡げていく。
マルティンを逃すまいと、バニャイアもミラーをオーバーテイクし2位に浮上。しかし、マルティンとの差は開いており、差を詰めるどころか、徐々に離されていってしまった。
最終的に2位のバニャイアに2秒差をつけたマルティンがトップチェッカー。今季2度目のスプリント優勝となった。2位にはバニャイア、3位にミラーが入っている。
ザクセンリンクでは参戦した全てのレースで優勝を飾っていたマルケスは、ポジションを落とし11位でフィニッシュ。ついに連勝記録が止まってしまった。
中上は17位でフィニッシュ。特にフロントのグリップ不足に悩んでおり、完走することが精一杯な状況だった。
エースバニャイアとの一騎討ちを制したマルティンが2年ぶりの優勝
フリー走行から予選まで雨が続いたドイツGPだが、決勝日は朝から晴天に恵まれ、気温26度、路面温度47度のドライコンディションの中、30周で行なわれた。
午前中のウォームアップ走行でマルケスは今大会5度目の転倒を喫しており、その際に左手親指を骨折。レースへの参戦は認められたものの、度重なる転倒によりマルケスはレース欠場を決断。ミル、アレックス・リンスは怪我により欠場しているため、ホンダ勢は中上1人のみの参戦となってしまった。
決勝のスタートは、スプリント同様ミラーがホールショットを奪う。しかし、バニャイア、マルティン、マリーニと好調ドゥカティ勢があっさりとミラーをパスしトップ3を形成する。
前日のスプリントを制し勢いに乗るマルティンが3周目のターン12でトップに浮上。周回数の多い決勝レースにも関わらず、序盤からハイペースで周回を重ねていく。しかし2位のバニャイアも離されずに喰らいついていく。
後方ではビンダーがマリーニを捕らえ3位へ浮上。そこにヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)も加わり3台による3番手争いが繰り広げられる。しかし、19周目にビンダーがターン8で転倒。マリーニをパスしたザルコが3位に浮上する。
コンマ5秒という僅差で周回を重ねてきたトップ2台だったが、残り9周のターン11でバニャイアがマルティンをパスしトップに浮上。しかしマルティンもバニャイアの真後ろをキープする。そして残り7周となったところで、2周前に仕掛けられたターン11でマルティンがバニャイアを抜き返しトップに返り咲く。
そしてファイナルラップに入る直前、最終コーナーの立ち上がりでマルティンのリアタイヤとバニャイアのフロントタイヤが軽く接触。これにより2人のギャップが少し広がってしまう。最終周の最終コーナーまでプッシュしたバニャイアだったが、わずかに及ばずマルティンがトップチェッカー。マルティンが2年ぶり、今季初優勝を手にした。2位には惜しくも届かなかったバニャイア、3位にザルコが入り、ドゥカティによる表彰台独占となった。
ドイツでフルポイントを獲得したマルティンがランキングで2位に浮上。トップのバニャイアに16ポイント差とした。
中上は苦しみながらも14位でフィニッシュしポイントを獲得。唯一の参戦で厳しい状況だったが、ポイントと貴重なデータを持ち帰っている。
2023 MotoGP 第7戦 決勝結果
3連戦の最後を締めくくるのは伝統のTTアッセン
グランプリが始まった1949年から開催している伝統のオランダGP。長い歴史を誇るTTサーキット・アッセンが3連戦の最後を締めくくる舞台となる。
ストレートは短く、前半セクターは低速コーナーで構成されているが、後半セクターは高速コーナーの連続であり、アベレージスピードの高いサーキットである。最終コーナーであるシケインは最後の勝負どころとして、これまで多くのドラマを生んできたコーナーでもある。
昨年もドゥカティが制しているが、アプリリアのマーベリック・ビニャーレスが非常に良い走りを見せており、3位を獲得している。マシンとの相性を考えると、アプリリアにとって復調のきっかけにしたいサーキットだ。
そして気になるのがやはりホンダ勢。ドイツGPを欠場したミルの代役として、スーパーバイク世界選手権でTeam HRCから参戦しているイケル・レクォーナが出場することが発表された。
また同じくホンダ陣営で、リンスもオランダGPは欠場となる。代役はテストライダーのステファン・ブラドルが務める。
ドイツGPを棄権したマルケスはオランダGPに出場するようだ。マシンの仕上がりが悪く、転倒が相次いでいるホンダ勢。夏休み前最後のレースで復調のきっかけを掴むことができるのだろうか。
レポート:河村大志