獰猛かつ美しいスタイルと、ドゥカティならではのメカニズムによるスポーティさが融合した、新鮮なネイキッドスポーツとして1993年に登場したモンスター。その独特なスタイルに加えて豪快な走りでも人気を集め続け、今やすっかり定番モデルに。そんなモンスターが、2021年モデルで新型にフルモデルチェンジを遂げた。 
文:太田安治、小松信夫、ゴーグル編集部/写真:柴田直行、松川 忍

ドゥカティ「モンスター・プラス」インプレ・解説(太田安治)

DUCATI MONSTER+

総排気量:937cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブL型2気筒
最高出力:111PS/9250rpm
最大トルク:9.5kg-m/6500rpm
シート高:775mm
車両重量:188kg
税込価格:149万5000円(ドゥカティレッドのみ)~151万5000円
※試乗車は「モンスター・プラス」。なおこの車両はプロトタイプとなり、製品と一部異なる部分がある。

見据えたのは高い運動性能だけではない!

富士五湖周辺の峠道を駆け回り、高速道路をクルージングして帰宅という約400kmの試乗で、僕はすっかり新型モンスターに魅入られてしまった。これまで試乗してきたどのモンスターよりも自分のライディングスキルや使い方にマッチしていて、ひたすら楽しい。

現在の日本車に同じような楽しさを感じさせるオートバイは見当たらないから、悔しいがドゥカティの開発陣には「見事な出来です。参りました」と賛辞を送るしかない。

1993年に発売された初代モンスター900は、扱いやすい特性をセールスポイントとした900SS系の空冷Lツインエンジンを、当時のスーパースポーツモデル851系のシャープなハンドリングを生む車体に搭載して誕生した。

画像1: ドゥカティ「モンスター・プラス」インプレ・解説(太田安治)

日本のスポーツネイキッドはパワフルなSSモデル用エンジンに穏やかな操縦特性の車体を組み合わせることが普通なので、手法としては正反対だ。

モンスターがシリーズ累計35万台以上と世界的に成功した最大の理由は、昔風に言うなら「車体が勝っている」状態、つまり動力性能よりもハンドリングを優先した設計思想を貫いているからだと思う。

実車に触れて最初に感じるのは車体の軽さ。188kgという装備重量は事実上の前モデルであるモンスター821よりも18kg、排気量/パワーが同等のZ900RSと比べると27kgも軽く、幅広ハンドル+36度のハンドル切れ角で自由自在に取り回せる。

画像2: ドゥカティ「モンスター・プラス」インプレ・解説(太田安治)

試乗した国内仕様車はシート高が775mmと低く、跨がったままでの前後移動もUターンも簡単だ。これは扱いに不慣れなビギナーや小柄なライダーにとって大きな安心材料になるだろう。

走り出しても軽やかさは変わらず、軽量な車体にパワフルなエンジンで250ccクラスに乗っているようなフィーリング。ハンドル位置がライダーに近いため腕の力をステアリングに伝えやすく、寝かし込みや切り返しがクイックに行えるうえに、ブレーキングで腕を突っ張って上体を支える負担が少ないから疲労も抑えられる。

SSモデルで峠道を走ると休憩時間が多くなるが、新型モンスターでは何本もの峠道を繋いで走り続けても疲労を感じず、休憩する気にさえならなかった。

搭載されているエンジンはユーロ5規制に対応した新設計の水冷L型2気筒の937cc。モンスター821より116ccも増えている割に最大出力の向上は2馬力のみ。

排気量の増加に対して少なく感じるだろうが、注目すべきは最大トルクの発生回転数だ。821の86 N・m/7750回転に対し、新型モンスターは93N・m/6500回転と、中回転域でのトルクを増大させている。

この違いは走り出した瞬間に判るほどハッキリしている。821は7000回転からグッとパワー感が増して1万回転超までシャープに吹け上がる反面、5000回転以下ではギクシャク感があって市街地では扱いにくく感じる場面があった。

画像3: ドゥカティ「モンスター・プラス」インプレ・解説(太田安治)

だが新型は4000回転程度から力強く、軽くてキレのいい油圧クラッチと併せてゼロ発進もスムーズ。6000回転を超えると一段とエンジンが活気付き、1万回転まで軽やかに回る。

実効パワーバンドの広さに加えてアップ/ダウン両対応クイックシフトの設定も良好で、急勾配・タイトターンの続く峠道も4000回転から8000回転あたりを積極的に使うことでスムーズかつリズミカルに駆け抜けられる。

6速・100km/h時は約4100回転で、高速道路120km/h区間では5000回転ほど。この回転域ではコロコロとした振動を感じさせるだけで至極快適だ。

ただし6速ギアの守備範囲は70km/h以上で、60km/h台に落とすとエンジンから不機嫌そうな振動と音が出て拒否反応を示す。

このあたりは乗りやすさ、快適さを優先する日本製スポーツネイキッドとは明確に異なる部分。僕はこれもドゥカティらしいキャラクターだと捉えているので不満は全くないどころか、エンジンと対話する喜びを感じる。

画像4: ドゥカティ「モンスター・プラス」インプレ・解説(太田安治)

これまでのモンスターはステアリングステム回りが重く、寝かし込む際に独特の手応えがあったが、新型は圧倒的に素直な反応だ。前後タイヤが生む旋回力バランスも良く、フルバンク中の安定感もSSモデルなみに高い。

これはパニガーレと同様の構成になったフレーム、倒立フォーク、リアアームの剛性バランスがストリートライディングで掛かる荷重と見事にバランスしている証拠。

前後サスペンションのストローク量はさほど大きくないが、動く範囲を有効に使ってダンピング特性を合わせ込んであることもシャープでスタビリティーの高いハンドリングを生んでいる。

過去に試乗したドゥカティの中でスクランブラー400が最も扱いやすいと感じていたが、新型モンスターも同等に扱いやすく、しかもスポーツ性能には何の不足、不満がない。

大型車ビギナーはもちろん、重量車からの乗り換えを考えているベテランにもお勧めできる。僕も本気で欲しくなった一台だ。

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