文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年6月2日に公開されたものを転載しています。
ワールドプレミアとして2010年の東京モーターサイクルショーに登場!
KTMが初めて走行可能なプロトタイプを発表したのは、今から10年以上前の2008年10月のことでした。そしてKTMとウィーンのアーセナル・リサーチ(現在はAIT=オーストリア技術研究所に改称)との協力によるプロジェクトの結実であるプロトタイプが、ワールドプレミアとして人々の目に触れることになったのは、2010年3月の「第37回東京モーターサイクルショー」でした。
オフロード車の環境規制強化と長年戦ってきたKTMにとって、2ストロークから4ストロークへ、そして電動へという流れを受け入れるのはある意味自然な選択なのでしょう。しかし代替として2&4ストロークのICE(内燃機関)から電動へ切り替える・・・ということではなく、電動を2&4ストロークに続く3つ目のパワーソースの選択肢としてKTMは捉えていました。
ICEに比べ環境に優しい電動車は、オフロードスポーツを人口密集地に近づけることが可能になります。それはまた、今まで考えられなかったようなライディング体験の機会を作ることにもつながります。既存のICE車には関心がなかった、新しいユーザー層の興味をひくことが電動車にはできる・・・ということをKTMは期待していたのです。
2012年から市販を開始!
多くのメーカーがコミューター的モデルから電動化へのトライをするなか、KTMはファン領域のモデルであるオフロード車の電動化に挑みました。電動ということでICE車より性能が低くても仕方ない・・・というのは「レディ・トゥ・レース」というKTMのポリシーに反する、ということで、純粋にライディングが楽しめる造りを、開発陣はFREERIDE Eに盛り込んだのです。
2ストローク125ccのエンデューロモデル並みの出力と、4ストローク450cc以上のトルクを立ち上がりから発生するFREERIDE Eは、95kgという車重の軽さもあり独特のライディングフィールを乗り手に提供するオフロード車に仕上がっています。走行可能時間はライダーの技量にも左右されますが、30分以上〜1時間は走り続けることができました。
日本ではFREERIDE Eが展開されていないのが残念ですが、この魅惑的な電動オフロードを日本でも広く楽しめる日が来ることを待ちたいです。
KTM FREERIDE E 主要諸元
モーター ディスクアマチュア式 永久磁石式同期モーター 最高出力 22 kW(30hp)/6,000rpm トルク 42.0 Nm(4.3 kgm)冷却方式 液冷 減速方式 チェーン
フレーム ペリメター・スチール-アルミニウム複合フレーム 高強度ポリマイド/ABS樹脂製サブフレーム キャスター 23.0度 サスペンション 前 WP 倒立式 フロントホイールトラベル 250mm 後 WP PDSショック リアホイールトラベル 260mm
タイヤ 前 80/100-21 後 110/90-19 ブレーキ 前 240mmシングルディスク 後 210mmシングルディスク
乾燥重量 95.0kg シート高 910mm 最低地上高 340mm ホイールベース 1,418 mm
駆動用バッテリー 脱着式リチウムイオン電池 定格電圧 300V 充電時間 1.5時間
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)