ライダーニーズに応える特化店舗開店もその一環
それまでバイク買い取りを主業務としたバイク王が、「バイクライフの生涯パートナー」として、小売やメンテナンスなどバイクに関わることで、ライダーの幅広いニーズを取り込んでいこうと舵を切ったのは2016年のこと。
つくば絶版車館を立ち上げから見る、バイクライフ事業部担当部長の渋井さんは、同店開店の経緯を次のように説明する。
「それまでの当社で古いバイクは、販売までの整備やアフターフォローを考えると、極めて効率の悪い商品とされてきました。でも一方で、お客さまがそんな古いバイクの購入を望まれた時に『お売りできません』で、果たしてバイクライフの生涯パートナーを謳えるのか? 社内でそうした疑問もあったんです。とはいえ、それまでは全国の店舗で均質のサービスを提供することを目指してきたんで、絶版車に特化した店を作ろう! といっても、すぐには出来ません。社内のコンセンサスを得ながら徐々に……と言った感じで、ようやくと、2019年3月につくば絶版車館をオープンしたんです。
ここは以前から、在庫車の倉庫業務を兼ねる大きな拠点でしたので、重整備も行える広いPITスペースがある。それなら、2000年以前のバイクも十分にケアできる。そうして、バイク王で唯一の絶版車専門店が生まれました」
ショールームの展示車両は常時200台以上。さらに販売を前提に、100台以上が倉庫スペースにストックされているという。
「2000年以前のバイクを展示販売する……といっても、最初は手探り。それなら、私たちが魅力的に感じる車両から並べていこうと。スタッフは皆、もちろんバイク好きですから、私たちの琴線に触れるバイクは、きっとお客さまにも魅力的に映るはず。今、並んでいるのもそうした車両です。気に入っていただければ『お目が高い!』と(笑)。憧れの車両を選びに来て、共感してくれる店員がいれば、お客さまにとっても、嬉しいことではないか、そう考えます」とは、松田店長。
そして、そんなショールームを支えるのが、整備に専従する、PITスタッフたち。「みんな、開けたがりばかりです」と、渋井・松田両氏が苦笑するほどで、入庫車両に少しでも気になる箇所があれば、すぐに分解整備が始まるという。そんな作業は同店ツィッター(https://twitter.com/zeppan8190)からも、日々発信されている。
バイク王つくば絶版車館は、常磐自動車道の谷和原インターを降りて、国道294号を筑西・常総方面にクルマ・バイクを走らせると5分ほど。左手にバイク王の大きな看板を掲げた建物が見えるから、すぐ分かる。ミニからビッグバイクまで、常時200台の絶版車在庫を抱えるマンモスショップ。レンタルバイクの在庫もバイク王中最大の18台といい、特に週末は多くのライダーで賑わう。
●問合先=バイク王つくば絶版車館 TEL0297-21-8190 〒300-2445茨城県つくばみらい市小絹120 営業時間:10:00〜19:00 木曜定休 https://www.8190.jp/shop/70000854
お話を伺った、つくば絶版車館店長の松田 墾さん(左)と、絶版車館立ち上げに尽力したバイクライフプランニング事業部担当事業部長の渋井克有さん(右)。おふた方とも複数台のバイクを愛車に持つが、今は同店の業務に忙殺される上、コロナ禍もあって楽しめないのが悩みの種なのだとか。「その分、ここでの業務を楽しんでいますよ。『これは!』 という1台をウチのスタッフが一生懸命に仕上げて販売していますから、その価値をお客さまに認めていただけて、成約に至る達成感は何物にも代え難いんです」(松田さん)という。
建物2階のショールームに入り、まず目に飛び込んでくるのが、広大なスペースとモデル群ごとに綺麗に陳列された車両群。プライスタグがなければ、ミュージアムと見間違えるほど。「最近では休日に1日で200名ほどのお客さまにお越しいただいたこともあります」(松田店長)というから、ゆっくり吟味するなら平日か、週末でも午前中がお勧めだ。
関係者以外立ち入り禁止! の1階には広大なストックヤードと重整備も当たり前にこなす、明るく清潔なPITスペースが広がる。上2枚の写真が本文にもあった広大なPITスペース。最下段はおびただしい数の買い取り車が並ぶストックスペースだ。潤沢なストックを利用して、今後は中古車販売にとどまらず、フルレストア車の製作販売や、修理受け付けも積極的に手がけたいという。バイク王が掲げる「バイクライフの生涯パートナー」は決して伊達ではない、というわけだ。
華やかで高価な展示車ももちろん理由がある!
