空冷Zを今のバイク並みに楽しめる作りとして進化
ブルドックの手がけるコンプリートカスタム車、GT-M(Genuine Tuning Machine)は、空冷カワサキZに乗る上での面倒さをできるだけ排して、現代モデルのように乗れたら……というような、“よく走るZ”に求められる事柄を反映させたものとして、大きく人気を集めている。
今回紹介するZ1000Mk.ⅡはそんなGT-Mの1台として、2020年後半に作られたものだ。ブルドック・和久井さんによれば「18インチカスタムと17インチカスタムの双方の良さをミックスしているんです」とのこと。18インチホイール車が持つ軽快感と、シンプルで上品&硬質な全体の印象。そこに、GT-Mの中核となってきた17インチカスタム製作で培われた作り込みを合わせ込んでいるということだ。
それはZ系ノーマルの19/18インチから現代の17インチに変えることで起こる適正トレール量の変化ほか、各部ディメンションの変化をきちんと出して対応すること。当時と今で異なるフレーム剛性を適正にすること。基準点を正しくし、ここまでにちょっとしたことでズレや歪みが起こってしまっていたものも、正しくしていく。
エンジンに関しても同様。経年劣化や人為的ミスでZが抱えてしまう不具合を、オーバーホールとそれにともなう作業で取り除く。電装も現行車のものを使っていくなど、Z本来の性能を復元した上で、その先の性能や個性といった部分を上乗せしていく。
この車両ではそれが18インチと、ブラック仕上げにあった。ブラックはきれいな艶と色味を出すべくボディカラーにアイスパールという塗料を選び、ブラックで揃えられたハード側ともある面で溶け込み、ある面できちんと対比を見せて、質感も高めている。
それらを形にするには、ほぼ全部と言えるほどに高い自社作業率やオリジナルパーツの開発・製作。それにZに対しての組み立て基準を設けて作業するなど、多くのバックグラウンドがあった。自社作業については、何を行ったのかがすべて把握できる点と、細かい仕様や組み合わせへの適合力の高さが挙げられる。パーツ群については、今のレベルの車両を作るという点に大きく寄与する。
自社加工やパーツの吟味、各部の問題が解決されるだけでなく、それを車両トータルでバランスしているのがGT-M。そう考えると、事前情報なしに空冷Zに向き合った時に経験してしまうだろう苦難を、ブルドックの作業とパーツは先回りで解決していることになる。高質で今の車両レベルで名車としてのZを楽しみたいなら、GT-Mはその正解となる。この車両はそれを18インチでも表しているのだ。
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Detailed Description 詳細説明
ステアリングステムはマッコイ、左右マスターはブレンボRCS。黒でおまかせという要望から、ボディは存在感のある黒に見えるようにアイスパールブラックで塗装し、ブラックのハードパーツに溶け込みつつもきれいな対比を見せる。このあたりのまとまりもGT-Mならではだ。
シートはマッコイ・スプリームで乗り心地も外観も上質となる。塗装も含めて希望や使い方、趣向を伝えれば、ツートンカラー&素材で仕上げることも可能。
内燃機加工もすべて自社内で作業されたエンジンには、ピスタルレーシング製鍛造ピストンを組み発電/点火系もオリジナル化して始動性や耐久性、安心感も高める。ピストンに関しては純正サイズでも鍛造品にされるが、それは乗りこんで行く上での耐久性を考慮してのこと。次のオーバーホールを迎えた時にもピストンは継続して使えるなど、ユーザー負担が減らせて長く乗れるエンジンになる。
キャブレターはヨシムラTMRφ36mm、排気系はZに最適化したWin Mccoyフルチタンエキゾーストでサイレンサーはソリッドタイプだ。
GT-Mに最適化されたフロントフォークはマッコイ・ナイトロンでφ43mm。フロントブレーキはブレンボ・GP4 RSモノブロックキャリパー+サンスターディスクの組み合わせ。フローティングピンにはMccoyロゴが入れられる。ブレーキラインも黒被覆で仕上げ、全体のまとまりを得る。
スイングアームはアルミ5角目の字断面材製のマッコイ、リヤショックはマッコイ・ナイトロン。前後ホイールはブルドックオリジナルのアルミ鍛造、ラヴォランテで2.75-18/4.50-18サイズ。リヤブレーキはブレンボCNC・2ピストンキャリパー+サンスターディスクだ。