2026年9月上旬に行われたホンダ「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」「CBR400R FOUR E-Clutch」の試乗会では、開発エンジニアの皆さんにお話を伺うことができたのでお届けしたい。

まとめ:ヨ(webオートバイ編集部)
▶▶▶写真はこちら|ホンダ「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」「CBR400R FOUR E-Clutch」(画像18枚)

ハイパーVTECはないけれど

9月上旬に開催されたメディア向け試乗会では、「CB400スーパーフォアEクラッチ」「CBR400Rフォア Eクラッチ」の開発エンジニアが一堂に会し、各モデルの狙いや開発の苦労話を聞くことができた。

画像1: ハイパーVTECはないけれど

まず聞きたかったのは、先代モデルにあったハイパーVTEC(ホンダ独自のバルブ休止機構。回転数に応じて作動するバルブ数を2個⇔4個で切り替える)が省略されたことについてだ。新型の4気筒エンジンはとてもクリーンな回り方で、艇中回転域の十分なトルクと高回転域の胸のすくような吹け上がりを両立しているが、付いていたものがなくなることにファンがザワついたのも事実。試乗時間から戻り、興奮も冷めやらぬうちに聞いてみると──。

「VTECの良さというのは我々も十分に理解していますが、あくまでそもこはひとつの手段だと捉えています。低中速、中高速、そこで力強く走るというところと、可変する喜び、その2つの要素に切り分けて、それであれば今の最新の技術による作り込みでそこを両立できると考え、トータルでVTECを選択しない考えました(橋本貴明さん/開発責任者 代行)」

では、実際の加速力やトルクはVTECなしで前作を全面的に上回っているのだろうか?

「純粋なエンジン出力だけ見ればそうではないところもありますが、駆動系のギア配分など含めた後輪出力というところでは上回っていると思います(橋本さん)」

実際に開発者の言う通り、想像以上に中間トルクで走れる感じがある。普段から600cc~750ccクラスに乗っているような方でも、400ccだからというハンデをほとんど感じないことに驚くはずだ。

画像: HONDA CB400 SUPER FOUR E-Clutch 2026年モデル 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:780mm 車両重量:187kg 発売日:2026年8月21日 税込価格:99万8800円

HONDA
CB400 SUPER FOUR E-Clutch
2026年モデル

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:780mm
車両重量:187kg

発売日:2026年8月21日
税込価格:99万8800円

次に印象に残ったのがシートだった。クッション性や表皮のグリップ、そして足着きなどのバランスがいい。作り込みのこだわりはどのようなものだったのだろう?

「シートに関しましてはかなりこだわった部分があります。先代のスーパーフォアには長時間乗っても疲れないクッション性能があったので、そこはどうしても譲れなかった。車両開発の中で軽量化というのは大命題ではあったのですが、その中でもどうしても乗り心地のために多少重くなっても高反発素材を使いたい。でもやっぱり重量が嵩むんです。

そこで開発チームの中で喧々諤々やりあい、最後はフレーム設計の青木さんに泣いてもらって(編注;シートレールを可能な限り下げてもらって)、どうしてもこのシートを使わせてくれと頼みこんで採用できました。ですので、長く乗っても疲れないという部分にはかなり自信があります。

画像2: ハイパーVTECはないけれど

また、初心者の方も乗るバイクということから足着き性にもこだわりました。ただ今回2本サスからリンク式の1本サスに変更されたことで、どうしてもシート下にリアサスが来るので、物理的な高さは上げざるを得なかった(編註:シートベースそのものが高くなった)。

ただ今回、そのリンクサスが逆に味方になってくれた面もあります。リンク採用によってプログレッシブに作動するようになり、ライダーが跨って体重を載せた、いわゆる乗車1Gの沈み込み部分がよく動くようになりました。これにより、数値上は空車状態で測るのでシート高780mmという数字が出ていますが、特に体重の軽い方が乗ると沈み込みストローク分で先代のスーパーフォアとほぼ同じに感じると思います(編註:体重に比例して沈む従来型は体重によって大きく沈み込み量が変わるが、リンク式はレバー比が立ち上がる手前までは体重が軽くてもある程度沈む)。

加えて、実はシートってここぞとグラッと来た時にオットトと支えられるか支えられないかが最終的なお客様の安心感だと思っているのですが、そこに関しても車重の軽さや重心の高さ、リンクサスの沈み込みなどによって、先代よりも安心感は増していると思います(福間 豪さん/エルゴノミクス担当)」

