写真:南 孝幸 文:小川 勤
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スズキ「SV-7GX」インプレ(小川 勤)

SUZUKI
SV-7GX
2026年モデル
総排気量:645cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブV型2気筒
シート高:795mm
車両重量:211kg
価格:113万3000円(ホワイト単色)/117万7000円
発売:2026年10月13日
スズキが磨き続けた、90度Vツインの真価
スズキの良心の塊。これがSV-7GXの第一印象だ。そのつくり込みは、とても真面目で丁寧で、細部に及ぶ。走るほどにスズキにしかつくれないバイクだな、と感心させられる。

SV-7GXのベースは、1999年に登場したSV650だが、走り出しても古さは皆無。クロスオーバーというジャンルが今の時代にとてもマッチしていることが伝わってくる。驚くのは排ガス&騒音規制の厳しい時代にもかかわらず1PSのパワーアップを実現し、さらに燃費も向上させているVツインエンジンだ。1PS? と思うのは当然だろうが、この1PSを侮ってはいけない。
電子制御スロットルの採用により、3段階のパワーモード、シフトアップ&ダウン対応のシフター、トラクションコントロールなどの電子制御機能を装備。また、ナックルガードやリアキャリアも標準装備される。
90度Vツインと270度並列ツイン。不等間隔爆発は同じでも鼓動は違う
「響く鼓動、新たな旅のその先へ」。これがSV-7GXの開発コンセプトなのだが、国産車のVツインエンジン搭載車に乗るのは久しぶりのこと。最近はツインといえば270度の位相クランクを採用する並列ツインが主流だからだ。
確かに、並列ツインの爆発間隔(クランク2回転で270度→450度を繰り返す不等間隔爆発)は、90度Vツインと同じ。しかし、今回改めて思ったのは、爆発間隔は同じでも、乗り味まで同じではないということ。「響く鼓動」は、明らかに90度Vツインが上なのだ。
ではなぜ、90度Vツインでなく並列ツインが主流なのかというと、90度Vツインは部品点数が多く生産コストがかかるから。だが、スズキはこのエンジンを累計50万台以上生産することでそこをクリアしてみせた。これこそ磨き続けることでしか到達できない領域。まさに「継続は力なり」である。

そして、このVツインエンジンはたまらなく良い。「ドルルー、ドゥルーン」。スロットルの開け方によって表情を変え、トルク感とパワー感、そしてライダーに伝わる鼓動感が常に良いタイミングでシンクロする。
そしてアイドリングの少し上の低回転域からクイックシフターが完璧に機能してくれる。発進直後に6速まで入れて、高いギア、低い回転で粘る走りが可能で、ギクシャクするようなシーンがほとんどない。回転のつながりの良さは、スロットルを開けた際の車体の反応を向上させており、まるでSV650よりも排気量が大きなバイクに感じるほどなのだ。
「こだわったのはアイドリングの少し上から4000回転の扱いやすさ」。開発陣の言葉が思い浮かぶ。電子制御により雑味が抑えられ、従来の長所がさらに伸ばされたことが伝わってくる。発進時のエンジン回転数の落ち込みをサポートしてくれる『ローRPMアシスト』もそうだが、全てのライダーに恩恵のある気遣いはとてもスズキらしい。
幅の狭いVツインだからこそ生まれる、バイクとライダーの一体感
また、とてもコンパクトなバイクに乗っている感覚もいい。発表時にWEB上で見ていた印象もそうだし、実車を遠目から眺めているとSV-7GXは大きなバイクに見える。いや、存在感があるともいえるだろう。

しかし、近くで見るとやはりコンパクト。645ccを感じさせない乗り降りのしやすいスリムさも特筆もので、走り出すと扱いやすい特性からより身近に感じられる。これも並列ツインよりもエンジン幅が狭いVツインの、そして、その幅狭エンジンに寄り添うようにレイアウトできる、スリムなトレリスフレームのメリットである。
また、Vツインエンジンの後ろバンクがライダーに近いことも関係しており、バイクの重心であるエンジンとライダーの距離感が近くなれば、マスが集中し、バイクとライダーの一体感が得やすくなるのである。

S-DMSのモードによるフィーリングの違いも明確で、Cモードはとても穏やか。優しい、馴染みやすい鼓動感がライダーの気持ちも落ち着かせてくれる。Bは標準的なモードで、Aはスポーティ。Aはレスポンスがよく、スロットル操作でサスペンションのピッチングを明確につくれるため、キャリアのあるライダーならかなり元気に走ることが可能だ。
前後サスペンションは、一般的なロードスポーツよりもストロークを稼いでいる印象。それでも足つきの良さはしっかりと確保されている。ブレーキも穏やかに制動力が立ち上がり、サスペンションと気持ちよく調律する。

そしてSV-7GXのスポーティかつ上質なフィーリングに大きく貢献しているのが、ピレリ製のエンジェルGT2である。まず、路面温度が低い場所でも硬さがない。エンジェルGT2は通常のツーリングタイヤよりもスポーツタイヤ寄りのプロファイルで、浅いバンク角でコーナーを駆けやすい軽快性を持つ。また、前輪のグリップ感を引き出しやすく、それがライダーにコントロールしている実感を与える。タイヤそのものの減衰特性とグリップが高いため、制御の介入が少ないのも特徴だ。
峠を舞うように走ることができ、タイトな切り返しも得意。この日はウエット路面に遭遇したが、不安になるような挙動は出なかった。

SV-7GXは、乗りやすく、快適で、スポーティなクロスオーバー。ライダーの希望や用途に合わせて、ツアラーにもスポーツバイクにも柔軟に変身する。Vツインという並列ツインにはない趣味性の高さ、希少性の高さもいい。Vツインを次世代につなごうとする意思もいい。
しかし、その本質はスペックや装備だけでは語れない。スロットルを開けるたびに響く鼓動を感じ、バイクとの一体感に陶酔する。それはVツインエンジンでなければ味わえない世界だ。
スズキの良心の塊。その第一印象は、走り終えたいま、確信に変わった。
