イタリアを代表するデザイン会社のひとつであるイタルデザインが、「ドゥカティ860-Eコンセプト」という電動モーターサイクルのスタディを公開して話題となっています。そのスタイリングは、1970年代に同社が手がけた「ドゥカティ860GT」を彷彿させるものです!!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年8月5日に公開されたものを転載しています。

2輪の分野では、イタルデザインの過去作の評価はイマイチですけど・・・?

イタルデザイン・ジウジアーロ SpAは、1968年にジョルジェット・ジウジアーロとアルド・マンドヴァーニによって設立されたデザイン会社です。自動車愛好家たちにはマセラティ、フェラーリ、ロータス、フォルクスワーゲンなどの自動車会社とのコラボが有名なイタルデザインですが、カメラのニコンや銃器メーカーのベレッタなどとの仕事も、その筋? の人々には広く知られています。

画像: イタリアのイタルデザイン-ジウジアーロのショールームに展示される、2005年のフェラーリGG50。 en.wikipedia.org

イタリアのイタルデザイン-ジウジアーロのショールームに展示される、2005年のフェラーリGG50。

en.wikipedia.org

ジウジアーロ率いるイタルデザインはバイクのデザインも手がけていますが、そのなかでも日本の2輪ファンに一番馴染みがあるのは1974年のスズキ製ロータリー(ヴァンケル)エンジン搭載モデル、RE-5でしょう。

画像: 国産2輪初のロータリー(ヴァンケル)エンジン搭載モデル、スズキRE-5初期型。そのメーターケースは「茶筒」と呼ばれ、奇異なデザインはあまり評価されませんでした。なおRE-5後期型は、より大人しいスタイリングになっています。 www.jsae.or.jp

国産2輪初のロータリー(ヴァンケル)エンジン搭載モデル、スズキRE-5初期型。そのメーターケースは「茶筒」と呼ばれ、奇異なデザインはあまり評価されませんでした。なおRE-5後期型は、より大人しいスタイリングになっています。

www.jsae.or.jp

そしてドゥカティも、イタルデザインがスタイリングを担当した860GTを1974年に発表しています。その直線を多用したスタイリングは非常に斬新でしたが、多くの保守的なモーターサイクリストたちは860GTは"美しくない"と否定的な評価を下しました。

画像: 1975年モデルのドゥカティ860GT。そのスタイリングは評価されることなく売れ行きが低迷したことから、1976年モデルの860GTSではやや丸みを帯びた燃料タンクを採用することになります。 www.mecum.com

1975年モデルのドゥカティ860GT。そのスタイリングは評価されることなく売れ行きが低迷したことから、1976年モデルの860GTSではやや丸みを帯びた燃料タンクを採用することになります。

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そのほかMVアグスタ350イポテシ(1975年〜)、トモスA5コリブリ(1989年〜)、そしてデルビのプレデター(1998年〜)などのスタイリングも手がけていますが、4輪では数々のヒット作の誕生に貢献したイタルデザインも、2輪のジャンルにおいてはビミョーな評価しか獲得していない・・・のが実情でしょう。

画像: ちなみに1975〜1985年の間使われたドゥカティのロゴも、G.ジウジアーロの作品です。 www.museodelmarchioitaliano.com

ちなみに1975〜1985年の間使われたドゥカティのロゴも、G.ジウジアーロの作品です。

www.museodelmarchioitaliano.com

時代が追いついた? 860-Eコンセプトの"未来的"なスタイリング!!

そんなイタルデザインですが今にいたるまで2輪のデザインスタディは数多く発表しており、2020年にはドゥカティのデザイナーと共同で電動フォールディングバイクのドゥカティ・アーバン-Eのデザインをまとめ上げています。

画像: ドゥカティの電動フォールディングバイクであるアーバン-Eは、378Whのバッテリーを搭載し、最大70kmの航続距離を誇ります。フレーム素材はアルミ合金です。 www.italdesign.it

ドゥカティの電動フォールディングバイクであるアーバン-Eは、378Whのバッテリーを搭載し、最大70kmの航続距離を誇ります。フレーム素材はアルミ合金です。

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画像: Italdesign & Ducati - Urban-E www.youtube.com

Italdesign & Ducati - Urban-E

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https://www.ducatiurbanemobility.com

現時点でドゥカティは、ペダルクランク付きの電動バイクと電動キックボードしか販売しておらず、本格的な電動モーターサイクル作りには熱心に取り組む姿勢を見せていません(表面的には?)。そんななか、イタルデザインがスタディとして公表したドゥカティ860-Eコンセプトは、ひょっとしたら・・・を期待させるものがあります。

画像: イタルデザインによる、ドゥカティ860-Eコンセプト。車体側面とバッテリー部? の「スリット」など、そのシルエットがかつての860GTの面影を思い出させます・・・。 www.youtube.com

イタルデザインによる、ドゥカティ860-Eコンセプト。車体側面とバッテリー部? の「スリット」など、そのシルエットがかつての860GTの面影を思い出させます・・・。

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画像: 諸元などは明らかにされていませんが、灯火類はLEDを採用していると思われます。倒立フロントフォークやラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーなどの足まわりは、現代のスポーツモーターサイクルの基準を満たす装備になっているのでしょう。 www.youtube.com

諸元などは明らかにされていませんが、灯火類はLEDを採用していると思われます。倒立フロントフォークやラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーなどの足まわりは、現代のスポーツモーターサイクルの基準を満たす装備になっているのでしょう。

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1974〜1975年のドゥカティ860GTは、直線基調がSFチックで未来的すぎる・・・という評価を受けていましたが、そんな「時代を先取り」しすぎていた860GTのスタイリングを再解釈したような860-Eコンセプトの姿は、これから迎える「電動時代」にはマッチしているように思えます・・・。

イタルデザインが公表した860-Eコンセプトは、ドゥカティの公式な生産プログラムに載っているものではありませんが、もし将来ドゥカティが腰を上げて本格的電動モーターサイクル作りに取り組むのだとしたら・・・イタルデザインとコラボして、1970年代の「リベンジ」を21世紀にはたしてくれたら・・・と妄想してしまいますね!860GTの敵(かたき)を860-Eで討つ、みたいな?

画像: Ducati 860-E Concept www.youtube.com

Ducati 860-E Concept

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文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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