画像3: ハイパーVTECはないけれど

実際に高反発クッションを採用したことでざっくり1kgほどの重量増になるとのこと。さらに情熱的な福間さんは止まらない。シートとタンクの形状で“4気筒の存在感”を伝えるという役割も持たせたのだという。

「シートとタンクの繋がりが大切なんです。ほかに2気筒という選択肢もある中で、なぜあえて4気筒の400に乗りたくなるのかというところを自分なりに解釈したのですが、やはりエンジンのボリューム感だったりとか、クランクが横長で『ちょっと手ごわいぞ』っていう人力じゃ扱い切れない手応え、そういうものを演出したいという思いがありました。

2気筒のバイクはすごく乗りやすく扱いやすい。でも、ちょっとバイクの存在を忘れてしまう面があります。主役があくまでもライダーというか。でもCB400SF&CBR400Rフォアの場合は、やはりオートバイの象徴、4気筒に乗ってるんだ、手ごわいものに乗ってるんだと感じてもらいたい。それに対してタンクの形状、ニーグリップラバーの形状だったりというところで、グッと意識してニーグリップしなくてもオートバイの幅を通じたエンジンの幅みたいなものを、『だから4気筒に俺は乗ってるんだ』とを感じてもらえるような形状にこだわりました(福間さん)」

何を変えて、何を変えなかったのか

2車の開発はCBRのほうから始まったという。中国市場をにらみ500cc(CBR500Rフォア)でスタートしたが、ネイキッドのCB500スーパーフォアを同時進行で開発することになり、それらを日本にも400cc版として展開することになった。

そうした経緯はあるとしても、日本においてCB400スーパーフォアは30年以上にわたって愛されてきた特別なアイコンだ。先代と比べて何を変え、何を変えなかったのか。

「機能や装備面の『変えた、変えない』で言うと『全部変わってます』という回答になってしまいますが、やはり元々のスーパーフォアが目指していた、“誰が乗っても楽しめるオールマイティな性格”という、優等生という表現でお客様に感じてもらっていた価値、それは引き継ごうと思っていました。その価値を実現する手段を今の時代に即したものにしているわけで、例えばリアサスがプロリンク式のモノサスになってたりとか、フロントは倒立が入ってるとか、色々話題になっている(編注:最初はファンからも賛否があった)TFTメーターが付いてるとか、そういう技術手段は変わっても、やはり目指すべきところは全然変わってないません(橋本さん)」

今回のCBの開発メンバーを見ると世代もさまざま。前出の福間さんはビッグワン(CB1000SFに始まるスーパーフォアシリーズ)が大好きだと公言しているが、世代間の価値観をどのようにすり合わせていったのか、あるいはそこにどんなドラマがあったのだろうか。

「私は入社が1992年で、その前年に内定をもらって内定式の帰りに上野のバイク街に寄って書店で立ち読みしたんです。月刊オートバイでした。スクープが載っていて、それがビッグワン。もうむちゃくちゃかっこよくて、その後東京モーターショーに展示されて、もうこれは買うしかないと思ったんです。紆余曲折あって買ったのはCB750Fでしたが(笑)。

その後就職して、浜松での実習では400のほうの組み立てをやったんです。そして最後にはビッグワンが流れてきたんですよ。そこにちょっと因縁めいたものを感じまして、歴代のCB1300、400のモデルチェンジを追いかけながら『いつか俺もあのモデルやりたい』と思いを持ってきました。本当にビッグワン原理主義者だったんですよね。

その後このチームに参加することになり、『俺はビッグワンを作るんだ。先輩たちが作ってきたあの栄光のビッグワンを俺もやるんだ』と。ただ、チームの顔ぶれを見るみんな若いんですよ。もう多分生まれた頃にスーパーフォアが世の中ににあったぐらいに。

自分が感じてきたプロジェクトビッグワンというのは[威風堂々』『ワイルド&セクシー』『乗れるもんなら乗ってみろ』と威圧するようなもの。それでも乗ると乗りやすい。それが私の思うビッグワンだったんです。そこでやっぱり若い人たちと相違があったというか……。

開発の中ではハンドルの位置で一番揉めました。自分は、跨った瞬間に『あ、これスーパーフォアだな』って分かるような、スーパーフォアのレプリカみたいなハンドルバーを作りたかったんです。ただ開発責任者代行の橋本さんはそうではなくて、『福間さんはオールニューのフレーム、オールニューのエンジンでスーパーフォアのマイナーチェンジをやりたいんですか?』と。そう言われて『いや、すいません、それはやりたくないです。ゼロベースでもう一度作り直します』となりました。そこでもう一度チームや橋本さんと話して『何を作りたい? 新世代直4を作りたいんだ。ビッグワンじゃないけど俺たちが作る新しいCBなんだ』と、違う価値を与える方向にまとまりました(福間さん)」

