2022年10月をもって生産終了となることが発表されたホンダ「CB400スーパーフォア」と「CB400スーパーボルドール」。じっくり乗れるのはもしかしたらこれが最後になるかもしれない、そう思いながら10日間、バイク通勤を中心に普段使いしてみた。
文・写真:西野鉄兵
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ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

画像: Honda CB400 SUPER FOUR 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:755mm 車両重量:201kg 税込価格:88万4400円~92万8400円

Honda CB400 SUPER FOUR

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:755mm
車両重量:201kg

税込価格:88万4400円~92万8400円

400cc・4気筒のCBが持つ、ときめき

イグニッションキーを挿し込み、回すと、アナログ2眼メーターの針が一度振り切れ再び定位置に戻ってくる。ありふれたスタートアップの動きだ。セルを回すと一発で4気筒エンジンが元気な声をあげる。

スロットルを軽くひねったつもりだが、タコメーターの針はビュンと回り、思いのほか大きな排気音を上げた。一瞬にして回転数が高まるこの感覚は、4気筒ならでは。約2年ぶりの乗車だ。

画像1: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

CB400スーパーフォアは、1992年4月に初代モデルが発売された。ちなみにスーパーファミコンは1990年に発売、超サイヤ人は1991年に初登場。90年代前半当時、小学生だった私は、CB400SFの存在などまったく知らず、スーパーファミコンの名作ソフト「ドラゴンボールZ 超武闘伝2」で上X下Bから始まる隠しコマンドを何回押せるかに夢中だった。カカ、カカ、カカ、カカ、カカロットォ。

はじめてCB400SFの存在を知ったのは2000年代前半、高校生の頃で、すでにCB400SFは、中免バイクの中心的存在だった。高校卒業前に初めて自分で運転した400ccも教習車のCB400SFだ。

それから周りの友人たちも続々とバイクに乗り出す。CB400SFを選ぶ仲間もいた。当時は、「スーフォアにしたんだ、いいね」という感じで、定番かつ王道で間違いない選択ではあるが、取り立てて特別なモデルではなかった。400cc4気筒モデルの選択肢がさまざまあったからだ。

しかしCB400SFのライバルたちは次第に新車市場から消えていった。唯一無二の存在となると、特別感は増す。ここ数年はXJR400ゼファーZRXGSX400インパルスなど、400cc・4気筒モデルの中古車の人気は高まっている。

画像2: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

街中を走っていると、3速・40km/h・4000回転という、本来の持ち味の百分の一も発揮できない時間が続く。それでもCB400SFの完成度の高さを随所に感じる。なめらかで心地いいエンジンフィール、乗り手を高ぶらせる排気音、扱いやすいハンドリング。

シートは低く、足つきはすこぶるいい。身長175cmで脚が太め・短めの私が両足かかとまで体重を乗せて接地できる。跨ったまま前後に軽々と押し引きもでき、立ちごけの心配はない。日常的に乗るバイクとして、非常にありがたい性能だと思う。

画像3: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

しかしCB400SFは、ただの扱いやすい気軽なバイクでは決してない。スロットル操作がいい加減だと、ブォーーンっと一気に回転数が上がり肝を冷やす。フロントブレーキはガツッと利くタイプで、レバー操作を油断すると前につんのめる。素性はまぎれもなくホンダCBの正統継承者でスポーツマシンなのだ。

CB400SFのインプレ記事を見ていると「優等生」という言葉をよく目にする。自分でも書いたことがある気がする。いまあらためて思うのは、並みの優等生ではないということだ。

圧倒的ポテンシャルで成績は余裕のオール5、野球部主将、生徒会長を務め、誰からも慕われ、不良たちからも「あいつは特別」と認められるような、地元の誇り。「そういえばあいつどうなった?」「なんかプロ野球断って、東大出て弁護士になったらしいよ」「あいつ真面目に見えてゲーセンで格ゲー無双してたこともあるんだぜ」……そんな感じかな、と勝手に思う。

画像4: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

通勤生活をはじめて約1週間──。CB400SFの一挙手一投足に見とれている自分がいた。始動時のメーターのムーブメントもありふれたものだと思っていたが、針の動きは計算されつくした絶妙なものに感じる。随所に高級感がある。

タンクの美しさ、テールカウルの造形や角度、テールランプの2眼丸ライト、細身のマフラー、エンジン周りの隙間の少なさ……外観は全体を見ても細部を見ても突き詰められている。

92年の初代モデルは定価58万9000円だったが、現行車は税込88万4400円~。この象徴的なカラー「キャンディークロモスフィアレッド」は92万8400円だ。

400cc以下のバイクとしては、かなり高価だ。だが大型バイクの価格は100~150万円があたりまえとなっているいま、むしろ安すぎるのではないだろうか、と感じてしまう。

製造国は変わらずに「日本」のまま貫いた、日本人のための一台だ。いまCBX400FドリームCB400Fourの中古車価格はとんでもないことなっている。いつの日かCB400SFもとてつもないプレミアが付くバイクとなる気がしてならない。

広報車を長めに借りたときは、返すのがさみしくなる。今回はそのなかでも特別だった。ホンダ本社への返却前に首都高に乗り、6300回転以上で味わえる「HYPER VTEC Revo」の世界を堪能した。

画像5: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

総括して一言でまとめると、「ときめき」だ。

イグニッションをオンにした際、走り出しの回転数が高まった瞬間、誰よりも早くスタートダッシュを切れたとき、その後の圧倒的な加速力……バイクに乗らない日には決して味わえない、ときめきを感じる。

CB400SFに乗るといつも思い出すことがある。学生時代、愛車のSR400で北海道を旅していた際、途中で不調となり、バイクショップで代車を出してもらった。それが「CB400SFバージョンR」だった。

画像: ▲2007年夏、道道106号線 サロベツ原野。利尻富士がよく見える日だった。

▲2007年夏、道道106号線 サロベツ原野。利尻富士がよく見える日だった。

えらく速くて、なんて快適なんだと思った。バイクショップの「北海道滞在中はどうぞ好きなだけ使ってください」という言葉に甘え、札幌から宗谷岬→知床→釧路→襟裳岬→富良野・美瑛など、おいしいエリアをこのバイクで走った。

SRは大好きだったし愛車で走りたいという思いはありつつも、引き取りを可能な限り引き延ばしてしまった。感覚として2~3倍速で旅を進められるCBは、無敵のロングツアラーだった。

画像6: ホンダ「CB400SF」通勤インプレ

スロットルをガバッと開けたとき、脳みそが置き去りになるような、痛快なときめきは、今も昔も、これからも変わらない。

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