カタナ改の常識を超えた
カタナといえば、これまでいくつもの「名作」と呼べるチューンドが誕生している。
ヨシムラがAMAスーパーバイク用に製作したカタナ、宮城光さんが製作したホワイトパイロット、西部警察のブラックカタナにカタナR、NK1レーサーにヘリテイジ、1135Rにシルバー鋼——。
こんなキーワードで、わかる人はわかる。
そして、これまでも幾多のチューンドカタナを生み出してきたブライトロジックが、2015年春に作り上げたのが、このブラックカタナ。
これまでのチューンドカタナの歴史と最新のテクノロジーを注入したスーパーカタナなのだ。
ベースとなったのは、カタナがまさしく現役の時代に製作された、AMAスーパーバイク用レーサー。
デビッド・アルダナがライディングしたヨシムラカタナは、実は当時ヨシムラに在籍していた、現ブライトロジックの竹中さんが担当したレーシングマシンだったのだ。
「カタナをスポーツバイクに仕立て上げたい時、やっぱりネックになるのは車体の構成なんです。
剛性はもちろん、車体の姿勢にも手を入れようとなった時、参考にしたのは、あのAMAレーサーのディメンジョンでした」と竹中さん。
いくらなんでもレーシングマシンをそのまま公道仕様に、と思ってしまうところだが、あのAMAスーパーバイクレーサーが製作された81年から30年が経った今、公道仕様スーパースポーツモデルのパフォーマンスは、当時のレーサーをとっくに越えてしまっているのだ。
「エンジンはもちろんフルチューン、それも今までに経験あるものですが、やはりメインに手を入れたのは車体。
当時とはパーツ単体のパフォーマンスや精度もくらべものにならないほどいいから、最新のパーツを使って車体を仕上げました」
白眉は、このフロントフォーク。オーリンズのレーシングマシン用FGRをカタナに必要な全長となるようにモディファイ。
もちろん、竹中さんが図面を引いて、カロッツェリアジャパンにオーダーしたものだ。
「このフォークだけで、かなり長い時間かけましたね。ただの延長ではなく、内部パーツもすべて全長を合わせてもらったので、まさに世界にひとつだけの、カタナ用オーリンズです」
ドライカーボンの外装パーツにアルミタンク、マルケジーニ製マグネシウム鍛造ホイールに、ラジアルマウントされたブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパー……。
これはもう、今まで世界中に存在したすべてのチューンドカタナの上を行く、スーパーカタナだ。
「30年も前に作った当時の最高傑作を、今の技術でやってみたかったことが全部できました。
このカタナも、あと30年は誰も超えられないと思います」