画像: 何を変えて、何を変えなかったのか

ハンドルバーの設定には並々ならぬこだわりがある。

「私としては先代とまったく同じ形・同じ絞り角・垂れ角・幅にしたかったというのが最初はありましたが、今のネイキッドの潮流はストリートファイターです。アップにしたフラットバー、垂れ角は10度くらいで絞りはほぼ付いてない0度~5度くらい。そこ(250や400のストリートファイター)から乗り換えてくれたお客様が許容できる角度を目指し、かつスーパーフォアからの乗り換えのお客様に対してもちょっと懐かしさを感じていただける、ちょうどその真ん中を狙った角度と幅にしました。幅も旧SF比で両側25mmずつ伸ばしてるんです。

おそらく少し幅広に感じると思います。そこも先ほど言った直4を操る、ちょっと手に負えないものを操る、それこそ初代プロジェクトビッグワンの威風堂々とした雰囲気をハンドルバーにも持たせてやりたい。そんな気持ちでした(福間さん)」

足し算の極致だった先代CB400SF、そしてネクストステージCBは引き算の“ピュアスポーツ”へ

橋本さんはチームの皆さんにどのようにしてコンセプトを伝え、意思統一していったのだろうか。

「象徴的なものとして『ネクストステージCB』というコンセプトを掲げました。その時に『この言葉の意味分かってるよね? 超えるんだよ、先代を。30年間認められたものを』とチームの意思をしっかり確認して、目指したからには達成するんだと。大きな愛で皆さんをリードできたんじゃないかと思っております(笑)

先代CBのコピーを作りたいわけではありませんし、我々の役目はそこではない。『ネクストステージ』と言われるようなモデルを、今の時代の価値観であったり体格であったり使い勝手、そういうお客様の感覚に合わせて作り直して、ちゃんとCBというジャンルを世に広めてお客様にバイク人生を楽しんでいただく、そこが使命だと思いました。じゃあ跨った瞬間に扱いやすいという本質をどういう表現で、今の車体構成でどうやって実現できるかというところを議論していきました(橋本さん)」

その『超えるんだ』をチームの皆さんはどのように受け取ったのか。

「自分は本当にゼロベースで“ピュアスポーツを作る”という気持ちでした。ネクストステージCBを自分なりに解釈したのが4気筒のピュアスポーツ。でも“ピュアレーシング”ではありません。CB400SFはネイキッドスタイルのピュアスポーツ、そしてCBR400Rフォアもフルカウルのピュアスポーツを作るんだと、そう解釈しました。

ですから装備や使い勝手も含め、切り捨てたものも結構あります。先代の最終型スーパーフォアは言ってみれば足し算の極地のような、足して足して足し尽くした状態。そこから変えるとなると、やはりスーパーフォアという名前が付く以上は先代と比較して『あれが足りない、これが足りない』がどうしても出てくると思います。じゃあそこを切り捨ててでも取りたい価値って何だ? というところでピュアスポーツ。乗っていて楽しい、気持ちよく汗を掛けるスポーツバイク、そこにフォーカスしたんです(福間さん)」

例えばどんな切り捨てを?

「まずはラゲッジスペース。先代のスーパーフォアはシートを開けるとカッパ1つが余裕で入るくらいのスペースがありました。それから荷掛けフックが減りました。シート裏にストラップは仕込んでありますが、物理的なフックはやめています。グラブバーも。そういうところも残してお客様の快適性を先代以上にしなきゃいけないという考え方もありました。でも、そこを切ってでも欲しいものがこの車両にはあると思いました(福間さん)」

画像1: 足し算の極致だった先代CB400SF、そしてネクストステージCBは引き算の“ピュアスポーツ”へ

チームの皆さんがそれぞれの持ち場で『CBらしさ』のために込めたものとは?

