基本を抑えながら時代も取り込んでいく手法を反映
「この車両には今(撮影は2022年前半)、当店でゼファー1100用にお勧めのメニューをパッケージ化しています」とは、しゃぼん玉のマネージャーの滝川さん。そのメニューとは、ホイールを純正の18/17から前後17インチ化すること。これにともなってフロントフォークのオフセットをショート化したステムを使うこと。前後17インチホイール化に適したトレール量を確保し、17インチの現代的な走りが楽しめる。これにエンジン側でオイルクーラーを追加しマフラーを換えることで、軽快さと耐久性(オイル劣化を抑えてエンジンに負荷をかけない)を増す。
聞いてしまえば当たり前かもしれないが、ここまでに手がけた車両の数と実績が、改めてお勧めとして推せる裏付けということだ。この車両ではさらにノーマルスイングアームで6インチホイールを履くという、新しいお勧め(スイングアーム換装を織り込んでいるオーナーなら、そちらでいい)も取り込まれている。
こうしたお勧め要素をパッケージ化した車両は、取り回しも軽く、車両がコンパクトになったように思える。これは今までにゼファー1100に手を入れてきた人なら分かる感覚だろうが、それが洗練されたような手応えもある。先ほどのパッケージにはもうひとつ要素があって、それはハンドルを変更することだ。
「ハンドルバーは当店オリジナルの“タッキーバー”です。もう15年は売っています。元々ZRX1100/1200のカスタムにベストなハンドルをと作ったものですが、17インチホイール化したゼファーにも合います。
ただマニアックなパーツで、ノーマル車両にポンと付けると乗りづらくなる。この車両のようにカスタムを進めて、もっと乗りやすくしたいなとなった時に効いてくるパーツです」
この車両でもホールド性がいい感触で、その効果が現れていると見ていい。角度に関しても車両や好みに合わせて変えてベストが探せるともいう。
ところでこの車両、オーナー・吉原さんは30歳代。今のバイク界では若い。滝川さんは若い人がこうしたカスタム、そしてゼファーに興味を持つことを大事に考えている。かつて空冷Zがそうだったように、車両の現役時代を知らない世代が興味を抱き、手に入れ、手を入れることで楽しみを知り、さらに後世に残る。そんな立ち位置への期待感も、ゼファーにはある。そのために換えるべきところはお勧めパッケージを用意して機能やルックスを分かりやすくする。先にやっておくことで後の費用を抑える配慮も含まれているから、こうしたパッケージは参考にしておきたい。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
Detailed Description 詳細説明
メーターはゼファー1100ノーマルで、ステアリングステムはオフセット[STD:40→]35mmの、しゃぼん玉ゼファー1100用ショートオフセットステムTYPE-3。ハンドルバーは滝川さんが自身のZRX1100カスタムでテストを重ねた定番の“タッキーバー”で、この車両では手前に引いた低めポジションで使う。フロントブレーキのマスターシリンダーはブレンボ・コルサコルタ、クラッチ側のマスターはブレンボRCSを使う。
シートはトゥーズカスタム・スプリームシート。これも定番でしゃぼん玉ゼファーお勧めパッケージの中に入れてもいい部分とのこと。
ステップはナイトロレーシング。鋼管ダブルクレードルのフレームや別体式アルミのピボットプレートはゼファー1100ノーマルだ。
エンジンは1062ccのゼファー1100ノーマルで、オイルクーラーはラウンドタイプを装着。マフラーはしゃぼん玉オリジナルのウエルドクラフト3Dフルチタンマフラーに換装され、これにともなって集合部の干渉を避けるためオイルパンもフラットタイプに変更している。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmを選択。ここも定番と言えば定番で、エンジン内部仕様やマフラー等に合わせていくパートでもある。
フロントフォークはオーリンズRWUでフロントブレーキはブレンボ・アキシャルキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクの組み合わせ。
リヤブレーキはブレンボP2 34キャリパーをアクティブサポートでセットし、上側に来たトルクロッドの中盤部がタイヤ右エッジと干渉しないように逃げ加工している。これはノーマルスイングアームに6インチホイールを履く加工のひとつ。ブレーキディスクは純正のままだ。
スイングアームはゼファー1100のノーマルでZRX1200用オーリンズショックをセット。前後ホイールはO・Zレーシング製アルミ鍛造のGASS RS-Aで[3.00-18/4.50-17→]3.50-17/6.00-17サイズを履く。ドライブチェーンはこの車両では純正に準じた530サイズを使っている。