文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年11月7日に公開されたものを転載しています。
あの独ボッシュの子会社がGogoroと組んで、2016年から「ある」サービスを開始しましたが・・・
先日、中国・杭州でGogoroのバッテリーシェアリングサービス、Gogoroネットワークを採用したHuan Huan(换换)がスタートしたことが、世界的な話題となりましたが、実はGogoroの台湾以外の都市でのグローバル展開は、2016年からすでに開始されていました。
ただしそれは、バッテリーステーション網の整備・・・ではなく、Gogoro製の電動スクーターによるシェアリングサービスでした。
クープはドイツの大手エレクトリックメーカーであるボッシュの子会社で、日本でもおなじみのカーシェアリングの電動スクーター版を彼の地に展開しました。当初はベルリンのみでしたが、その後フランス・パリ、そしてスペイン・マドリッドにもサービスレンジを拡大しています。
料金はベルリンの場合、30分で3ユーロ≒390円で10分ごとに1ユーロ追加料金を払います。また、1日20ユーロ≒2,618円という設定もありました。この料金制度や規約は国によって違いはありましたが、基本的に使った分だけ支払う、というシステムは共通です。
クープが採用するGogoroのスマートスクーターは、Gogoroプラットフォーム採用電気スクーターでお馴染みの交換式バッテリーを2つ搭載。台湾などで展開中のGogoroネットワークは、ユーザー自身がバッテリーをステーションで交換する仕組みですが、クープはユーザーがバッテリー交換を行う必要がないのが特徴で、スマートフォンを使ってクープの車両を探し、予約し、認証して乗り出し・・・そして乗り捨てる、というオペレーションになっていました。
捨てる神あれば拾う神あり? クープの車両はティアーモビリティが継承することに
しかし、2019年暮れにクープは、Eスクーターシェアリング業界の競争の激化と、事業として採算が合わないことを理由に電動スクーターのシェアリングサービスを終了させることになりました。そしてこの事業は、同じドイツ企業であるティアーモビリティが2020年2月26日に車両ごと買収し、同年5月からベルリンでのサービスを再開させています。なお欧州では電動スクーターのシェアリングサービスが盛んで、とりわけキックボード型Eスクーターを扱う業者が多いです。
ローレンス・ロイシュナー(ティアーモビリティCEO兼共同設立者)
「当社が提供するサービスにEモペッド(※電動スクーター)を加えてマルチモーダル化することは、需要に応じてさまざまな交通手段を提供するエンド・ツー・エンドのモビリティソリューションを提供するプラットフォームを構築する上で、非常に重要なステップです。現在の状況では、Eモペッドは、例えばEスクーター(※キックボード型電動スクーター)よりも、カスタマーの移動距離を伸ばすことができます」
ティアーモビリティとしては、ライバルの多いキックボード型Eスクーターだけでなく、より長距離移動ができ、2輪車ユーザーにも馴染み深いカタチのモペッド/スクーター型の車両もシェアリングサービスのラインアップに加えることで、差別化を図ろうという考えなのでしょう。
またユニークな試みとして、多くの人がCOVID-19パンデミックで公共交通機関の利用を躊躇する情勢を鑑み、ドイツの公共交通機関の定期券所有者が、定期券の写真をティアーモビリティのウェブサイトにアップロードすれば、40ユーロ≒5,237円分のEスクーターとEモペッドの無料アンロックを40回を受け取ることができる、「コミュート ウィズ ティアー」というキャンペーンも、2020年5月のサービス開始時に発表されました。
この40回のアンロックは週5日の通勤という想定で、ティアーモビリティのシェアリングサービスのEスクーターやEモペッドを使っての1カ月間の通勤を行える・・・というサービスでした。自社サービスのプロモーションの一環ではありますが、感染拡大防止という公共の利益にプラスに働くキャンペーンを民間企業が行うというのは、非常に素晴らしいことだと思います。
ともあれ、小型電動モビリティのシェアリングサービスが盛んな欧州ですが、将来的には欧州にも2輪EV用バッテリー交換ステーション整備というトレンドが波及する可能性はあります。そのとき、欧州市場を制覇することになるのは、どの勢力なのか・・・・要注目ですね!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)