ホンダCBR400RRのライバルと言えばヤマハのFZR400R。45度前傾の「ジェネシス」エンジンを搭載し、F3を戦うワークスマシン・YZF400やGPマシン・YZR500で培った技術を惜しみなくフィードバックして造り上げられた意欲作だ。
文:オートバイ編集部、太田安治

ヤマハ「FZR400R」特徴

画像: YAMAHA FZR400R 1989年 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:770mm 車両重量:165kg(乾燥)

YAMAHA FZR400R
1989年

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:770mm
車両重量:165kg(乾燥)

画期的なアイデアを満載した意欲作!

レースの結果が人気とセールスに直結した1980年代、ヤマハはTT-F3クラスにワークスマシン・FZR400を投入。そこで培われたノウハウをフィードバックして、1984年にFZ400Rが登場。1986年にはFZR400へと進化を遂げていく。

エンジンを45度前傾させ、混合気をまっすぐ下方に送り込むダウンドラフト吸気やGPマシン譲りのアルミデルタボックスフレームなど、ワークスマシンの名にふさわしい技術が盛り込まれたが、1987年発売の限定車・FZR400Rではトルクの谷を解消する排気でデバイス「EXUP」が登場。後年のスーパースポーツに大きな影響を与える。

今回紹介する1989年のFZR400Rは、デルタボックススイングアームを採用した丸目2眼時代の集大成モデルだったが、過当競争の中で短命に終わった悲運の1台だ。

ヤマハ「FZR400R」回顧録(太田安治)

1984年デビューのFZ400Rが大ヒットしたヤマハは、1986年にアルミデルタボックスフレームに前傾45度のジェネシスエンジンを組み合わせたFZR400を投入。翌年には排気デバイスEXUPやクロスミッション、アルミタンクに一人乗り専用サスペンションなどを装備し、F3レーサーに保安部品を付けただけという構成のFZR400Rを限定販売した。

サーキットでの乗りやすさ、速さは文句なしだったが、クロスミッションのローギアは通常の2速ギアに近い変速比で、ゼロ発進には気を使い、前後サスペンション設定を含めた車体剛性も高く、街乗りでは扱いにくかった。まさに「過ぎたるは〜」で、今思えばレプリカブームの終焉を暗示した一台だが、この時に確立された技術やノウハウは1988、1989年のFZR400Rだけでなく、現在のYZF−R1に至るまでしっかりと受け継がれている。

ヤマハ「FZR400R」注目ポイント

画像: 極太のメインビームを持つアルミデルタボックスフレームはGPマシンのテクノロジー。エンジンは45度前傾の「ジェネシス」ユニット。

極太のメインビームを持つアルミデルタボックスフレームはGPマシンのテクノロジー。エンジンは45度前傾の「ジェネシス」ユニット。

画像: エキパイ集合部のバルブをエンジン回転数に応じて動かすことで開口部面積を変化させ、最適なトルク特性を得るEXUPを標準装備。

エキパイ集合部のバルブをエンジン回転数に応じて動かすことで開口部面積を変化させ、最適なトルク特性を得るEXUPを標準装備。

画像: ブレーキパッドの面圧の均等化を狙った異径対向4ピストンキャリパーを採用。ブレーキディスクはΦ298mmのものをダブルで備える。

ブレーキパッドの面圧の均等化を狙った異径対向4ピストンキャリパーを採用。ブレーキディスクはΦ298mmのものをダブルで備える。

画像: 1989年モデルからはデルタボックススイングアームが採用された。いわゆるテーパー形状のアームで、高剛性と軽量化を両立した。

1989年モデルからはデルタボックススイングアームが採用された。いわゆるテーパー形状のアームで、高剛性と軽量化を両立した。

画像: 排気特性を考慮して前モデルでは楕円形状のステンレスだったサイレンサーは、この型では大径真円のアルミ巻きタイプに変更。

排気特性を考慮して前モデルでは楕円形状のステンレスだったサイレンサーは、この型では大径真円のアルミ巻きタイプに変更。

画像: ヘッドライト下にはFAIのインテークを配置。これはエアボックス内に冷気を取り込むことで吸気温度を下げる効果を果たすもの。

ヘッドライト下にはFAIのインテークを配置。これはエアボックス内に冷気を取り込むことで吸気温度を下げる効果を果たすもの。

画像: テールカウルサイドにはゼッケン風デカールをあしらう。サイドには「EXUP」の文字が誇らしげに配置されている。

テールカウルサイドにはゼッケン風デカールをあしらう。サイドには「EXUP」の文字が誇らしげに配置されている。

ヤマハ「FZR400R」関連の歴代モデル 1984年~1989年

FZ400R(1984)

F3を戦うワークスマシン・FZR400と同時開発。XJ400Zベースのエンジンは59PSを発揮、1987年型ではフルカウル化された。

画像: 当時価格:59万8000円

当時価格:59万8000円


FZR400(1986)

F3チャンピオンを狙ったワークスマシン・YZF 400と同時開発。45度前傾のジェネシスエンジンやアルミデルタボックスフレームを採用。

画像: 当時価格:69万8000円

当時価格:69万8000円


FZR400R(1987)

エキパイの排圧をコントロールしてトルクの谷を解消する「EXUP」を採用した限定モデル。クロスミッションやシングルシートも装備。

画像: 当時価格:89万円

当時価格:89万円


FZR400(1988)

前年の限定モデルからEXUPやピストンクーラーなどを継承して熟成。新気導入ダクトのFAIなど、数々のアイデアも盛り込まれた。

画像: 当時価格:71万9000円

当時価格:71万9000円


FZR400R(1989)

車名に「R」が追加された進化版。スラントノーズを採用して空力特性を向上、新型スイングアーム採用など、足まわりも進化した。

画像: 当時価格:72万9000円(消費税別)

当時価格:72万9000円(消費税別)


FZR400RR(1989)

1年足らずでフルモデルチェンジ。外装を一新、エンジンは35度前傾の新作となり、デルタボックスフレームも新設計された。

画像: 当時価格:73万9000円(消費税別)

当時価格:73万9000円(消費税別)

画像: 【関連動画】歴史車両走行会 FZR400R www.youtube.com

【関連動画】歴史車両走行会 FZR400R

www.youtube.com

ヤマハ「FZR400R」主なスペック

※1989年モデルの諸元

全長×全幅×全高2020×685×1130mm
ホイールベース1400mm
最低地上高135mm
シート高770mm
車両重量165kg(乾燥)
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量399cc
ボア×ストローク56.0×40.5mm
圧縮比11.5
最高出力59PS/12000rpm
最大トルク3.9kgf・m/9500rpm
燃料供給方式キャブレター
燃料タンク容量17L
変速機形式6速リターン
キャスター角24゜
トレール量89mm
タイヤサイズ(前・後)110/70R17・140/60R18
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク

文:オートバイ編集部、太田安治

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