二十歳を目前に控えた1976年秋。楠先生には気にかかることがふたつあった。ひとつは自分の将来についてであった。
 
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第6回「十代最後の秋、忍び寄る影」

「大阪ミナミのナイトクラブで働いていたときは楽しかったですね。Z2に乗って夕方4時に店に入り準備、6時に食堂で飯を食って近くのサテンで一服。7時から12時まで営業。帰りは朝までZ2で走り回る。親元を出て一人暮らしも楽しく、バイク仲間も水商売仲間も沢山できた。

仕事も楽しく遊びも楽しい。充実していると思っていました。でも夏が過ぎた頃、ふと思ったんです。『年が明けると20歳になるのか』と。ここで初めて人生みたいなモノを考えたんですね。『毎日は楽しい。でも…、違うんじゃないのか』と」。

画像: 大阪でバーテンダーをしていた頃。跨がっているノートンは知人のオートバイで、楠先生のセパハン仕様のZ2は赤いペイントを施されてBMW100RSの後ろに止まっている。

大阪でバーテンダーをしていた頃。跨がっているノートンは知人のオートバイで、楠先生のセパハン仕様のZ2は赤いペイントを施されてBMW100RSの後ろに止まっている。

バーテンダーの仕事をし、Z2を乗り回しながらも、漫画家になるという夢は捨ててはいなかった。

大阪のアパートで、独学で、自分が大好きなバイクやクルマの漫画をコツコツと描いていた。二十歳を前に初めての完成原稿を週刊少年チャンピオンの新人漫画賞に投稿。

Z2に最低限の荷物を積み込み、十日間のソロツーリングに旅立った。

画像: 最初の完成原稿を少年チャンピオンに送り、マジソンバッグとタンクバッグで中国地方から九州一周のツーリングへ。泊まるのはすべて宿泊費の安いユースホステルであった。

最初の完成原稿を少年チャンピオンに送り、マジソンバッグとタンクバッグで中国地方から九州一周のツーリングへ。泊まるのはすべて宿泊費の安いユースホステルであった。

漫画家になる決意を新たにした楠青年。だが、もうひとつ気にかかることがあった。どこに行くにも一緒だったZ2のことであった。

「そんな大好きなZ2プラス集合管に大きな弱点があったんです」。

(以下、第7回「Z2+集合管のジレンマ」をお楽しみに!)

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