「私は足まわり担当としてかなり初期からこのチームに参加していて、『CBって何だろう?』というのは散々みんなで議論しました。先代が持っていたものって、教習車に使われるくらい本当のビギナーからエキスパートまでみんなが乗って楽しいと思えるということ。それは乗りやすさ、扱いやすさなんだと。

サスペンションで言うと、しなやかな乗り心地で奥ではちゃんと踏ん張ってスポーツできる、そこがCBだよねというところでした。それを今の技術でなるべく軽く、なるべくマスの集中を。そうして2本サスをプロリンクに変更しました。リアのストローク量も10mm増やして、そこを活用してより柔らかく、でも奥の荷重もしっかり受け止めるという特性を持たせて、荒れた路面を柔らかく受け止めながらスポーツするとしっかり踏ん張って楽しめる、そういうところをこだわって作り込みました(川崎洋平さん/足回り設計担当)」

「デザイン担当として企画初期から関わってきました。最初にCBの4気筒と聞いたとき、以前にCB650Rのデザインを担当していた頃にお客様から『エキゾーストパイプの造形がすごく綺麗だよね』という話をいただいていましたので、このモデルでもやはり4気筒らしさの象徴として入れていきたいと思いました。しっかりエンジンが見えてエキパイが綺麗に4本並んだ形、そこにこだわりました。単に性能を重視するならこういう取り回しにはならないのですが、流れるような造形というところを大事にして、ここだけは譲れないと思ってデザインをしてきました(渡邊和樹さん/デザイン担当)」

昔のヨンフォア(CB400FOUR)のイメージもあったのだろうか? また、燃料タンクの形であるとかヘッドライトの位置であるとかも、CBの象徴的な部分だ。

「(エキパイに関してヨンフォアのイメージは)ありました。そしてCBと言ったらやはりタンクが鉄タンクであること(プラスチックのカバー類がないこと)やリアまわりのボリュームがあること。それらを守りつつ、スーパーフォアだなと思っていただけるような造形を意識してやってきました。また、メーターについてはCBらしさを入れるところも重要だと思いつつ、先進装備でもアピールしていかねばというところで、ああいう四角いモニターという選択になっています(渡邊さん)」

画像2: 足し算の極致だった先代CB400SF、そしてネクストステージCBは引き算の“ピュアスポーツ”へ

「私も『CBと言えば直4』というイメージがずっとありましたので、燃料吸排気設計の担当としてはエンジンをいかに滑らかに回してあげるかがテーマでした。吸気に関してはホリゾンタルだった先代からダウンドラフトに変更し、インレットファンネルは気筒ごとに長さを変えて、谷のない特性を作り込みました。排気については、性能的に見れば集合部をデザイン担当が求める造形にするのは難しいところだったのですが、集合形態を工夫して性能と外観を両立させるよう意識しました。また、昨今の排ガス規制で大きくなった触媒のサイズが外観に影響を与えがちなのですが、そこは外観のプライオリティを上げて触媒のサイズ含め作り込みました(安田翔平さん/燃料吸排気設計担当)」

「エンジンを担当しましたが、個人的にはCBが特別好きというわけじゃないんです。RZ(ヤマハ)のようなピーキーなバイクがでして……。でも、そんなふうに尖った部分を削り落としていったものが1990年代以降のCBでした。優等生と言えばそれはそうなのでしょう。でも私が思うに、『誰が乗ってもいつもよりちょっと速く走れる』のがCBだと思っているんです。その上で、1990年代の馬力規制の中でもなんとか面白みを追加するためにVTECも生まれてきたと。でも一方で直列4気筒エンジンって高回転化・高出力化のために生まれてきたエンジンで、なんか微妙な矛盾も感じていだんです。

その中で今回、VTECというのは最初からほぼ考えていませんでした。それは今後のエンジンの展開性などを考えた上で、今回のスーパーフォアだけで終わらせるエンジンにしたくなかったというのもありますが、橋本の言う通りネクストステージCBということで出力はお客様が納得できるレベルを確保しなきゃいけない、燃費も超えていかなきゃいけない、使いやすさは絶対損なっちゃいけない。

だからこそユーザーフレンドリーな、極力角を削り落とした丸い球体に近いような特性を持たせた『素のエンジン』であるべきだと。いかようにも特性を変えられるような、それこそ本当につるんとしたいいエンジンをまずは作ったと。特性などはチームのメンバーにいくらでも味付けしてもらえるよう、素材を作るつもりで今回は取り組みました(小林友和さん/エンジン設計担当)」

「それを受けて、電装担当として私がこだわった部分のお話をさせてください。私はこのチームに途中から参加しまして、チームがすごく軽量化とか色々こだわりを持ってやっているんですね。そこにメインハーネスを通していったりするのですが、機能は盛沢山なのに(ワイヤーはたくさんあるのに、それを)通すところがほぼないというところから始まりました。

