時代の要求か、メーカーの意地か、それともバイク進化の必然だったのか。バイク100年超の歴史の中で、レースの世界や車両をこのモデル以上に身近に感じたものはなかった。ホンダNSR250R。
1985年に世界GPを制すべく作られたファクトリーマシンRS250R-Wのディメンションやスペック、作りをほぼそのままに1986年にストリートに送り出された、リアルファクトリーレプリカ。以後15年弱で12万台近くが作られ、今もその魅力は深まるばかり。至高の1台を、これからじっくり見ていこう。

レーサーと市販車でつながっていた要素

レースも、速ければいいだけではない。トラブルやストレスからできるだけ解放され、確実にゴール=完走することも求められる。2ストロークの持病とも捉えられた焼き付きも極力抑えたいし、悪いというイメージが付いていた燃費も、良くしなければならない。市販車ならばエンジンオイルの消費も少なくしたい。

そうした、レーサーと市販車で別と思われながら、じつはつながっていた要素。これを高い次元で共通化したレプリカ。それが、NSR250Rというモデルの本質ではないか。究極レプリカとしての意義。発売とともにそれは広く、長く支持されることになる。

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NSR250R・MC16のように初代が成功すると、2代目の開発にはいかにそれを維持するべきかなどの躊躇も出てくる。だがNSR250Rには、それはなかったかのようにも思える。もちろん市販車だから、なかったわけではない。ただ、振り返ってみれば、NSRは前述した究極レプリカとしての立ち位置をほとんど崩すことなく、モデルチェンジを成功裏に進めていった。

レプリカは、速さと高性能のイメージをレーサーから引き継がねばならない。だから、レーサーと同じに作ってしまえばいい。普通はそう考えがちだ。それはある意味、簡単だ。同じようなコンセプトを立てて、局所的な性能さえ盛り込んでおけば……という車両が追随したかもしれない。でもそれでは長続きはしなかったはずだ。

NSRは元になるレーサーを作る際に、市販車としても通用する技術もきっちり練り込んでいた。スタイルとしてはレーサーレプリカ特化だが、使い勝手がピーク域優先というところ、レーサーでありがちな難しいところへ行ってしまってはいけない。そこに配慮した。

それが初代MC16の成功につながった。NS250R/Fから引き継いだNSシリンダーも、NSR250Rで新採用された排気デバイスRCバルブも。2代目MC18ではPGMシステムによるキャブレター制御を行い、それはMC21では点火時期ほか制御の総合化に発展。

MC28ではPGMメモリーカードキーにまで進化する。この仕様はレーサーでも有利だったし、今のフューエルインジェクションを初めとした各種電子制御にまで通じる機構となっている。

画像2: レーサーと市販車でつながっていた要素

そしてNSRのMC16/18/21/28の4つの型式は、それぞれに登場時点のバイク界のトレンドをきっちり押さえ、ユーザーニーズにがっちり食い込んだ。新車が出たときに満足しながらも“次の型でもっと良くなるだろう”と我慢するような不満がないほどに常に最新で、魅力が高かった。

さらにNSRは、それまで耐候性や耐久性等の問題もあって一般化していなかったマグネシウム合金製ホイールを“SP”の追加によって、市販車に初採用する。高密度化が可能なダイキャスト製法、高耐久性の表面処理。

さらにレーシングイメージが高く、ON/OFF効率が良い乾式クラッチ、またレースブームによって浸透し始めた“セッティング”をオーナー自身でも楽しめる減衰力調整機構を追加したサス。これらをSPに加える。価格は上がったものの、SPにはロスマンズやペンタックス等のスポンサーカラーの外装も付いてくる。

MC21ではSPからマグホイールを省いて買いやすさや維持性に配慮した“SE”も加え、選択肢を増やす。MC18では規制を強化されながらも走る楽しみを高める。時代背景も追い風とは言えたが、それまでと違う高い次元と思想によって、レプリカ度を高めるという方法を常に取り込んだのがNSRとも言えた。そうして後には公道用モデルだけでも都合29モデルが展開されることとなった。

こうしたバリエーション展開によってもNSRは長く支持され、結果的にはシリーズで10年超を展開し、国内だけでも年間1万台以上ペースを続け、結果、12万台近くを販売した。これが現存車両の多さにもつながり、フレームや各部大物パーツが高質に作られたこと、各世代間にもパーツ互換性があることで、今もさまざまなスタイルで楽しめる。背景も含めて今では考えられないレプリカ度がある。NSRの朽ちない魅力は、そこにある。

画像3: レーサーと市販車でつながっていた要素

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