文/写真:石橋 寛
▶▶▶写真はこちら|日本GPに出現したハーレーブースで「バガーレーサー」を展示(画像12枚)
小椋藍やマルク・マルケスで盛り上がるその裏では──
去る10月2~4日、モビリティリゾートもてぎで熱戦が繰り広げられた、モトGP第16戦 MOTUL 日本グランプリ。世界最高峰のプロトタイプマシンがコンマ1秒を削り合うサーキットの熱気は、まさに言葉にできないほどの興奮に満ちていました。そんな純レーサーの世界に、およそ「サーキット」という言葉とは対極に位置するはずのブランドが姿を現し、スタンド裏で大きな注目を集めていたのをご存じでしょうか。

モトGPにエントリーしていないはずのハーレーダビッドソンが、グランドスタンド裏に超大型ショップを出店したわけとは!?
メインスタンド前の中央エリアに、ひときわ異彩を放つ漆黒とオレンジの巨大なブース、そう、アメリカが誇るキング・オブ・クルーザー、ハーレーダビッドソンの特設ブースです。

ハーレーのツーリング・シリーズをチューンナップしたバガーレースを体験できるシミュレーターも大人気!
「えっ、MotoGPにハーレー? レースには1台も出ていないのに、どうして?」
熱心なロードレースファンならば、そんな疑問を抱くのも当然。ゆったりと大陸の直線道路を流す大柄なグランドツアラーと、限界までバンクしてコーナーを駆け抜けるモトGPマシン。イメージとしては確かに水と油にほど近いかと。しかし、実はこの両者、2026年シーズンから本気でガッチリと握手を交わしています。それこそ、現在アメリカで驚異的な盛り上がりを見せ、モトGPを凌ぐほどの人気と熱狂を誇っている新興レースカテゴリー、「バガーレース(Kingof the Baggers)」の存在なのです。

公道モデルさながらにフェアリングやサイドパニアを装備したバガーレーサー。ハーレーなのに、このバンク角ってありえないでしょう(笑)。

来場者の中にもハーレー乗りが散見できたので、日本でバガーレースが開催されたらモトGP同様に人気が出るはず。
280kgのヘビー級レーサーが300km/hで走る!?
バガーとは、もともと左右に大型のパニアケース(サドルバッグ)を備えた、ハーレーの「ロードグライド」などに代表されるツーリングモデルのカスタムスタイルの総称。いわば、旅を楽しむための重厚なバイクです。そんなお世辞にも「レーシング」とは呼び難い巨体で、フロントカウルやパニアケースといったバガースタイルをあえて残したまま、エンジンや足まわりを徹底的にチューンナップ。サーキットへと持ち込んで、バックステップをガリガリと擦りつけながら、文字通り「豪快なレース」を展開するというのが、バガーレースの真髄です。

ハーレーのファクトリーチームで走るカイル・ワイマン選手。2025年のシリーズチャンピオンに輝いています。
アメリカ発の熱狂的なムーブメントを土台に、ハーレーダビッドソンとモトGPの運営元であるドルナスポーツが共同で立ち上げたのが、2026年から世界選手権としてスタートした「FIM ハーレーダビッドソン バガー ワールドカップ」。マシンスペックもツーリングモデルとは段違いで、ファクトリーレーシングが手がけた「ロードグライド」のレーサーは、車重こそ約280kgとヘビー級ですが、Vツインエンジンからは200馬力以上のパワーを絞り出し、最高速度はなんと300km/hを軽く超えるのだとか。
そんなモンスターマシンが、かつてモトGPクラスで鳴らしたトップライダーたちの手によって、超高速域で火花を散らしながらサイド・バイ・サイドのバトルとくれば、アメリカや欧州の開催地では、モトGPの決勝日に負けず劣らずのフィーバーとなるのは間違いありません。
ぜひ来年の日本GPで走る姿を!
今回のもてぎのハーレーブースは、いわばその「世界規模の熱狂」を日本のファンにも体感してもらうための、強力なメッセージだったというわけ。現に、ブースの目玉として用意されていたのは、バガーワールドカップの参戦車両を模した「ロードグライド」によるレーシングシミュレーター。大柄なカウルを目の前に、バガーレーサーならではの独特なライディング感覚を疑似体験しようと、多くのモトGPファンやハーレー乗りが列を作っていたのでした。

体重移動によるバンクも可能で、アクセルを戻すと立ち上がるという本格的なシミュレーター。コースはもちろんもてぎのフランプリコース!
もちろん、最新2026年モデルの実車展示や、実際にエンジンをかけてギアシフトと鼓動を味わえる「ジャンプスタート」体験、ファクトリーレーシングのグラフィックをあしらった最新アパレルの販売など、中身はとにかく濃いもの。世界最速のプロトタイプが鼓膜を震わせるすぐそばで、アメリカンVツインの野太い重低音と、レースに対する飽くなき情熱を感じる。ジャンルの垣根を越えたこの試みは、バイクという乗り物が持つ「走る楽しさの多様性」を改めて教えてくれたような気がします。

CVOのツーリングモデルながら、カラーリングを施すと実にレーシーなルックス。日本でのレース開催にぜひ期待しましょう。
2026年のワールドカップ自体は欧米での開催にとどまり、残念ながら今回の日本グランプリのレースカレンダーには含まれませんでした。しかし、ブースに詰めかけたファンたちの輝く目や、シミュレーターを終えた後の興奮した表情を見ていると、確信せずにはいられません。巨大なバガーたちが日本のサーキットを激しく攻め立てるレースが、ここ日本の地でもリアルに見られる日が来ることを、心から望んでいる方は決して少なくないはずです。
モトGPという世界最高峰の隣で見せられた、もうひとつの熱いモータースポーツの未来。ハーレーダビッドソンがもてぎに持ち込んだ、突き抜けたアメリカンのパッションが、近い将来、日本のコースをも揺るがす日が来ることを期待してやみません。

アメリカではハーレー対インディアンのガチンコレースとして、モトGPに劣らぬ人気を誇るキング・オブ・バガーレース。




おすすめ関連記事