ハーネスの取り回しが汚いとお客様の目につきますので、どうやって通すかなと。そこで色々調整して、やっとのことで今の商品に至りました。灯火類も、ネイキッドだったら丸目ヘッドライトにリアは2眼のリングメーターのテールライトを使っていますが、SP(編注:CBR400R FOURのこと。開発チーム内ではこう呼ばれる)で言うとビルトインのウインカーとヘッドライトが一体になり、テールライトはとても小さいという中で、デザインを阻害しない形の採用しつつ、手前も明るく奥側も光らせるように配光性能にこだわりました(風間恵成さん/電装研究担当)

すべてのこだわりをダブルクレードルフレームで受け止める

ここまでに出てきたこだわりの数々を車体にまとめるのは大変だったようで──。

「完成車設計を担当する中で、チームのメンバーはこだわりの塊でやりたいことを全部言ってくるので、フレームボディとしてはダウンドラフトであったりモノサスであったりその辺をすべて支えながら、かつ先代より軽くマスの集中も確実にできるように、そしていつでもどこでも滑らかに走れるようにと、性能を落とさずに軽量化を行うという、正直皆さんの要望を一点に引き受けたなと思っています。タンクのデザインがCBらしさの象徴ではありますが、ダウンドラフトとCBらしいタンクって、エアクリーナーがあってその上にタンクが被さってくる形ですので要求としては真逆なんですよね。それをあの見た目にまとめるために非常に苦労しました。皆さんの思うCBらしさをフレームで受け止めるという(青木宏次さん/完成車設計担当)」

「そうなんです。エキパイの次にこだわったのがタンクの造形でしたが、ダイヤモンドフレームであのタンクの造形というのは相反するもの。通常だったらホリゾンタル吸気のモノバックフレームで成立するようなタンクの造形をあのフレームで成立させてくれたというのは本当に感謝しかないですね。初期検討では前側を樹脂にしようかという話もあったのですが、それだとCBらしい造形にならないよね、なんとかあれ全部鉄タンクで作ってくれと、ちょっと無理なお願いではあったのですが、そこはこだわりました(渡邉さん)」

CBらしさをどのくらい残して新しさをどのくらい出していくのかという塩梅が悩みどころだったのでは?

「そこはかなり難しかったところです。そのままコピーをするわけではなく、プロポーションを守りつつ現代版に落とし込んでバランスを取っていくのがすごく難しかったですね。しっかりしたクッションの造形だったりリア回り、水平基調のプロポーションの造形というところを守りつつというのがデザインで大事にしてきたところですね(渡邉さん)」

一方で燃料タンクの容量は18L→15Lと減少している。

「タンク容量については、今のお客様の価値観や使い方……日帰りツーリングか、行っても1泊2日という中で考え、燃費向上したところも踏まえ、必要な容量はここだというのを再定義しました。目安は1回の満タンで300kmですよね。理論上は340kmという設定ですが、300kmあれば関東圏内で言えばここまで行けるよね、ツーリングスポットに行って楽しんで帰って来られるよねという使い勝手を考え、15Lを確保しました(橋本さん)」

過去のCBに対するこだわりはまったくないというメンバーもいた。

「駆動系を担当しましたが、私は個人的にCBに対するこだわりが全然なくて、エンジンもフレームも新規で作るなら以前と同じものを作っても意味がないと思ってる派なんです。なので、もうとにかく新しいことやったろうと。Eクラッチについても650で使っているものをそのまま載せても面白くないので、部品ひとつひとつ調べていって『これって何のために使ってるんだっけ?』『何のためにこの寸法になってるんだ?』と全部洗い出し、不要な部品を捨てているんです。それはコストにも軽量化にも貢献しました。とにかく新しいことをやっていきたいな、それがホンダの人間がやるべきことかなと思っていますので、それが実現できて本当に良かったと思っています(中野賢一さん/工藤家設計担当)」

新設計の4気筒エンジンは、Eクラッチの搭載を前提としたもの。これまでクラッチカバーに後付けしたようなスタイルで作られてきたが、最初から組み込むことでアクチュエーターをドライブスプロケット付近に配置し、ケース背面のレリーズをコントロール。レリーズからクラッチバスケットまではプッシュロッドを介している。このアイデアのはどの段階で出てきたのだろうか?

