2021年に入って、2輪EV普及のカギを握る要素のひとつ、交換式バッテリー標準化とその協業をめぐる動きが世界的に活発になっています。2021年5月末行われた「北京国際オートバイ展示会2021」にて、台湾のキムコは「アイオネックスEVリーグ」に、スーパーSOCOとFELOテクノロジーが戦略的提携で加わることを発表しました。この新連合は、同じ台湾生まれのバッテリー交換プラットフォーム「Gogoroネットワーク」に真正面から対抗することになるでしょう・・・。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年6月13日に公開されたものを転載しています。

台湾No.1スクーターメーカーのキムコを脅かす、電動スクーターの雄Gogoro

台湾は世界で最も2輪車が普及している地域のひとつであり、その普及台数は人口100人あたり60台以上と、じつに日本の6倍以上の普及率を誇ります。1964年、高雄市に設立された光陽工業のブランドであるKYMCO=キムコは、台湾2輪市場で新車販売台数20連覇達成(2000年〜)したトップメーカーですが、近年電動スクーターの分野で業界の巨人たるキムコを脅かしているのがGogoroです。

上のグラフは2019年度のものですが、シェア33.3%という数字はキムコの強さを雄弁に物語ります。しかし、次世代の主流になると目されている電動の分野では、2011年生まれの新興メーカーであるGogoroが他ブランドを圧倒していることがわかります。

Gogoroは2015年から台湾2輪車市場に参入。自社製電動スクーターと、簡単にバッテリー交換ができるバッテリーステーションを数多く設置するという、新しい2輪EVビジネスを展開。2019年からはヤマハとの協業で「EC-05」を販売。そして今年4月にはインドの大手2輪メーカー、ヒーロー・モトコープとインドにおける「バッテリー交換ネットワーク」を構築する合弁会社の設立を含む、スケールの大きな提携を結ぶという、飛ぶ鳥を落とす勢いの急成長ぶりで注目を集めています。

そして先月・・・5月18日にGogoroは、中国最大のメーカーであるDCJ大長江集団、そして中国最大の2輪EVメーカーのYadea=ヤディアと提携し、Gogoroのバッテリー交換プラットフォームを活用した展開をすることを公表しました! 上述のヒーロー・モトコープとの提携によるインドでの展開に加え、中国本土での展開をGogoroが目論見どおりに行うことができたら、それは数的には世界中のライダーの1/3にGogoroが関わることができる・・・可能性を得たことを意味します。

台湾が"交換式バッテリー世界大戦"の開戦の地となる・・・?

2019年のデータで、台湾2輪市場におけるガソリン車とEVのシェア比は81.3%:18.7%となっていますが、今後は年毎にEVがシェアを増やして行くことが予想されます。

台湾トップメーカーのキムコは、Gogoroに対抗して2018年春にionex=アイオネックスというバッテリー交換プラットフォームの導入と、「New Many 110 EV」および「Nice 100 EV」というアイオネックスを利用した電動スクーター2機種を発表しています。

画像: 電動スクーター「New Many 110 EV」とアイオネックスの展示。 www.autoby.jp

電動スクーター「New Many 110 EV」とアイオネックスの展示。

www.autoby.jp

ICE(内燃機関)時代のトップシェアの地位を、来たる「電動の時代」にも守るために、キムコは5月28日に「アイオネックスEVリーグ」を発表。上海を拠点とする2輪EVメーカーのスーパーSOCOと、スポーツEVにフォーカスするFeloテクノロジーズとの提携を公表。Gogoro勢に対抗する、新たなアライアンスを立ち上げました。

画像: 「北京国際モーターサイクル展示会2021」での、「アイオネックスEVリーグ」の発足式セレモニーの一葉。右からFELOテクノロジーズCEOのであるチャン・ジンイーと、スーパーSOCOのCEOのシャーマン・シェ。 www.kymco.com

「北京国際モーターサイクル展示会2021」での、「アイオネックスEVリーグ」の発足式セレモニーの一葉。右からFELOテクノロジーズCEOのであるチャン・ジンイーと、スーパーSOCOのCEOのシャーマン・シェ。

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短期決戦になるのか、それとも長い戦いになるのか?

画像: www.autoby.jp
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郊外に住むライダーは、2輪EVを所有した場合は自宅ガレージで充電をすることを運用法としてまず想定するでしょう。しかし人口密度の高い都市部の集合住宅などに住むライダーは、愛車の保管場所を探す時点でまず苦労するのが常であり、それが2輪EVだった場合の充電スポットの確保は、さらに困難を極めるでしょう。

コミューター的スクーターなどの利用者の多くが、都市生活者である世界的な実態を考えると、やはり電動スクーターの普及を考えるのであれば、Gogoroやアイオネックス方式のバッテリー交換ステーションを、都市部のできるだけ多い箇所に配備することが現状の技術では最適解と思われます。

バッテリー交換ステーションのシェア争いで先行するGogoroを、キムコのアイオネックスEVリーグがキャッチアップできるか・・・は、大きな注目点です。また日欧の各メーカーが台湾の両雄を中心とした国際的なバッテリー交換ステーション整備とバッテリー共用化の流れに、どのように対応することになるのか・・・も大いに気になります。今後の動静に注目しましょう!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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