文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年12月1日に公開されたものを転載しています。
IEC(内燃機関)車からの移行をうながすハイブリッド!?
NIUは都市交通の諸問題の解決策として、電動スクーターをメインに製造販売する中国のスタートアップです。Niu製品は交換可能で、軽量なリチウムイオンバッテリーを搭載。またSIMカードを装備させることで24時間365日NIUアプリへの接続を可能にしているのも特徴で、ソフトウェアアップデートや防犯対策をIT技術で行うという先進性が評価されています。
中国国内で2,300店以上のストアを開き、欧州をメインに世界45以上の国で展開しているNiuは、さらなる発展を担うことになるニューモデルをEICMA2021に登場させました。それらのうち5機種は欧州市場で2022年度の発売が予告されていますが、唯一2023年発売・・・とされているのが、コンセプトモデルのハイブリッドスクーター「YQi」です。
全長1,995mm、全幅775mm、全高1,210mm、シート高775mmの車体寸法で、2人乗り(荷物含む最大荷重300kg)のYQiは、140kg(8.5kgのバッテリー含む)の車体を110km/hまで加速させることが可能です。48V/720Wh/13Ahで駆動される自社製電動モーターと150ccのICEのハイブリッドシステムは、最高出力で14,500W、定格出力で12,000Wを発揮。そして一番の「ウリ」となるのは、現代の電動スクーターでは達成することが難しい、250km以上という航続距離の長さでしょう。
胡依林(NIU共同創設者兼チーフプロダクトオフィサー)
「これは、ガソリンバイクから電動バイクへの "ジャンプ"です。私たちは熱狂的なガソリンバイクのファンに、電動バイクが"未来"であることを確信させることができると信じています。YQiはそのお手伝いができるバイクだと思っています」
明らかにされているデータを見る限り、YQiがターゲットにしているのは欧州で人気の高い4ストローク250ccクラスのスクーターになります。4輪のハイブリッド車は燃費の良さが主にユーザーに評価されていますが、このYQiの燃費性能がICE車のそれを大きく上回るようでしたら、YQiがヒット作になることができる可能性もありますね。
現在世界の市場で販売されているハイブリッドスクーターの多くは125cc以下のクラスですが、YQiが2023年に欧州市場デビューした後、いわゆる大型スクーターのジャンルでどのように評価されるのかとても興味深いです。
電動スクーターだけでなく、電動モーターサイクルも登場!
2015年の市場デビュー以来、NIUの製品ラインアップは電動スクーターが主でしたが、EICMA2021には電動モーターサイクルが登場しました!
RQiスポーツは車体中央に最高出力7.5kW、定格出力5kWのモーターと、72V/36Ahのバッテリーを2つ搭載しており、最高速100km/h、航続距離110〜120kmという性能を発揮します。急速充電対応のバッテリーは取り外し可能で、家庭用コンセントから充電することが可能。フル充電に必要な時間は、1つの場合は4時間、2つの場合は7時間となります。
車体寸法は全長2,080mm、全幅835mm、全高1,084mm、シート高825mm。タイヤサイズは前110/70-R17、後140/70-R17。車重は186kg(25kgx2のバッテリー含む)と少々重めですが、用意されたふたつの走行モード・・・低速と高速それぞれで「ローンチ・モード」が使え、強烈なトルクで加速する快感を味わえるようになっているそうです。
人気のスクーターモデルは、2022年型へ進化
2016年にNIUのラインアップに加わった「MQi」シリーズの最新作、「MQi GT EVO」は新型の5kWハブモーターを採用することで、NIU歴代最強のスクーターになりました。急速充電対応の取り外し式バッテリー2つ(72V/26Ah x2)を搭載し、0〜60km/h加速6秒未満、最高速度100km/hという性能を発揮します。
またスマートフォン連携のアップデートも充実しており、キーレスイグニッション、電気式盗難予防ステアリングロック、そしてキーを共有しなくても、スマートフォンアプリを使うことで家族や友人と1台のスクーターを共有できるシステム!! など、様々な新機能が盛り込まれています。
また、2015年から続くMIUのスクーターモデルである「NQi」シリーズ最新作「NQi GTS」も、2022年モデルに更新され、新開発の電動モーターを採用することで最高速を80km/hまで向上させています。出力をアップしながらも、航続距離70kmは省電力技術で旧型モデルよりキープ。欧州市場発売予定日は上級モデルの「MQi GT EVO」と同じ2022年3月1日で、価格は1,000ユーロ安い3,999ユーロ≒51万3,870円です。
流行りのキックボード型Eスクーターや、Eバイクも投入!
従来ラインアップのスクーター群に加え、新たにモーターサイクルのRQiスポーツを登場させたNIUですが、そのほかにもキックボード型Eスクーター「KQi2」、そしてEバイクの「BQi」も、来年から販売するニューモデルとして用意しています。
今後、小型モビリティの"どの分野"が一番成長するか・・・まだハッキリとした答えが出ていない以上、「集中と選択」は愚か者のやり方と言えます。その点で、全方向にラインアップを拡充するMIUは、企業として正しい姿勢と言えるのではないでしょうか?
NIUはすでに、折りたたみ式でコンパクトに収納できるキックボード型Eスクーター「KQi3」シリーズを、2021年より欧州と米国で販売されています。そして2022年からは、欧州市場向けに最新の「KQi2」シリーズを投入する予定ですが、KQi3の599ユーロよりも100ユーロ安い、499ユーロ≒6万4,034円という価格が大きな魅力です。
そして世界市場で成長著しいペデレック(電動アシスト自転車)などのEバイク市場に向け、NIUは欧州市場向けに2022年7月1日発売予定の「BQi」を用意しました。価格は1,500ユーロ≒19万2,600円以下・・・という競争力のある価格設定になる予定です。
2021年から電動スクーター以外のジャンルにも進出したNIUが、今後飛躍することができるのかどうか・・・注目しましょう。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)