先の通り、常時200台以上を展示するつくば絶版車館だが、決して薄利多売が目的ではない。最新在庫は同店ホームページで見られるが、むしろ価格は高めの印象だ。
「当店で販売する車両は現在、100%が一般ユーザーの皆さまからの買い取り車両です。希少車ばかりですから、決して安くは買い取れませんし、当店で購入いただくお客さまが安心して乗れるように十分な整備も施す。
例えば、機能的に問題なくても外装がヤレている……ということも、絶版車ではよくある話。当店では在庫車からよい外装を集めて1台を仕立てることもあります。特に外装パーツは廃番になっている場合がほとんど。ドナー車両を豊富に在庫するのも強みです。
アフターフォローも、部品在庫こそしませんが、先のドナー車両も使いながら、修理にも即応できる。そんな自信も含め、価格を決めさせていただいています」(渋井部長)
Zにカタナ、NSRと同一車種を複数展示するのも同店の特長。絶版車はお気に入りの1台を探すため、中古車店をハシゴするのが当たり前。その苦労を少しでも減らせれば、とも言う。一見、博物館級に華やかなショールーム、その裏側では数多くの配慮もなされる、つくば絶版車館。絶版車好きなら、注目だ。
次の入庫はいつになる?!
つくば絶版車館イチ押しの特選車群を紹介!
(2020年8月10日現在)
ショールームに展示する車両群の中から、松田店長、渋井事業部長のご両名に、お勧めのバイク群を選んでもらった。ただ、取材は2020年8月10日のもので、本誌掲載時点には売約済みとなってしまう可能性大。本文の通り、同店の販売車両は100%、一般ユーザーからの買い取り車両を仕立てたもの。同じ車両を同じ仕様、そして同じプライスで販売……はあり得ない。まさに一期一会。納得の1台を探し出そうと、定期的に来店パトロールする熱心なライダーが多いというのも頷ける。
※掲載車両は2020年8月10日現在の、バイク王つくばせ絶版車館の在庫車両です。掲載価格は車両本体価格(税込み)で、保険料、登録料等諸費用は含まれません。
KAWASAKI Z1 338万円
初年度登録が2008年、走行距離は4万499マイルという個体。丸タンクのZ1系はまだ仕入れ機会も期待できるそうだが、角Z、特にZ1000Mk.llの入庫は希なのだとか。一方、同店にZを求め訪れるユーザーは、車種、年式より価格帯重視の様子で、300万円前後で探す場合が多いそうだ。
KAWASAKI Z1-R 368万円
2013年登録、走行距離は1万5923マイル。同店には現在、写真のストック然とした個体からカスタム車まで4台が展示されるが、上記のZ1やMk.llなどに比べて人気薄という。その分、同価格帯でより程度の良い車両に巡り会えるチャンスがある。同車ファンならぜひ実車チェックを。
HONDA NSR250R SP 318万円
1993年モデルのロスマンズカラー。走行距離1221km。7月末に入庫したばかりだが、破格の300万円超というプライスタグは新車販売当時の80万円を思うと隔世の感。ただ、ワンオーナーの新同状態。「ここまでの程度のものには二度と巡り会えないかも」とは、渋井部長のコメントだ。
KAWASAKI Z400FX 348万円
在庫車両はミドルバイクも数多い。写真は初年度登録1982年、走行距離23748km、発売時500台限定という今となっては貴重な、通称・グランプリカラーの外装をまとった個体。シリンダー、前後ホイール、フロントフォーク・アウター部、リヤショックスプリングが赤く彩られる同車の特徴もそのまま。マフラー以外、ほぼオリジナル状態なのだ。
上は「今、ちょっと動きがとまっています」(松田店長)という初期型RZ。最前に展示される350が装着するモトコ製カウルは探してもなかなか見つからないだろう希少品(車両価格は158万円)。写真左に並ぶNSR50/80は、「僕と店長の趣味で並べてますが、探している人もいるんじゃないか、と(笑)」(渋井部長)