「最初は普通のクイックシフターだったんです。でも650(CB650R/CBR650R)のEクラッチの評判が良くて『Eクラッチにしましょう』となりました。そして650と同じように右側に付けようとしたのですが、どうにもこうにも良いところがなく、『ちょっと待てよ、左側に付けてみたらつくんじゃね?』ってエンジン設計の小林さんと色々やってみたら付けられそうでしたので、じゃあどうしたらいいかと考えて。私はCRF(CRF450R/CRF250R)をやっていて、CRFのやり方で左から押せば行ける……と思ったら行けちゃったという感じです(中野さん)」

画像: すべてのこだわりをダブルクレードルフレームで受け止める

「新しい発想が生まれて、本当に奇跡的なフィッティングで左側に付いて、右にも後ろにも動かないほどビタッとEクラッチが収まったと思っています(橋本さん)」

皆さんそれぞれに思いを、こだわりを抱えて開発に臨んできたことがよくわかる。これを進めていく立場なのが開発責任者代行の橋本さんだ。

「最初にコンセプト掲げてみんなが『うん』と言った時点で、苦労するのを理解して取り組んでくれたなと思います。400cc、500cc、しかもネイキッドとSPの2タイプやる大変さを十分理解した上で、知恵を出し合って乗り切ったというところでしょうか。実務で言うとLPL(開発責任者)の中村さんの方が全体を取りまとめてくれるので、そういう意味でこだわりを持ってやる側と少し引きながら全体をリードする役割といういいバランスでやれたと思います(橋本さん)」

そうして話を振られた開発責任者の中村さん、プロジェクトの最初からかかわっていたわけではないという。

「そうですね、私は実は途中から入ったんです。私が入ったタイミングでは試作車も出来上がっていたような感じで、だからコンセプトでバチバチやっていたというのはあまり知らず、後から経緯を聞いたという形になります。

ここまで聞いていただいた通り、ひとりひとりこだわりが強いので、みんながお互いやり合ってるのを横目で見ながら『誰と誰をお話しさせたら解決するかな』とか『客観的に考えてこちらの意見の方が正しいよな』というジャッジメントをある程度していけたらと思ってやってきました。

せっかくなので私にとってのCBらしさというお話をしますと、私は部品設計は担当していないので少し観点が異なります。私が思うにCBらしさの中には『お求めやすい価格』というのが必ずあって、それを達成するためにお金の話はどうしても付きまといます。CBらしい価格、お客様の届く価格を実現するための手段って何だろうと、それが頑張ってきたところかなと。

もちろん設計やテストのメンバー含めて頑張ってきたわけですが、中国のメーカー(サプライヤー)さんを訪問して技術向上に努め、一緒に成長してグローバル品質を実現しました。それを日本向けにも使ってコストを抑え、みんなが作りたいものをお客様が望む価格で提供できる、そんな商品に仕上げられたかなと思っています(中村拓郎さん/開発責任者)」

開発メンバーが“SP”と呼ぶCBR400R FOUR E-Clutch

次はCBR400R FOUR E-Clutchだ。単にカウルを付けただけではないモデルだが、一方でサスペンションはセッティングも含めCB400SFと同じだという。ライディングポジションによって曲がり方の印象が変わっているようだが、どのように作り分けたのだろうか。

画像: HONDA CBR400R FOUR E-Clutch 2026年モデル 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:780mm 車両重量:187kg 発売日:2026年9月18日 税込価格:119万9000円

HONDA
CBR400R FOUR E-Clutch
2026年モデル

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:780mm
車両重量:187kg

発売日:2026年9月18日
税込価格:119万9000円

「ネイキッドに対してカウルで外観を変えただけでは面白くないですから。ハンドルとハーフカウルでフロントの接地感を出して、ステアリングが素直に切れていくように。また、ネイキッドに対して中高回転で伸び切るCBRをエンジンに盛り込みました。そこを皆さんに実感していただけたのかなと思います(橋本さん)」

確かに、より高い回転を使って楽しみたくなるキャラクターだった。

「FIのセッティングも違いますので、より高回転が楽しいのかなと。ダウンドラフトのエアクリーナーにもちょっと近づいたポジションになるので音の反響も相まって、CBRの方が気分は高まるしコントロールしてる感じが得やすく、スポーティーなフィーリングになっています(橋本さん)」

ライディングポジションによる違いも、もちろん大きい。

「CBに対してシート位置は変わっていません。地面に対して同じ位置に座ってステップも同じ。ただしハンドルバーはクリップオンにして120mm前に出し、100mm下げて頭の位置が下がるようにしました。同じ体格であれば、CBと比べるとヘッドパイプに対して頭を100mm前後近づけています。

