レストア要素も含めつつパッケージとして底上げを図る

「当時新車で買われた車両で、そこからずっと乗られているオーナーさんのものなんです。最初は“ハンドルを上げたい”と入庫して、そこから車体や足まわりに手を入れて、合わせてリフレッシュも行っています。今回はエンジンオーバーホールとともに、かつて当店で以前作ったオリジナル鍛造ピストンキットの最後の1セットを組みました。WPC加工やDLC(ダイヤモンドライクコーティング)など、できる限りの表面処理を行っています。エンジン外観も当時の純正色と同等のガンコートが調色できるようになったので、それで仕上げています」

エムテック・松本さんはこう説明してくれる。この車両、フレームもすみずみまできれいにされ外装もフルペイントと、いわば極上の新車状態で仕上げられている。

画像1: レストア要素も含めつつパッケージとして底上げを図る

「カスタムではあるんですけど、半分くらいはレストアの要素も加えているんですね。それはエンジンまわりを初めとして、今後純正パーツが出てくるかどうか分からないからです。これまでは“スズキは旧車でもパーツが出る”というような共通認識があって、ある意味安心して手を入れることができましたが、それがなくなりそうな勢いです。しかも、まだ出るというパーツは価格がぐっと上がっています。ですから、まだ対応できる今のうちにきちんと仕立てて、長く乗れるようにしたんです」

この車両のような油冷GSX-Rも含むスズキ各車の純正パーツが次々廃番化し、そうでないパーツも価格上昇というのは、ここ2、3年で急速に進んだ。まだパーツが出て買えるうちに、年式の古い車両で手を打っておきたい部分を反映したということだ。

それだけではなく、この車両の各部からは松本さんとエムテックの、車両やパーツに対する理念と言うべきものも見えてくる。例えば当初の目的だったハンドルまわり。セパレートでクランプ上にバーが付く純正ハンドルは上げていくと、車体横側に頭がある純正アッパーブラケットのクランプボルトが干渉する。これを解消するため、アッパーブラケットの割り部分を45度内側に移したブラケットをワンオフした。

画像2: レストア要素も含めつつパッケージとして底上げを図る

メーターもエンジンのスープアップにともない、回転計がレスポンスするように電気式に変更。その上で、メーターユニットのマウントをアッパーブラケットからカウルステーに移設している。ハンドルまわりの重さや慣性を減らし、操作性を高めるためだ。

スイングアームはこの車両ではL型GSX-R750の純正アルミをバフ仕上げしている。松本さんは「補強を加えてもいい部分ですけど、今回は前後のアクスルシャフト、スイングアームピボットシャフトの3点を当店オリジナルのクロモリ製に換えています。そのため、スイングアーム補強を加えると剛性過多になると判断して、純正で行っています」とバランスさせたとのこと。確かに強さは必要だが、それが過ぎては乗りにくさが出てくる。

そうした各部の要素も考えつつ、どんなパッケージにするか。どう動くか、どんな理由でそうなっているかを考えながら、必要に応じたバランスを取ることで自然な感じで車両を成り立たせる。松本さんはショップのスタンスとして「きっちりと加工やパーツ変更がしてあるのに、やった感を強調しないパッケージ」も掲げている。対策を施しつつ、パッケージとしての完成度を重視する。このGSX-R750にはそんなショップのスタンスがきっちり現れているのだ。

▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!

Detailed Description 詳細説明

画像1: Detailed Description 詳細説明

ミラーはマジカルレーシング・レーサーレプリカミラーのタイプ2ヘッドでフロントマスターはブレンボの削り出しボディ。メーターはL型純正のトップブリッジマウントからカウルステーマウントに変更し慣性を減らしている。外装はGSX-R750純正だ。

画像2: Detailed Description 詳細説明

割りの位置を純正の前側から45度内にしたトップブリッジはワンオフで、ハンドルとボルトの干渉をなくしている。エンジン回転計は電気式のスタックST200に変更して、チューニングされたエンジンにレスポンスさせる。ヨシムラ・プログレスメーターやオーリンズ・ステアリングダンパー(車体左側)も追加、そのステダンはセルフステアを妨げないようにあえて抜き気味のセットに追加工している。

画像3: Detailed Description 詳細説明

シートも形状変更とともに表皮も変更し、快適性を高めるとともにコントロール性向上も図っている。シングルシートカウルは純正オプション。

画像4: Detailed Description 詳細説明

ステップはウッドストック製削り出しを使い、シートやハンドルなどとともにライダーが集中できる要素が各所に作られている。

画像5: Detailed Description 詳細説明

エンジンはフルオーバーホールとともにm-techオリジナルφ73mm鍛造ピストン(製造はSOHCエンジニアリング)で815cc化。内部パーツ各部にはWPCやDLC(ダイヤモンドライクコート)など、可能な表面処理を施して内部抵抗も減らし、スープアップとともに長寿化にも配慮。カムチェーンテンショナーはm-tech。外観は当時の純正相当のガンメタを再現してのm-techオリジナルガンコート仕上げを施した。

画像6: Detailed Description 詳細説明

キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ40mm。m-techではTMR-MJNキャブのセッティングノウハウも豊富に持ち、定評もある。

画像7: Detailed Description 詳細説明

フロントフォークはオーリンズ倒立フォークに換装。アクスルシャフトはm-techオリジナルのクロモリに変更されている。フロントブレーキはブレンボ・アキシャルビレットキャリパーを厚みのあるサポートによって力を逃がさないようにしてブレンボディスクと組み合わせる。

画像8: Detailed Description 詳細説明

リヤブレーキはGSX-R1000純正キャリパーを油冷前期モデルのサポートでリジッドマウントできるようにトルクロッドの受けを製作し溶接している。リヤブレーキによってスイングアームを地面に押しつける効果を狙っている。ディスクは、コントロール性を含めたリヤブレーキの重要性を知ってほしいと以前製品化したm-techオリジナルフローティングディスク。フルチタン4-2-1の排気系もm-techオリジナルだ。

画像9: Detailed Description 詳細説明

スイングアームは純正をポリッシュ仕上げ。リヤショックはオーリンズ。リヤアクスルとスイングアームピボットシャフトは今回m-techオリジナルクロモリに変更している。3.50-17/5.50-17サイズのホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-R。どこかが突出した性能を持つのでなく、性能向上がすみずみにまでおよぶようにトータルバランスを考慮するのも松本さんの考えから。

取材協力:m-tech

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!

This article is a sponsored article by
''.