GPZ-Rニンジャは、登場当時は想像もしていなかった後継機種のパーツコンバート等でスープアップが可能になった。その後も多くのチューニング手法が現れてきたが、修理に至る前に劣化を補いリフレッシュするオーバーホールの技法は特に進んだ。TGナカガワのR-SHOTもそのひとつだ。

R-SHOTとO/Hでチューンドエンジンのライフを伸ばす

トレーディングガレージナカガワ(以下TGN)が行うGPZ-R系エンジンメニューは、既に20年以上の歴史を積み上げている。

これまでを振り返れば、燃焼室をNC加工するマシニングヘッドや、回転軸=ジャーナルを精密研磨して回転をスムーズにするラッピング加工が加わった。その前提として廃番品には代替品を、弱点には対策品を用意し、各気筒の均質化や測定/加工ほか、エンジンの基本をきちんと押さえてきた。

クランクケースエッジなどが不用意に内部に回ることで起こるトラブルも防ぐ配慮もし、新旧の組み合わせで進化した。パワーや良好な特性とともに、チューニングエンジンとしては異例と言えるような耐久性も得てきたのだ。

画像: ▲TGN代表の中川和彦さん。ここで紹介したのはエンジンメニューのほんの少しだが、時を追うごとに新しく効果的なものが増えている。O/Hごとに施してみたい。

▲TGN代表の中川和彦さん。ここで紹介したのはエンジンメニューのほんの少しだが、時を追うごとに新しく効果的なものが増えている。O/Hごとに施してみたい。

TGNの代表、中川さんによれば「よほどハードな乗り方をしなければ4〜5万kmは保つ耐久性があり、既に5万kmごとで3回のオーバーホールを受けた個体もあります。壊れる前に手を入れた方が長く保ちますし、費用もかからない。次に何をするかも分かります。その上で、補機類含めて新しい手法を加えることもできるんです」と。

その最新手法は、約2年前に確立した「R-SHOT」だ。4輪アフターパーツメーカーとの協業で成立した表面処理。独自の樹脂メディアとショット方法を吟味した上で対象物表面に施し、オイル保持性を高め、応力分散で表面硬度を増す。新品でも、寸法等使用可能な中古品にも処理できる特徴もあり、ピストンやメタル等にはまず施したい処理となっている。

画像: R-SHOTとO/Hでチューンドエンジンのライフを伸ばす

そのR-SHOTが、新たに外観パーツに使えるようになった。以降で紹介のボルトやホイールカラーはその処理前後の状態で、めっき上に載った錆や汚れは落ち、寸法は維持できて再使用ができる。「純正のカバーボルト等にも使えます。例えば8本必要なのに新品が5本しかない場合でも、今まで使っていたもので変形がなければR-SHOT処理して使えるんです。ネジ1本でも処理できますし、媒体に防錆剤を入れてショットしてますので耐錆性も高めてます。カバーそのものにも処理できますし、応用範囲が広がりました。

またR-SHOT処理後は、対象物を超音波+高圧洗浄してメディアを完全に排除しています。本来しなくても大丈夫なのですが、万一メディア(ショット粒)が残留してエンジンが破損するようなことは避けないといけないので、2重3重にセキュリティをかける意味でです」(中川さん)

これにより各部の寿命は単純に考えてもより長くなるし、内部パーツへの施工はスムーズ化によっても長く出来ることが分かる。R-SHOTの適用範囲が広がったことで、ニンジャを初めとした旧車のエンジンはこれからさらに、安心して使えることになるのだ。

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TGナカガワのR-SHOTとは

画像1: TGナカガワのR-SHOTとは
画像2: TGナカガワのR-SHOTとは
画像3: TGナカガワのR-SHOTとは

TGN#1050メニュー(908→1050㏄化して約130ps、パワーや耐久性などのバランスが取れてお勧め)用に使われたワイセコφ78mm鍛造ピストンにR-SHOTを施したピストン。中古品(中段写真=寸法計測して問題ない物)を加工しているのに新品のように仕上がる。スカート部の横筋=条痕にも微細なディンプルが追加され、表面硬度を増すとともにオイル保持力を大きく高めている。メタル(右が処理済み)にも効果大。ニンジャ系ではピストン1個に付き4000円前後で施工する。新品の場合はトップ/ランド/リング溝には施さない。

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エンジン内だけでなくボルトやカバー類にも適用拡大のR-SHOT

画像1: エンジン内だけでなくボルトやカバー類にも適用拡大のR-SHOT
画像2: エンジン内だけでなくボルトやカバー類にも適用拡大のR-SHOT

R-SHOTを新たにボルトやホイールカラーに施した例。ともに左が処理前で右がR-SHOT処理後。上のエンジンカバーボルトはめっきに載ってしまった汚れやさびが消え、めっき面がきれいに再生されている(下地から浮いてきた錆は除く)。下のホイールカラーは白錆が落ち、新品同様になる。こうした部分へのR-SHOTでは後処理用防錆処理もショット時に同時に施せる。また、めっき部のピンホールにも処理剤が入るため、ここからの劣化もなくなる。

クランクジャーナルとカムシャフトにはラッピング加工

画像: クランクジャーナルとカムシャフトにはラッピング加工

クランクジャーナル(軸受け)とカムジャーナルは1/1000mm=1μ単位での砥石研磨によって傷を消した上でロスを低減し、回転スムーズ化→長寿化する。カム山のエッジなどはバリ取り加工。このラッピングとロッカーアームのR-SHOTでカムロブとロッカーアームの当たりもスムーズになり、摩耗も抑えられる。

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対策パーツの併用でさらに増す楽しみ

ノーマル115psを130、150、200psに引き上げる一方で耐久性を持たせ、さらに弱点対策パーツもTGNでは提供。これもGPZ900R生産時にはなかったもので、今ならではだ。

画像1: 対策パーツの併用でさらに増す楽しみ

点火コイルを現代バイクのようにダイレクトイグニッション化するDIS。プラグキャップをコイルと一体化してフレームに付く通常コイルが廃せる(TGN製点火ユニットのHIRは必要)。

画像2: 対策パーツの併用でさらに増す楽しみ

オルタネーターチェーンの張りを純正よりも適正に保つことで、エンジン始動時の“バチン!”という異音やチェーン切れを予防する改良型の「レーシングマニュアルテンショナー」。金型から見直して同チェーンにかかる加減速時の余分な抵抗を減らし、寿命を延ばしてくれる。

画像3: 対策パーツの併用でさらに増す楽しみ

構造上オイルが回りにくい吸気側カムとロッカーアーム接触面へのオイル供給を確実化するため、ヘッドカバーから当該部に直接オイルを噴くノズルをヘッドカバーに装備したDOS-R(ダイレクトオイルシステム-R)を用意。

画像4: 対策パーツの併用でさらに増す楽しみ

A1~11で2個あり、A12~では後ろ側1個の点火時期ピックアップコイル。2個では点火ずれを招くこと、またハーネスの変更に対応するため「GPZ900R用HIR改 2-1コンバートkit」を用意し点火を確実化する。

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

※本企画はHeritage&Legends 2020年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

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