さらに今回こだわったのはハンドルバーの角度でした。現代のレーシングマシンに跨ったことのある方は分かるかもしれませんが、絞り角と垂れ角がかなり減ってるんですね。相当フラット。あれを演出したかった。私が若い頃にロードレースをやっていた頃はかなり絞ってあって、ストレートで体を小さく畳むようなライポジだったのですが、今はハンドルバーを開き気味にして肘を立てる乗り方に変わってきています。

画像1: 開発メンバーが“SP”と呼ぶCBR400R FOUR E-Clutch

結局それってカウンターを許容する乗り方なんですよ。カウンターを与えた時に素早く反応できる手首の角度というのを再現しました。実際そんなことするかと言ったら誰もしないとは思いますが、自分が乗っているバイクのその先にMotoGPだったりワールドスーパーバイクだったりの世界を夢見られるように、そんな演出をハンドル角度に持たせつつ、ちょっとリラックスした高さでやりすぎない程度に(福間さん)」

デザイン面でも、CBRは既存のフルカウルスポーツと言われてみんなが想像する形とは一線を画すものになっている。顔回りやサイドカウルの造形、既存のものは色んなところに闇雲にダクトを置いてみたりするものだが、そこをあえてツルンとさせ、今までにない顔を作ってきた。

「元々CBRのほうは中国市場をメインで作ってきたというところもあって、中国市場のフルカウルモデルを見ると色んな地元メーカーが複雑なデザインのものを出してきている中で、そこに埋もれない価値観、目を引くスタイリングというところを意識しました。そしてひとつの答えとして段差を少なくしたフラッシュサーフェスという面構成を取り入れ、次のCBRを作っていくんだという気概でデザインをしていきました。ちなみにウイングは考えませんでした(笑)(渡邊さん)」

今回のCBRはプレーンなシルバーとブラックの2色展開が際立っている。

「そこが狙いではありましたので、感じ取っていただけたのであればデザインとしては狙い通りできたのかなと思っています。大きなロゴなどを入れなかったのも綺麗な面構成をしっかり主張する意図です(渡邊さん)」

画像2: 開発メンバーが“SP”と呼ぶCBR400R FOUR E-Clutch

『もっとCB400R FOURっていうロゴを入れろ』みたいな話は?

「今後そういうカラーリングが出てくる可能性もありますが、とにかく初年度はコンセプト狙い通りのものを出したいという思いがありました。ホンダではなかなかやらないデザインですが、面がパキッと表情を出すというところでこのシルバーを採用しました(渡邊さん)」

国内400と中国500の比較、そして「最後に乗りたいのはスーパーフォア」

日本への導入はないCB500スーパーフォア。その乗り味とは?(入り乱れての雑談になった部分があり、一部は発言者不明)

「400の方がいいと思いますよ。確かにトルクは500のほうが出ますけど、400はエンジンフィーリングが綺麗。昔を知る方はご存知だと思ういますが、CB750Fと900F、1100Fの差です。ナナハンってトルクは900/1100に負けても綺麗に回るじゃないですか。じつは小さい方がいいっていう(福間さん)」

「速さやトルク感で言うと500が圧倒するんですけど、雑味なくスーッと回っていくのは400の方で、自分も近いうちに買うつもりなんです」

「買ったら500に組み替えようかなとか思ってたんですけど、400でいいよなと本当に思ったんです」

なるほど、使うシチュエーションとどう使いたいかという価値観になるということか。日本の道路環境・交通環境で味わい切れるのはやっぱり400ccということだろうか。そして500の国内導入は本当に可能性ゼロなのだろうか?

「今回、500の話はだいぶ出ました。ホンダとしてもレブル500やCL500を持っていますし、500の可能性を探っていくのもアリかと思っていまして。とはいえ日本では免許の区分と、どうせ買うならでかいのをという風潮がありますので、そこを変えていけたらというのは社内で議論になっています(橋本さん)」

「今回、エンジン設計の50代以上のベテランの方々に『スーパーフォアって何ですか?』って聞いて回ったんですよ。そしたらエントリーユーザーはもちろんそうですけど『俺、最後に乗りたいのスーパーフォアだよな』ってやっぱりみんな言うんですよ。めちゃくちゃ素直で無理しなくてもいつもより操れる感じがするということで(小林さん)」

「最後の受け皿ということですよね(福間さん)」

「そう、最後の受け皿。400と500を自由に選べたら理想なんですけどね(小林さん)」

画像: 国内400と中国500の比較、そして「最後に乗りたいのはスーパーフォア」

日本市場と中国市場で求められている要素はそんなに違わないのだろうか?

