文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年2月9日に公開されたものを転載しています。
英国政府が資金提供する、官民共同の電動バイクプロジェクト!!
3年前の春にスタートした電動バイクの「トライアンフTE-1」開発計画は、英国政府のBEIS(ビジネス、エネルギーおよび産業戦略省)とOLEV(ロー・エミッション・ビークル局)が資金を提供する官民共同プロジェクトです。
このプロジェクトには英国を代表する2輪メーカーであるトライアンフのほかに、4輪フォーミュラeにバッテリーを供給するWAE=ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング、電気モーターとSiC(炭化ケイ素)インバーターの開発を担当するインテグラル・パワートレイン社、そしてウォーリック大学のWMG=ウォーリック・マニュファクチャリング・グループ(学界と商業の協力機関)が参加しています。
その開発のフェイズ3が完了したことが2月8日に明らかにされましたが、それはつまり、実際に走行可能なプロトタイプが完成したことを意味します。プロジェクトに参画する4つの企業の、それぞれの役割は以下のとおりです。
トライアンフ
フレーム、リアサブフレーム、コクピット、パネル、ホイールを含む車体全般部品。トランスミッションとカーボンベルトドライブを含む減速機構。電装系。オーリンズ倒立型カートリッジフォークと試作リアショックユニットを含むサスペンション。ブレンボM50モノブロックキャリパーやトライアンフオートバイ制御ソフトウェアを含む最終的な車体構築。
WAE=ウィリアムズアドバンストエンジニアリング
車両制御ユニット。DC-DCコンバータ。統合冷却系。充電ポート。最適な重心位置のための専用セルパッケージ。スタイリッシュなカーボンカバーを組み込んだ、試作WAEバッテリーパックの最終仕様策定。
インテグラル・パワートレイン
測定可能な統合インバーターと、炭化ケイ素スイッチング技術および統合冷却を備えた、複合モーターを含む最終試作パワートレイン。
WMG=ウォーリック・マニュファクチャリング・グループ
本番テスト前の最終的なシミュレーション。そのすべての結果から、TE-1プロジェクトが意図した性能と、耐久性の成果を実現する方向にあることを確認。
続くフェイズ4は、車両のロードテストとトラックテスト・・・となります
TE-1のバッテリーを担当するWAEによると、バッテリーのピーク電力は170kW、定格電力は90kWで容量は15kWhとのこと。そして、このバッテリーの電力で駆動されるモーターの最高出力は130kW(定格出力80kW)になります。なおシステムは360Vの高電圧で、20分(0〜80%)未満の急速充電も可能になっています。
スティーブ・サージェント(トライアンフ社チーフプロダクトオフィサー)
「第3段階(フェイズ3)では、トライアンフ初の電動試作モーターサイクルの、物理的な基盤を構築することに重点を置きました。トライアンフとTE-1パートナーの努力の結果、明確なトライアンフのDNAを持つ、視覚的に非常に魅力的なだけでなく、将来の可能性を秘めた爽快でスリリングな、まったく新しい電動パワートレインを搭載したデモバイクを作ることができ、嬉しく思っています。私はこのデモカーの開発をフェイズ4まで続け、私たちの知識と能力を駆使して、パートナーの最先端技術をすべて結集し、トライアンフの将来の電動化戦略の指針となる最終結果を出すことを楽しみにしています。私たちの経験から、プロジェクトのこの段階ではドライバビリティ、ハンドリング、キャラクターの開発において、実際にバイクに乗ることに代わるものはありません。私たちは新しくて刺激的でありながら、最終的には直感的でなじみやすいライディングエクスペリエンスを提供することに、焦点を当てた野心的な目標を立てています。完成したプロトタイプに、初めて乗る機会が来るのがとても楽しみです」
完成したTE-1プロトタイプは、トライアンフのテストライダーによりロードテストとトラックテストに駆り出され、スロットル操作感、動力性能面でのパワートレイン評価、航続距離やバッテリー消費の評価、ライディングモード開発、ソフトウェア機能検証、ブレーキおよび回生機能、アンチウィリー評価、トラクションコントロール評価、発生する熱の最適化・・・などなどの項目が検証されることになります。
これらのテストは6ヶ月間行われる予定で、予定どおり完了すれば今年の夏に走行テストは完了することになります。このフェイズ4の走行テストのフィードバックを、スムーズに量産試作車に注入することができれば・・・今年の秋のモーターサイクルショーのシーズンには、TE-1の量産試作車の姿をショーのステージ上で観察することができるかもしれません! 期待しましょう!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)