F.バニャイアがコースレコードを更新するラップでポールポジション獲得
決勝前日の午前中に行われた予選は雲がかかっており、気温は23度、路面温度は27度というコンディションの中で行われた。
予選Q2進出をかけて行われるQ1には、前戦アルゼンチンGPで初優勝したマルコ・ベッツェッキ(Mooney VR46 Racing Team)が登場。Q1からの出走となったベッツェッキだが、セッション序盤から速さを見せいきなり暫定トップに浮上する。
セッション後半にはジョアン・ミル(レプソル・ホンダ)が2番手に食い込む。しかしヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)がトップタイムをマーク。この後各車タイムの更新はなく、ザルコとベッツェッキのドゥカティ勢がQ2進出を決めた。
Q2進出を果たしたザルコとベッツェッキを加えた12台で行われたQ2は、フリー走行から好調のフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)が暫定のトップタイムをマーク。そのバニャイアに喰らいついたのがアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGPでバニャイアと同タイムを記録する。
ポールポジションをかけて牽制し合うバニャイアとマルケスをよそに、単独でリンスがタイムを更新し暫定のトップに浮上。苦戦するホンダに移籍したリンスがセンセーショナルなポールポジションを獲得するかと思われたが、やはり速かったのはディフェンディングチャンピオンのバニャイアだった。最終的にコースレコードを更新する驚速タイムを叩き出し、ポールポジションを獲得してみせた。
リンスは今季最高の2番グリッドを獲得、3番グリッドにはルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)が食い込んだ。
王者F.バニャイアが今季2度目のスプリント制覇! A.リンスがホンダ移籍後初の表彰台獲得!
予選終了後、Moto3クラスとMoto2クラスの予選を挟み、今季から導入されたスプリントレースが行われた。予選で上空を覆っていた雲は消え去り、気温は31度、路面温度46度まで上昇した。
ポールポジションからスタートしたバニャイアがトップで1コーナーをクリア。2番手リンスが序盤から積極的にバニャイアの後と追う展開に。2台は順位を入れ替えながら周回を重ねていき、そこにスタートを決めたアレイシ・エスパルガロ(Aprilia Racing)もそこに加わっていく。
2周目にコーナリングで少し膨らんだリンスの隙をついたエスパルガロが2番手に浮上、その間にトップのバニャイアは2位以下に差をつけ始める。2位の座を奪われたリンスだったが、エスパルガロとの差を詰め、残り4周でオーバーテイクし2位を取り戻す。
一方、トップのバニャイアはミスを犯すことなくマージンを保ったままトップチェッカー。開幕戦に続き、スプリントレースで2勝目を挙げた。これにより、ランキングトップのベッツェッキとの差はわずか1ポイントにまで縮まっている。
大健闘のリンスが2位でフィニッシュし、ホンダ移籍後初の表彰台を獲得した。3位には12番グリッドから脅威の追い上げを見せたホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)が入っている。
A.リンスがホンダ移籍後初優勝! 決勝は完走わずか13台のサバイバルレースに
決勝日は雲ひとつない快晴となり、気温21度、路面温度42度のコンディションで、全20周で行われた。前日のスプリントで強さをみせたバニャイアが今回も強いのではないか、多くの人がそう予想していた決勝レースはリタイアが相次ぐ波乱のレースとなった。
ポールポジションのバニャイアと2番グリッドのリンスが順当にポジションをキープして1コーナーを抜ける中、予選10位スタートのジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)が好スタートを決め3位にジャンプアップを果たす。
オープニングラップのターン3でマルティンが転倒を喫し、マルケスを巻き込んでしまう。トップ争いはリンスが序盤からハイペースでバニャイアを追うも、直線スピードで勝るバニャイア相手になかなかオーバーテイクの機会が訪れない。
脅威的なペースで周回するトップの2台についていけないミラーは7周目に転倒。早くも3台目のリタイアとなってしまうが、8周目のターン2でなんとトップのバニャイアが転倒! 前戦のアルゼンチンGPに続く転倒を喫してしまい、痛恨の2戦続けてのリタイアとなってしまった。これでリンスがトップ、2位にはファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)、3位にマリーニという並びとなった。
3位に上がったマリーニは直線スピードを活かし、2位のクアルタラロをバックストレートでパスし2位に浮上。2秒先のリンスを追いかける。しかし安定したラップを刻むリンスを相手に、周回ごとに差をつけられてしまった。
最後の最後までペースを落とすことなく、全力でCOTAを駆け抜けたリンスがトップチェッカー。ホンダに移籍してわずか3戦目での優勝を成し遂げた。そしてリンスが所属しているLCRにとって今回のレースで100回目の表彰台という記録にも記憶にも残る優勝となった。
マリーニが2位でゴールし、MotoGPクラス初表彰台を獲得。3位にはクアルタラロが入り、今季初表彰台獲得となった。
バニャイアをはじめとする9名ものライダーが転倒する荒れたレースとなった今回のアメリカズGP。ホンダ勢はリンス以外全てリタイアしており、ホンダにとって厳しい展開となったが、2021年以来の優勝が舞い込んできた。そして優勝を成し遂げたリンスにとっては、自身初のMotoGPクラス優勝を決めた思い出の地で最高峰クラス通算6回目の優勝となった。
2023 MotoGP 第3戦 決勝結果
第4戦からヨーロッパラウンドに突入! 戦いの舞台は熱狂の地「ヘレスサーキット」
アメリカ大陸での連戦が終了し、GPは開幕戦以来のヨーロッパ大陸に戻ってくる。いわゆるヨーロッパラウンドの開幕である。ヨーロッパラウンドの初戦はスペインのヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトだ。
アンダルシア地方に位置するヘレスは、カレンダーで1、2の盛り上がりを見せる「熱狂の地」であり、地元スペイン人ライダーにとって勝ちたいレース、ステータスでもある。
直線が短く、コーナーが連続する中低速のテクニカルサーキットであるヘレス。偉大なスペイン人ライダーの名前がコーナー名として冠されており、MotoGPクラスで3度の世界王者に輝いたホルヘ・ロレンソの名前がつけられた最終コーナーであるターン13は毎年最後の勝負所としてドラマが展開される。
そのヘレスで行われる第4戦に、ロレンソ同様、自身の名前がコーナー名になっているレジェンドがワイルドカード参戦する。ターン6の名前になっているダニ・ペドロサだ。
125ccクラスで1度、250ccクラスでは連覇を達成し、MotoGPクラスでは13年に渡りトップライダーとして活躍したペドロサ。最高峰クラスではチャンピオンになることができなかったが、同クラス31勝という輝かしい成績を残し、スペインでのMotoGP人気を支えたスペインの英雄である。
そんなペドロサは2018年に引退し、翌2019年からKTMのテストライダーに就任し、KTMのMotoGPマシンの開発に携わっている。2021年にもスポット参戦を果たしているが、今回は地元スペインでの参戦ということもあり注目を集めている。今季は早くも第2戦のスプリントで優勝しているKTMだが、今回は3台目のKTMマシンに大注目だ。
レポート:河村大志