「今って結局インターネット時代じゃないですか。ヨーロッパの情報は日本に伝わり、日本の情報はすぐ中国に伝わる時代ですから、どこの国で突出してどうというのはあまりないです。ただ、中国ではグローバルなものを中国国内でも売ってほしいというのがあって。中国独自で安いのを作ったというと『安いのを作ったのか』と。グローバルと同じものを中国で売っているということに価値があるんだと思います。ですから、欧州で500ccならそちらに合わせた500ccが中国市場では受けが良いと(中村さん)」

スーパーフォアは『日本の特産品』というイメージもあるが……。

「中国の方はスーパーフォアはもちろん、昔からある古い250のバイクとかも結構好きなんですよ。そういうのを普通では輸入できないルートで無理やり入れて乗ってるみたいな人たちがいて、今の30代から40代前半くらいの人たちに聞いて回ると、当時無理やり引っ張ってきたスーパーフォアが街中を結構走り回っていたらしいです。当時250cc以下の単気筒ばかりが走っていた中国で、4気筒のあの見た目というのがすごく新鮮だったので、未だにこびりついて離れない、それがある意味伝説みたいになっているようです(中村さん)」

最後に販売台数について、インタビューに同席したホンダモーターサイクルジャパンの木村さんに伺った。

「スーパーフォアの方は今(取材時・9月8日時点)約2700台くらいの受注で、CBRの方は270台くらいの状況です。計画台数をベースで考えた時に、どちらも想定通りで進んでいると捉えています。スーパーフォアの方はまだ発売したばかりでお届けが追いついていない状況の中でこれだけ伸びているのは、さすがスーパーフォアだなと。ただ、CBRはスーパーフォアに比べると1/10ですからあんまり伸びてないと思われるかもしれませんが、まだ発売前(取材時)ですし、まだお客様にどういうものか伝え切れていない部分もあるのかなと思っています。かつてのCBR400RRみたいなものをイメージされているとちょっと違うと思われるかもしれませんが、そこがきちんと伝わればCBRも同様に伸びてくるんじゃないかなと捉えています(木村さん)」

画像: ホンダモーターサイクルジャパン 商品企画部 木村康太さん

ホンダモーターサイクルジャパン 商品企画部 木村康太さん

CBはウルフシルバーメタリック46%/ロスホワイト20%/キャンディークロモスフィアレッド18%/マットバリスティックブラックメタリック16%という販売台数の構成比だったが、CBRの方は?

「カラーリングの構成比は今ちょうど半々くらいです(木村さん)」

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「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」はすでに販売絶好調、そして2026年9月18日発売の「CBR400R FOUR E-Clutch」が街に解き放たれるのももうすぐだ。次の30年を戦えるピュアスポーツに仕上がったのか、それはあなた自身の目で確かめてほしい。

ホンダ「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」の主要スペック/燃費/価格/生産国

全長×全幅×全高2110×770×1085mm
ホイールベース1405mm
最低地上高135mm
シート高780mm
車両重量187kg
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量399cc
ボア×ストローク55×42mm
圧縮比12.3
最高出力43kW(58PS)/11000rpm
最大トルク38N・m(3.9kgf・m)/9750rpm
燃料タンク容量15L
変速機形式6速リターン
キャスター角25°
トレール量99mm
ブレーキ形式(前・後)Φ296mmダブルディスク・Φ240mmシングルディスク
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17M/C 58W・160/60ZR17M/C 69W
乗車定員2名
価格99万8800円(消費税10%込)

ホンダ「CBR400R FOUR E-Clutch」の主要スペック/燃費/価格/生産国

全長×全幅×全高2055×760×1125mm
ホイールベース1405mm
最低地上高135mm
シート高780mm
車両重量187kg
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量399cc
ボア×ストローク55×42.0mm
圧縮比12.3
最高出力43.8kW(58PS)/11500rpm
最大トルク38.1N・m(3.9kgf・m)/9750rpm
燃料タンク容量14L
変速機形式常時噛合式6速リターン
キャスター角25°
トレール量98.4mm
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17M/C(58W)・160/60ZR17M/C(69W)
燃料消費率(WMTCモード)23.1km/L(クラス3-2、1名乗車時)
乗車定員2名
メーカー希望小売価格119万9000円(消費税10%込み)

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