それが、2ストローク50ccのオートバイ
あの頃の言い方をすれば「ゼロハンスポーツ」だ。
今や絶滅してしまったフルサイズ50ccスポーツのおかげで
僕らは今でもオートバイ好きでいられるのかもしれない。
文:中村浩史/写真:島村栄二/車両協力:森 裕貴さん
スズキ「RG50E」インプレ

みんなこうやってオートバイ好きになっていった
久しぶりに見るRG50Eは、思ったよりずっと立派な車格で、取り回してみると驚くほど軽い。車格でいえば、現行モデルでいうCB125RやGSX-S125よりひと回り小さい、といったところだろうか。
その上、2ストローク車ということで、30~40kgは軽い。初めてオートバイに乗る層には、恐怖感も抱かせない、親しみやすい大きさと重量だろう。
エンジン始動はキックのみ。踏み応えなんかなく、キックアームに足を乗せて下におろせば、「ミミミミミミ」と、あっけなくエンジンが始動する。
クラッチもローギアへのシフトも、何もかも軽い。走り出しも、失速してすぐにエンスト、って心配もなく、きちんと発進トルクがあって、回転を上げ気味にしなくともグッと発進。
4ストロークよりも吹け上がりは軽く、すぐにシフトアップ。それを繰り返していくと、アッという間に50~60km/hに達してしまう。
ハンドリングはあくまでも軽く、ヒラヒラ。それでも前後17インチのフルサイズの車体は、直進安定性もきちんと出ている。スピードを出さなくとも、ロングランが快適そうだ。
僕も含め、今もう50歳を超えている「あの頃の少年たち」は、こうやってオートバイの運転を覚え、楽しさ、苦しさを知って、大好きになっていく。ライダー人口を増やすために、また2ストローク50ccがあったらいいのに!

オーナー森さんのRG50Eは、ANDFが装備された7.2PS仕様の1981年式最終型50E。一度シリンダーが焼き付いてオーバーサイズピストンを組み、約55ccとなって黄色ナンバー登録。結果的に50ccの30km/h制限をスルーできる。
スズキ「RG50E」各部装備・ディテール解説

デビュー当時は6.3PSだったパワーリードバルブ式空冷2スト単気筒は、ライバル出現に合わせてか、最終型では7.2PSにパワーアップ。この0.9PSが重要だったのだ。

1980年型からアルミシリンダーとなり、合わせてチャンバー風マフラーとして7.2PS仕様にパワーアップ。1980年型以降の後期モデルは前後18インチホイールを採用。

最終モデルは、当時のスズキ車の豪華装備である、フォークの縮みすぎを抑えるANDF(アンチノーズダイブフォーク)を標準装備。星形キャストホイールともども、50ccには贅沢な装備だった。

当時はタコメーター付きがゼロハンスポーツの代名詞だった。ちなみにRG50Tというバリエーションモデルもあり、そちらはスポークホイールのタコメーターなし。

フューエルタンクは8.5L容量。タンク形状は1980年モデルからスクエアなRG250に似た形となった。撮影車両は1981年モデル、星形キャストホイールを装着したRG50E。

もちろん一人乗りオンリーだけれど、前後に余裕があるダブルシート。ツーリングの時には、リアシートからテールカウルにかけて、荷物をくくり付けるのだ。
スズキ「RG50E」主なスペック・価格
全長×全幅×全高 | 1930×715×990mm |
ホイールベース | 1205mm |
乾燥重量 | 73kg |
エンジン形式 | 空冷2スト単気筒ピストンバルブ、リードバルブ併用 |
総排気量 | 49cc |
ボア×ストローク | 41×37.8mm |
最高出力 | 7.2PS/9000rpm |
最大トルク | 0.58kgf-m/8000rpm |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 2.50-18-4PR・2.50-18-4PR |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・ドラム |
発売当時価格 | 13万9000円 |
※諸元は1980年型 |
文:中村浩史/写真:島村栄二/車両協力:森 裕貴さん