文:小松信夫
アンダーボーンバイクの進化が止まらない!
タイやマレーシアをはじめとする東南アジア諸国では、各メーカーが長年アンダーボーンスタイルの100〜150ccクラスの販売で、激しく開発競争をして鎬を削ってるそうですな。
![画像: ホンダ スープラ150GTR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/77e1a25d83ad0fac03cf511aedbd4b9506d211b9.jpg)
ホンダ スープラ150GTR
以前、この連載でもホンダがタイなどで販売しているアンダーボーンスポーツ「スープラ150GTR」を紹介しましたっけ。けど、アレはエンジンがCB150Rストリートファイアと同じ149cc水冷シングルで最高出力16.3PS、ミッションは6速。フレームもアンダーボーンの位置が高くサイズも太くなって、前後ディスクブレーキでリアもモノサス…タンクがないだけで他は普通のスポーツバイクみたい。
もはや遠い祖先であるスーパーカブの面影はどこにもない、独自の進化を遂げたモンスターですな。(あ、80〜90年代の日本のレーサーレプリカブーム全盛期も、きっと海外から同じように思われてたんだろうな)で、こういうメカメカしいのが今あの辺りの国々では人気だそうですよ。
![画像: ヤマハ Y15ZR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/dfc53b3b6c979b87bb5019481a03189400644423_xlarge.jpg)
ヤマハ Y15ZR
そして「スープラ150GTR」に並ぶ人気モデルが、ヤマハの「Y15ZR」なのです。これも日本の感覚からすると、スタイルも中身も相当に過激なアンダーボーンスポーツなんですが、最新のスタイル、メカニズムをいち早く取り入れた「スープラ150GTR」を見た後だと、なんだか普通に見えてきませんか? 多分感覚が麻痺してるだけなんだけど、慣れって恐ろしい。
![画像: YAMAHA Y16ZR 総排気量:155cc エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒 シート高:795mm 車両重量:119kg](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/ae955b59988a3b5b4239923f1f67d5adba9ae3e2_xlarge.jpg)
YAMAHA Y16ZR
総排気量:155cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
シート高:795mm
車両重量:119kg
という訳で、打倒「スープラ150GTR」を目指して開発され、ヤマハが2021年モデルから投入してきた最新のアンダーボーンスポーツが、この「Y16ZR」というわけでございます。
![画像1: ヤマハ Y16ZR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/20c477fbce35a854941cc76a19d8e2ffc901ef23_xlarge.jpg)
ヤマハ Y16ZR
スタイリングは全面刷新。ただし「Y15ZR」のフロントマスクのイメージも残るが、より強烈な存在感というしかない造形になりました。最新のスーパースポーツのエアマネージメントを考えたカウルっぽい、複雑な形状のディテールを織り込んだ外装を見れば、とてもアンダーボーンとは思えないモダンな仕上がり。
![画像2: ヤマハ Y16ZR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/ddd04481bcc45a54e9a12d2ebabefa63f6f204e9_xlarge.jpg)
ヤマハ Y16ZR
カラーリングもグラフィックも、そんな最新スタイルに合わせて考えられた、意外に洒落たデザインだよ。ただし、全体にかなりアクが強いのは確かだね。
![画像1: アンダーボーンバイクの進化が止まらない!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/4bae5dcfabe2bb4a951d91923e604de6acb497b2_xlarge.jpg)
スタイリング以上に力が入ってるのが実はメカニズム、特にエンジン! もちろん水冷で単気筒なんだけど、SOHC4バルブヘッドに回転数に応じてローカム、ハイカムが切り替わるVVA機構まで搭載したもので、最高出力は17.7PS。当然ミッションは6速、アシスト&スリッパークラッチまで装備!
要するに、ロードスポーツの「XSR155」などと同じものですよ。スペックで「スープラ150GTR」を超えるための大人気ない選択…。
![画像2: アンダーボーンバイクの進化が止まらない!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/3abc59d5d6e1f754f5253139208ce43dd2d2ac05_xlarge.jpg)
このエンジンを搭載するスチール製のフレームも「Y15ZR」とは別物、どこがアンダーボーン構造やねん! というえげつない形状で、ネック周りの造りとか部材もごっつくて見るからに剛性高そう。スイングアームも今時のスーパースポーツみたいに長いんだよ。
![画像3: アンダーボーンバイクの進化が止まらない!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/7e411d4fd1c4843f1ed1e671b9b5e6e4d75594b3_xlarge.jpg)
ボディのサイズは両車ほとんど同じだけど、フレームもエンジンも変わった「Y16ZR」の重量は2kg増に抑えられている。フロントのブレーキローター径は「Y15ZR」と同じφ245mm、でもシングルピストンだったキャリパーを「Y16ZR」ではダブルピストンにグレードアップ。で、「スープラ150GTR」のキャリパーはシングルなんですよこれが。
![画像3: ヤマハ Y16ZR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/d2ba9196604778acd03bf28470abd8de1814ef12_xlarge.jpg)
ヤマハ Y16ZR
このように、徹底して「スープラ150GTR」を上回るように造られた「Y16ZR」なんですがぁ。ちょっとだけ不可思議なのが、155ccという排気量設定。東南アジアでは各地でアンダーボーンモデルによるレースが盛んなのはご存知の通りで、中でもアジアロードレース選手権の「UB150」クラスが最高峰。まさにそこで「スープラ150GTR」とか「Y15ZR」がバチバチに戦ってきたわけです。
![画像4: ヤマハ Y16ZR](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/7ec16654ba39d27e8b441aa0cd7c6c6b6da1453e_xlarge.jpg)
ヤマハ Y16ZR
その「UB150」のレギュレーション(公式ホームページで確認できる最新の2019年版)を確認すると、排気量は135〜150ccとなってるんだよね。155ccの「Y16ZR」、レースで「スープラ150GTR」とは戦えないってことだ。昔の日本のSP250クラスみたいに、「UB150」の成績は大きく市販車の販売にも影響するっていうから、無視するとは思えないんだけど…それとも「Y16ZR」のデビューに合わせて、最新のレギュレーションでは排気量の規定が変わってるとか?
![画像: ヤマハ MX KING150](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16782548/rc/2021/09/24/4c15a3e2f8e6e013078d43a5089afd624f7d756b_xlarge.jpg)
ヤマハ MX KING150
もう1車種「UB150」で走ってるヤマハ車、インドなどで売ってるアンダーボーンスポーツ「MX KING150」の方に絞ったのか? とも思ったけど、外装がちょっと違う「Y15ZR」のバッジ違いみたいなもんだしね「MX KING150」。2021年はアジア選手権そのものが現時点で開催延期になってるので、その辺がいまいちよく分からないのでした。
文:小松信夫
ヤマハ「Y16ZR」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1975×665×1085mm |
ホイールベース | 1290mm |
シート高 | 795mm |
車両重量 | 119kg |
エンジン形式 | 水冷4ストSOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 155cc |
ボア×ストローク | 58×58.7mm |
圧縮比 | 10.5 |
最高出力 | 17.7HP/9500rpm |
最大トルク | 14.4N・m/8000rpm |
燃料タンク容量 | 5.4L |
変速機形式 | 6速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 90/80-17・120/70-17 |
ブレーキ形式(前・後) | ディスク・ディスク |