ボンネビルレプリカに見る油冷車の勘どころは?
このスズキGSX-R1100は、ヨシムラの“ボンネ”こと、トルネード1200ボンネビルをレプリカしたものだ。改めて説明しておくと、ボンネビルはヨシムラが国内第5のメーカーを目指して’88年に作った公道用スペシャルマシンだった。
今で言うカスタムコンプリートのようにも見られそうだが、カスタムという手法が知られてこそいたがメジャーではなかった当時、そのカスタムとチューニングを駆使して車両の登録と認可取得まで行った点(難易度が今の比ではない)にも大きな意義があった。
エンジンはスープアップ、外装はヨシムラが’85年TTF-1王座獲得時に販売したGSXR750トルネードF1用を発展させたもの。フレームには登録認定プレートも付き、296.5km/hを実測。ベースにR1100を選んだのはレースの枠に囚われないパフォーマンスを実現するためだった。
「ボンネは当時、ヨシムラにレース課と別に製品開発課があって、そこで浅川さん(現アサカワスピード代表)が中心になって、わりと好きに作ってましたね。ステップもバックステップと言いながら後ろでなく踏みやすい前など、公道を考えた作りもしてて、結構面白いバイクになってましたよ」
と、ブライトロジックの竹中さん。ボンネ当時はヨシムラでレースメカを務めていたから、現車の内容もよく知っている。それで同店ではボンネビル・レプリカを何台も手がけてきていて、この車両はその最新作。エンジンもブライトロジック流できっちり仕立てられ、足まわりもボンネビルオリジナルを尊重しつつ、現代的な部分もミックスされている。
「エンジンは担当の渡利が組んでて、ピストンもカムも換えてフルメニュー。ミッションもクロスにしてます。フレームはチェック後に、今回はバフ仕上げ。足まわりはリヤがオーリンズでフロントがアドバンテージ・ショーワ。ブレーキはブレンボでホイールはマルケジーニの中空3本スポークです」
さらっと概要を教えてくれる竹中さん。30年以上前の大型車ベースだからと構えていたが、車両は軽く動かせるし、コンパクトに感じる。気がつくとハンドルがかなり下方にマウントされているのにだ。
「カウルが低いからハンドルも低いところに付けないといけないんですよ。フォークもだいぶ突き出してますけど、これでバランスは取れています。外装はフロントカウルとタンクがボンネビルの本物で、これは同じ形のをヨシムラの許諾を取ってウチでも用意しています。シートカウルは、じつはR750R(’86年の限定車)です。形も近いですし。シートもR750Rがそのまま使えて、副次的に乗り心地もよくなります。車体も含めてフルレプリカするのもいいんですけど、実際には当時やむをえずでそうしていた部分もありますから、そこは当時も“この方がいいかな”と思っていた方法で手を入れたりはします。
ベース車も油冷ですからもう30年は経ってて古いんですが、決定的にダメになっているような部分がなくて、きちんと走れるようにするポイント、例えばベアリングやゴム類を適宜新しくする、クリアランス合わせをしっかりやる。これでも変わってきます。あとは何が必要なのかを間違いなく見極められるかどうかでしょうか」
レースメカとして培った目に、公道に必要な条件をプラス。本物を知るからこその揺るがない細かな作り込みにも注目した1台なのだ。
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Detailed Description 詳細説明
取材協力:ブライトロジック
記事協力:ヘリテイジ&レジェンズ
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